もうお一方は、こちらもご主人を介護されている70代のご婦人。
ご婦人、と表現したのは、まさにきちんとした佇まいで、品のある方。
およそ介護とは似つかわしくない雰囲気。
今年の5月から介護サービスを利用し始めた、介護初心者という感じ。
すべてがわからないことだらけで、施設の職員さんに矢継ぎ早に質問されていた。
中でも、最近寒くなってきたからか、ご主人が夜中に一度も起きないので、朝になるとシーツまでグッショリ濡れていて困っているとのこと。
「前回ショート利用時は、朝起きた時はどうだったんでしょう?」
と、質問された。
施設の職員さんは
「ショートご利用時も、やはり朝、リハパンから漏れていて、シーツを交換させていただいてます。」
との回答。
そのやり取りを聞いていて、ああこれが在宅介護している家族と、施設で仕事として介護されている方との違いなんだと思った。
施設なら、汚れ物を洗う人、排泄を手助けする人、食事の準備をする人、レクレーションをする人、それぞれ担当があり、別々の人が担っているはず(職員の人数が足りている場合)
ところが、家庭では汚れ物を洗いながら食事の準備をしたり、その間に排泄の手助けもする。一人で同時にいくつものことをこなさなければならない。
しかも、仕事に行く時間が迫れば、てんてこまいになる。
私もなんども、こう言ってブチ切れた。
「私は魔法使いじゃない。いっぺんにいろいろできない。待っててって言ってるじゃん。なんでジッとして待ってられないのよ。」
慣れない介護に戸惑い、少しでも情報を得たいと思い、家族の集いに参加されたそのご婦人の気持ちがすごく良くわかる。
じーじの介護を経験した私も、今は
『もらすもんは仕方ないし、汚れたら洗えばいい』
なんて思ってるけど、
最初は何故?と思うし、どうしたらいい?なんとかする方法はないのか?って考えるのが当たり前。
介護慣れしてしまうと、手順も経過もわかってるから戸惑いはしなくなるけど、何か見失っているものがあるのかもしれない。
必死になっている、そのご婦人を見て、介護も初心忘れるべからずだなぁ、なんて思った。