現代音楽に触れること | 岩下智子「笛吹女の徒然日記」Tomoko Iwashita

岩下智子「笛吹女の徒然日記」Tomoko Iwashita

フルート奏者 岩下智子が綴る気ままな日記です。

こんにちは!フルーティストの岩下智子です。

 

 今日は現代音楽について書きます。

 現代音楽、つまり、コンテンポラリー・ミュージックって、どんな音楽?もしかして、あの電気音の耳障りなハードな音楽ですか?と、これまでに何度となく訊かれたことがあります。

 クラシック音楽にお詳しい方は、そんなことを訊く人が本当にいるだろうかと思われるかもしれませんが、本当の話なのです。

 

 コンテンポラリー・ミュージックとは、つまり、今、生きている、その時代の音楽というのが定義ですから、いずれの歴史的なクラシック音楽と呼ばれる曲でも、当時は、すべてその時代のコンテンポラリー・ミュージックだったということになります。要するに、そのときその時代に生まれた音楽です。

 

 つまり、バロック時代にバッハがそれまでと違った音楽を教会に持ち込んだとき、モーツァルトがドイツ語でオペラを書いたとき、或いは、ベートーヴェンがオーケストラ(交響曲)に新しく合唱を入れたとき、ワーグナーが長時間のオペラを書いたとき、ドビュッシーが旋法音階や全音音階を曲に取り入れたとき、ウェーベルンが前衛音楽の十二音技法を使ったとき、それから、ジョン・ケージが「433秒」という曲を発表した時・・・、などなど、全て、当時の人にとっては、あっと驚く現代音楽だったわけです。(どの曲も今でもアッと驚きますが)

 それら現代音楽は時代を経て、クラシック音楽になっていくわけです。歴史的な作曲家たちの作品は永遠の輝きを放っていますが、我々の時代のコンテンポラリー・ミュージックも、大切にしていきたいなと思います。

  

 例えば、現代音楽の傑作と言われているジョン・ケージの『4分33秒』という曲は、ピアニストがステージに出てきて、ピアノの前に座ったまま、433秒秒間、何も音を出さないでじっとし、時間が経ったら帰るという作品ですが、ただの無音でおしまい!というわけではありません。ジョン・ケージの曲は、433秒の間の会場の空気、聴衆の気配、呼吸、その時々の気分によって、感じるものが違ってくる、これこそ音楽なのだ!というわけです。

 (このジョン・ケージという作曲家は、アメリカのコロンビア大学で日本人の大拙に禅を学び、それを音楽に取り入れた人なのです。まさに座禅の世界を表現したのかもしれません。)

 

 私も出来る限り、現代の作曲家の作品を演奏したいと常に考えています。2014年に九州大学で開催された日本音楽学会の全国大会では、藤枝守氏が招聘したテリー・ライヒの『In C 』という曲を演奏しましたが、その時、私もミニマリズム音楽を演奏しました。このような経験は貴重です。

 

 

 

   日本の作曲家でも、現在ご活躍の作曲家もたくさんいます。西村朗さん、細川敏夫さん、木下牧子さん、伊藤康秀さん、松下耕さん、藤枝守さん、藤倉大さん、酒井健司さんなどがいらっしゃいます。皆様も機会がありましたら、日本の現代音楽の作曲家の作品を聴いてみてください。

 

それでは、今日はこのへんで。

岩下智子