人の心の中は見えないもの、
そして伝わらないもの
しっかりと伝えるためには
「言葉」にすることが大切!
「心」よりも「行動」が大切!
(元・麹町中学校校長、現・横浜創英中学・高等学校校長 工藤 勇一氏)
『となりの火星人』『あした、また学校で』『サイコーの通知表』と、小学生の生きづらい現実に寄り添った話題作を放った工藤純子氏の書きおろし最新作。
「よくあるよね。大人に無理やりあやまらされたり、握手させられたり。本人同士は納得していないのに」
「なんで、そんなことになるんだろう」
「まあ、問題を大きくしたくないとか、さっさと終わらせたいとか……大人の都合もあるよね」
オレたちの気持ちは、いつもどこかに置き去りにされたままだ。(本文より)
小6のクラスで起きた、ランドセルに金魚のエサが入れられるという事件。被害を受けた子も、エサを入れた子たちも、いじめが起きている空気を感じつつ声をあげられなかったクラスメートも、そして、加害者としていじめに荷担した過去を持つ担任の教師だって、いじめという「現実」からはけっして逃れられない――。痛烈なメッセージが込められた一冊です。
●感想レビュー
イジメ問題について書かれ、手軽に読みましたが心に響くものがありました。
単なる娯楽青春小説ではなく、イジメる子、イジメられる子、傍観する友人、クラスメイト、新任の担任教師・・・
それぞれの視点で物語が章になり、感情移入ができ、相手の背景に何があるのか?
それを知りながら読み進める事ができます。
イジメをすると加害者は成長し、忘れてしまう。
これは事実ですが罪悪感はあり、『自分は人として悪い事をしてしまった』、『傍観するだけで助けなかった』というドロドロとした黒い感情は心から消える事はなく、大人になっても付きまとい、過去を完全に消す事はできない。
主人公達を担任する教師も子供時代にイジメに加担し、罪の意識を記憶の奥底に感じ、今回の事件をきっかけに教師として大きく成長したのが印象深かったです。
ふざけてただけ・・・イジメの言い訳によく使われますが、相手からすると強い恐怖や恨み、悲しみが潜んでいる。
無事に登場人物たちが和解し、お互いの罪に向き合い、ハッピーエンドに向かっていたと思ったら肝試しでの教師による過剰な演出。
教師も悪気があったワケではなく、祭気分で怖がった子供に真摯に向き合う人は少なく、『ノリが悪い』や『これくらいいいじゃん』と周りだけでなく、読者も流されてしまいガチ。
主人公達は教師を糾弾し、担任教師も味方し、校長による注意勧告。
相手の事を考える事が大事・・・そう読んでいて分かっていたはずなのに・・・最後の最後で読者が本当に分かっているのか?
最終試験のようなエピソードがあったのが面白かったです♪