【ネタバレ有レビュー】

『シャーク 消えた三人の死体』はB級だが“後日譚”として異色のサメ映画だった


※本記事は映画『シャーク 消えた三人の死体』の結末を含むネタバレレビューです。未鑑賞の方はご注意ください。

 


■ 作品概要

タイトル:シャーク 消えた三人の死体
原題:Bull Shark 2
監督・脚本:ブレット・ベントマン
ジャンル:パニック/サメ映画
制作国:アメリカ
位置づけ:映画『Bull Shark』(2022年)の正統続編

本作は、低予算ながらも独自路線を貫くB級サメ映画であり、
単なる怪物パニックではなく、
「怪物を倒した“その後”」を描いた後日譚的続編である点が大きな特徴だ。

 

 


■ あらすじ(ネタバレあり)

舞台はテキサス州のレイロバーツ湖。
数年前、巨大オオメジロザメ(ブルシャーク)が出現し、多数の犠牲者を出した事件があった。
 

当時、猟区管理官だった主人公スペンサーは、
仲間や地元住民と共に命がけで戦い、サメを撃退することに成功する。
 

しかし彼は、
 

  • 仲間を守れなかった罪悪感

  • PTSD(心的外傷)

  • 世論と政治的責任の集中
     

によって心を壊し、アルコール依存症となり、
仕事も家庭も失った状態で今作は始まる。
 


■ 「消えた三人の死体」の真相

物語序盤、湖畔で若い男女3人が行方不明になる事件が発生する。

これが邦題にもなっている
**「消えた三人」**である。
 

しかし、

  • 発見されるのは遺体の一部のみ

  • 3人分の完全な死体は一度も揃わない

  • 町の市長や開発業者が事件を隠蔽
     

という状況から、
**「死体が消えた」のではなく「真実が消された」**ことが明らかになっていく。

 

ラストでは、

  • 少なくとも2人は確実にサメに捕食され死亡

  • 残る1人(クリッシー)は即死ではなかった可能性
     

が示唆され、
母レズリーにとって最も残酷な真実が突きつけられる。

 

 

 

 

 


■ サメは複数いたのか?

作中では明確に断言されないが、

  • 被害発生地点が短時間で複数

  • 噛み跡やサイズ感の違い

  • 湖底で複数の影が描写される

といった点から、
少なくとも2匹以上のオオメジロザメが存在していた可能性が高い。
 

ただし、
ラストで倒されるのは1匹のみであり、
脅威が完全に消えたとは言い切れない余韻を残す。
 


■ クライマックス:サメの倒し方

主人公スペンサーは、

  • 動物の血

  • 音響装置

を使ってサメを湖の中央へ誘導し、
**爆薬付き銛(ハープーン)**による至近距離攻撃で仕留める。
 

肉体的にも精神的にも限界の中、
彼は再びサメと対峙し、
今度こそ「逃げずに向き合う」ことを選ぶ。
 


■ 前作との関係性と続編としての意味

本作は、
映画『Bull Shark』(2022年)の完全な続編である。

ただし、

  • 前作は日本未公開・未ソフト化

  • タイトルに「2」や「続編」表記がない
     

ため、単体作品と誤解されやすい。
 

前作が
**「怪物を倒す物語」**だったのに対し、

今作は
**「怪物を倒した後、人生が壊れた男の物語」**である。
 

前作の生存者たちは今作にほとんど登場せず、
主人公を助けない。
 

それは、
英雄神話を否定し、孤独な贖罪を描くための意図的な構成だ。

 

 


■ この映画はB級映画か?

結論として、
制作規模・流通形態の面では完全にB級映画である。
 

しかし、

  • ギャグ路線ではない

  • 物語は一貫してシリアス

  • 社会的テーマ(隠蔽・再開発・責任)がある
     

という点で、
いわゆる「ネタ系B級サメ映画」とは一線を画している。
 

B級だが、雑ではない。
派手ではないが、真面目な続編。


■ 総合評価(ネタバレあり)
 

『シャーク 消えた三人の死体』は、

  • サメ映画が好きな人

  • B級映画耐性がある人

  • 派手さより「後味」を重視する人
     

に向いた作品だ。
 

逆に、

  • CGクオリティ重視

  • 明るいパニック映画を期待すると
    物足りなさを感じるかもしれない。
     

だが本作は、
「怪物を倒せば終わりではない」
「勝利の後にも責任は残る」

 

 

 

 

 

というテーマを、B級映画の枠内で誠実に描いた異色作である。


■ まとめ

  • 『シャーク 消えた三人の死体』は正統続編

  • タイトルの「消えた三人」は隠蔽された犠牲者

  • サメは複数存在した可能性が高い

  • 主人公は唯一の生存者ではないが、精神的に孤独

  • B級だが、後日譚としては非常に珍しい構成
     

サメ映画の皮をかぶった、贖罪と再生の物語
それが本作の正体だ。

第五章|それでも、剣は振り下ろされる

夜は、終わらなかった。

馬車は闇の中を進み続けていた。

車輪が地を噛む音だけが、規則正しく続いている。

スカーレットは、何度も瞬きをした。

眠気ではない。
それでも、視界がにじむ。

老人の背中が、いつもより小さく見えた。
手綱を握るその手は、白くなっている。
 

「……さっきから」

声を出すと、喉がひりついた。
 

「何か、近くにいますか?」

返事は、すぐには返ってこなかった。
 

馬車の進路が、わずかに変わる。
舗装されていない道へ、意図的に外れる。

 

「……いや」

それだけだった。

それ以上、聞けなかった。
聞いてはいけない気がした。

 

――遅かったのだと、今なら分かる。

音が、変わった。

車輪の音に、別の足音が混じる。

いくつも。
意図的に、距離を詰めてくる音。

老人が、強く手綱を引いた。

馬がいななき、馬車が揺れる。

だが、闇は逃がしてはくれなかった。

衝撃!!

横から、何かがぶつかった。
 

馬車が止まる。
いや、止められた。

 

影が、現れた。

一人ではない。
数が、分からない。

 

声がする。
笑い声。
言葉にならない、粘ついた音。

 

老人が、すぐに動いた。

スカーレットの前に立つ。

何も言わず、ただ腕を広げる。

その背中が、父の背中と重なった。
 

「下がっていろ」

それが、最後に聞いた声だった。
 

引きずり下ろされる音。
地面に叩きつけられる鈍い衝撃。

スカーレットは、何かを掴もうとした。

老人の服。
手綱。
空気。

何も、掴めなかった。
 

視界が揺れる。

身体に触れる手は、乱暴だったが、執拗ではなかった。

奪うための手。
壊すための手。

 

言葉は、聞き取れなかった。
聞き取りたくもなかった。

 

ただ、笑っていた。

老人が、呻いた。
 

それだけで、胸が裂けそうになった。

やめてほしいと、思った。

声は、出なかった。

父の時と同じだ。
 

動けず、
叫べず、
ただ、見ているしかなかった。

 

音が、止まった。

一瞬の静寂。
 

そして――

濡れた音。

剣が、振り下ろされたのだと、理解したのは、少し後だった。
 

老人は、もう動かなかった。

呼吸の音が、消えていた。

スカーレットの世界から、温度が失われる。
 

「……いや」

誰に向けた言葉だったのか、自分でも分からない。

影が、こちらを向く。

重い足音が、近づいてくる。
 

剣を持った影。

月明かりに、刃が鈍く光った。
 

父の血。
老人の血。

すべてが、重なる。
 

剣が、上がる。

振り下ろされる。

――それでも。

スカーレットは、目を閉じなかった。
 

 

『第5章|それでも、剣は振り下ろされる』・終了
 6章へ続く

 

【ネタバレありレビュー】

『解像度を上げる』は「考えが浅い」と言われる人のための最強の実践書だった
 

「話がふわっとしている」
「言っていることは分かるけど、刺さらない」
「大事な何かが抜けている気がする」
 

仕事や議論の場で、こうした違和感を覚えたことがある人は多いはずだ。
馬田隆明氏の著書 『解像度を上げる――曖昧な思考を明晰にする「深さ・広さ・構造・時間」の4視点と行動法』 は、まさにその違和感の正体を言語化し、具体的な行動レベルまで落とし込んだ一冊である。

 

本記事では、内容を深く踏み込んだネタバレありレビューとして、
 

  • 本書の核心となる考え方

  • 各章の要点

  • どんな人に刺さる本か

  • 読後どう使うべきか
     

を整理する。

 

 

 

 

 


この本を一言で言うと

**「思考が浅い・曖昧な状態から抜け出すための、解像度を“意図的に上げる”実践書」**である。

ロジカルシンキングやフレームワーク解説本とは異なり、本書は
 

  • なぜ分かったつもりになるのか

  • なぜ説得力が出ないのか

  • どうすれば“地に足のついた思考”になるのか
     

を、行動量・観察・言語化の積み重ねとして説明している。
 


解像度とは何か?|4つの視点

著者は「解像度が高い思考」を、次の4つの視点で定義する。
 

1. 深さ

  • 症状ではなく**原因(病因)**まで掘れているか

  • 「なぜ?」を7段階以上繰り返せるか

  • 誰が、どんな瞬間に、どんな感情で困っているのかまで具体化できているか
     

👉 本書では明確に
「ほとんどの人は深さが足りない」
と断言される。
 


2. 広さ

  • 競合・代替手段・既存の工夫を十分に把握しているか

  • 「競合はいません」と言っていないか
     

👉 比較対象が少ない思考は、輪郭がぼやける。
 


3. 構造

  • 話がツリー構造になっているか

  • 要点 → 根拠 → 具体例の順で説明できるか

  • 「で、それは何が言いたいの?」と言われないか
     

👉 ユニークな洞察は、構造化の結果として生まれる。
 


4. 時間

  • 最初の一歩が具体的に言えるか

  • 仮説→検証→改善の道筋が見えているか

  • 過去・現在・未来をつないで語れているか
     

👉 行動に落ちていない思考は、解像度が低い。

 

 


なぜ「行動」がこれほど重視されるのか

本書のメッセージは一貫している。

行動なくして、解像度は上がらない


その象徴が「48の型」だ。

  • 事例を最低100集める

  • 検索結果は最低10ページ見る

  • アンケートではなくインタビュー

  • 50人に会ってようやく入り口
     

一見ストイックだが、これは精神論ではない。
 

思考の精度は
「情報 × 行動 × 思考量」
で決まる
という、極めて合理的な前提に立っている。
 


各章の要点(ネタバレ要約)

第1章:解像度を上げる4つの視点

  • 解像度の正体を定義

  • 特に「深さ」が不足しがちであることを指摘
     

第2章:解像度診断

  • 自分の思考の曖昧さを可視化する方法を提示

  • ツリー構造で弱点が一目で分かる
     

第3章:行動・粘り強さ・型

  • 解像度は才能ではなく、習慣と量の問題

  • 上げるべきは「自分」ではなく「課題と解決策」
     

第4章:課題の解像度(深さ)

  • 良い解決策は良い課題からしか生まれない

  • 内化(体験)と外化(言語化)の往復が鍵
     

第5章:課題の解像度(広さ・構造・時間)

  • 多面的に見ない課題設定は必ず歪む
     

第6章:解決策の解像度

  • 解決策も仮説であり、4視点で磨く対象
     

第7章:実験と検証

  • MVPとスケールしない実験

  • 行動が新たな情報を生む
     

第8章:未来の解像度

  • 課題とは理想と現状のギャップ

  • 将来世代の視座を持つ重要性

     

     

     

     

     

     

     

この本が刺さる人

  • 企画・提案が弱いと言われがちな人

  • ロジカルに話しているのに説得力が出ない人

  • 新規事業、スタートアップ、PdM、コンサル、エンジニア

  • 「分かった気になる自分」に違和感がある人
     


正直な感想(レビュー)

この本は読みやすいが、楽な本ではない

なぜなら、読者にこう突きつけてくるからだ。
 

それ、考えた“つもり”になっていませんか?


思考の甘さ、調査不足、行動量の少なさが、
静かに、しかし確実に暴かれる。
 

一方で、本書は非常に誠実だ。
才能論やセンス論に逃げず、
 

「半年、本気でやれば誰でも変われる」

という再現可能な道筋を示している。


まとめ|読むべきか?

結論として、

  • 「ふわっとしている」と言われたことがある人

  • 仕事の解像度を一段上げたい人

には、強くおすすめできる一冊だ。

これは一度読んで終わる本ではない。
机の横に置き、何度も参照し、使い倒すための道具本である。

『キスに煙』ネタバレありレビュー|ミステリーだと思ったら上質BLだった話【織守きょうや】
 

※本記事は ネタバレを含みます。未読の方はご注意ください。


『キスに煙』(織守きょうや)基本情報


あらすじ(ネタバレあり)

かつてフィギュアスケーターとしてトップを争い、互いを認め合うライバルであり親友だった塩澤志藤
現在、塩澤は引退してデザイナーとして働き、志藤は今も現役トップスケーターとしてリンクに立ち続けている。
 

二人の関係は良好に見えながらも、塩澤は志藤への恋情を胸に秘めたまま、決して口にすることはなかった。

そんなある日、塩澤の元恋人であり、志藤とは犬猿の仲だったコーチ・ミラーが転落死したというニュースが飛び込んでくる。
素行が悪く評判も最悪だったミラーの死は、自殺か事故か、それとも他殺か——疑惑を呼ぶ。
 

この出来事をきっかけに、塩澤と志藤は
「相手がミラーの死に関わっているのではないか」
という不安をそれぞれ心に抱くようになる。
 

しかし二人は真相を問いただすことはせず、相手を守るために黙って行動するという選択を取っていく。
そのすれ違いの中で、塩澤の秘めてきた想いと、志藤が塩澤に対して抱いていた「もう一度スケートをしてほしい」という切実な願いが露わになっていく。
 

物語はミラーの死の真相へと収束していくが、読者の関心は次第に事件そのものよりも、
二人がどう向き合い、どう落ち着くのかへと移っていく。
 

結果として残るのは、ミステリーというよりも、
親友という関係を越えて互いを想い合う二人の、濃密で上質なBL的読後感だった。
 


正直な感想|これはミステリーというよりBL小説

読み始めた当初は、
「コーチの不審死を追うフィギュアスケート×ミステリー」
だと思っていた。
 

……が、途中からずっと脳内で
「あれ? これBL小説読んでたっけ?」
という混乱が起き続ける。
 

ミラーの死の謎よりも、

  • 塩澤が志藤を想ってしまう気持ち

  • 志藤が塩澤にもう一度リンクに戻ってきてほしいと願う感情

  • お互いを疑いながらも守ろうとする行動

これらがあまりにも丁寧に描かれていて、完全にそちらに感情を持っていかれる。

正直、ミステリーとしては事件の比重が軽く、
「謎解き重視」の読者には物足りないかもしれない。

ただし——

BL小説として読んだ場合の完成度はかなり高い。
 

 

 

 

 

 


心理描写がとにかく強い|織守きょうやらしさ全開

本作の最大の魅力は、
「言わない」「聞かない」「でも想っている」
という感情の積み重ね。
 

塩澤視点・志藤視点で交互に描かれる内面は、

  • 心配

  • 懸念

  • 執着

  • 尊敬

  • 愛情
     

が丁寧に言語化され、読者に突き刺さる。
 

異性か同性か、という区分を超えた
「才能への憧れ」と「人生を共にしたいという感情」
が根底にあり、だからこそ二人とも応援したくなってしまう。
 


フィギュアスケート要素は“感情の共有装置”

フィギュアスケートの描写は専門的すぎず、
競技そのものというより、
二人をつないだ過去の象徴として機能している。
 

  • 引退した塩澤

  • 現役を続ける志藤
     

この距離感が、そのまま二人の関係性のズレとして描かれているのが非常に巧み。

志藤の「もう一度スケートをしてほしい」という言葉は、

競技への未練というより
塩澤と同じ場所に立ちたいという願いに聞こえてしまう。

……そりゃあBLに見える。

 

 


注意点|BLが苦手な人は要注意

本作はレーベル上は一般文庫だが、
内容的にはBL耐性がないと違和感を覚える可能性が高い
 

  • 男性同士の強い情愛描写

  • 心理的な依存・執着

  • 恋愛感情として明確に読める展開
     

これらが苦手な人は、事前に知っておいた方がいい。

逆に言えば、
BL要素が大丈夫な人にはかなりおすすめ
 


総評|ジャンル表記に戸惑うが、読後感は最高

  • ミステリーとしてはやや弱め

  • BL小説としては満足度が非常に高い

  • キャラクターが魅力的で感情移入しやすい
     

「ミステリーを期待すると肩透かし」
「BLとして読むとめちゃくちゃ面白い」
 

そんな一冊。

読み終えた後に残る感想はただ一つ。

「こいつら、幸せになれ……」



こんな人におすすめ

  • 心理描写重視の小説が好き

  • フィギュアスケート題材に惹かれる

  • ミステリー×人間関係の物語が読みたい

  • BL要素に抵抗がない

第四章|手綱を握る手が、強くなる

夜は、いつの間にか訪れていた。

空が暗くなったというより、
色そのものが削ぎ落とされたようだった。

 

星はある。
だが、どれも輪郭が曖昧で、遠すぎる。

馬車は音もなく進んでいた。
車輪が地面を踏みしめる感触だけが、かすかに伝わってくる。

 

「……本当に、宿を取らなくてよかったのですか」

スカーレットは、しばらく沈黙したあとでそう尋ねた。
 

老人は前を向いたまま、答えない。

手綱を握るその指が、わずかに強くなる。
 

「町なら、あれほど人がいました。
 眠る場所も、ありました」

「……ああ」

 

ようやく返事が返ってくる。

だが、それ以上は続かない。
 

沈黙が、馬車の中に落ちる。

風が変わった。
 

冷たい、というより、
触れてはいけないものが混じった風だった。

 

スカーレットは身を固くする。

「今、何か……」

「……っ言うな」

老人はそう言って、進路をわずかに変えた。
 

ほんの少しだけ。
言われなければ気づかない程度に。

だが、その“少し”が、妙に胸に残った。
 

「眠ってはいけない、と言っていましたね」

スカーレットは話題を変えるように言った。
 

「この世界では」

「ああ」

「でも……ずっと起きているのは、危険では?」
 

老人は小さく息を吐いた。

「眠らないことが大事なんじゃない」
 

「え?」

眠りすぎないことだ
 

馬車は一定の速さを保っている。

夜道にもかかわらず、揺れは少ない。
 

「人はな、完全に眠らなくても死ぬ。
 だが、ほんの一瞬なら……」

 

老人は言葉を切った。

「……それでも、眠気は来る」
 

スカーレットは、初めてその声に疲れを感じた。

「もし、私が馬車を操れれば……」
 

思わず口に出る。

「交代で休めたのに」
 

老人は、ふっと笑った。

「女が馬車を操るか」
 

「……できません」

悔しさが、喉に残る。

自分は何もできない。
守られて、運ばれているだけだ。

 

「だからな」

老人は、前を見たまま言った。
 

「眠らないための癖がある」

そう言って、
彼はわずかに手綱を引き、馬車の速度を落とした。

 

そして――
口の中で、何かを噛むような仕草をする。

 

「痛みだ」

「痛み……?」
 

「小さな痛みだがな。
 噛めば、目が覚める」

 

馬車は再び、速度を上げた。

夜が、さらに深くなる。
 

スカーレットは、ふと気づく。

何かを感じる。
 

風の唸りも、砂ぼこりも
いつの間にか遠のいていた。

 

代わりに、
何かが近づく気配だけが、残っている。

 

「……」

老人は、もう何も言わない。

手綱を握る手に、力がこもる。
 

会話は、完全に途切れた。

スカーレットは問いかけを飲み込む。
 

聞いてはいけない気がした。

この沈黙を、
言葉で壊してはいけないと、直感が告げていた。

 

夜は続く。

眠気は、確実に忍び寄る。
 

それでも、
この夜は――

眠ってはならない。
 

スカーレットは、そう強く思いながら、
闇の向こうを見つめ続けていた。


 

 

『第4章|手綱を握る手が、強くなる』・終了
 5章へ続く

 

【ネタバレあり】『税金で買った本(1)』レビュー|図書館の仕事と本の価値を描く物語

※本記事は『税金で買った本(1)』(講談社青い鳥文庫)のネタバレを含みます
 

作品概要

『税金で買った本』は、図書館を舞台にした人気マンガのノベライズ作品です。
主人公は、勉強嫌いでヤンキー気質の高校生・石平くん。

小学生の頃に図書館で借りた本を紛失していたことが発覚し、その弁償をきっかけに、なぜか図書館でアルバイトをすることになります。

 

 

 

 

 


図書館アルバイトという「身近で知らない仕事」

図書館は普段からよく利用していますが、「そこで働く人が何をしているのか」については、実はほとんど知りませんでした。本作では、返却された本の処理、配架、利用者対応、読み聞かせの補助など、図書館アルバイトの仕事内容が具体的に描かれています。
 

本を並べるだけの仕事ではなく、公共施設としての責任や、本を大切に扱う理由が物語を通して自然に伝わってきます。
利用者側として何気なく使っていた図書館が、多くの人の手で支えられていることを実感させられました。
 


ヤンキー高校生×図書館という設定の妙

ヤンキーの高校生が図書館でアルバイトをする、という設定自体が非常に秀逸です。
一見ミスマッチに思える組み合わせだからこそ、石平くんが戸惑いながらも仕事に向き合い、少しずつ成長していく姿が印象的に描かれています。
 

読書や勉強が苦手だった主人公が、本や人との関わりを通して変わっていく様子は、多くの読者が共感できるポイントだと思います。

 

 


実在する本が登場するリアリティ

作中には、実際に販売されている本がそのまま登場します。

フィクションでありながら現実と地続きになっているため、「この本、図書館で見たことがある」と感じる場面も多く、読後に実際の図書館へ行きたくなりました。

図書館をテーマにした作品として、このリアリティは大きな魅力です。
 



タイトル『税金で買った本』が示す意味

本作のタイトルである『税金で買った本』も非常に的を得ています。
図書館にある本は、私たちの税金によって購入され、公共の財産として共有されているものです。

このタイトルは、「図書館で扱っている本」そのものを端的に表しています。

物語を読み進めることで、タイトルの意味がより深く理解でき、図書館という場所の本質を改めて考えさせられました。
図書館を舞台にした物語に、これ以上ふさわしいタイトルはないと感じます。

 

 

 

 

 



まとめ|図書館の見え方が変わる一冊

『税金で買った本(1)』は、図書館をよく利用する人ほど楽しめる作品です。
図書館アルバイトの存在や仕事内容を知り、本や公共施設の価値を考えるきっかけを与えてくれます。

読み終えたあと、図書館で本を手に取るときの気持ちが、少し変わるかもしれません。

『半うつ 憂鬱以上、うつ未満』ネタバレレビュー

――「うつ病ではない苦しさ」に名前を与えてくれた一冊

はじめに|「まだ大丈夫」が一番危ない

「うつ病と診断されるほどではない」
「仕事にも行けるし、生活も回っている」
 

それでも確かに、
心が動かない、楽しくない、疲れが抜けない。
 

そんなグレーな不調を抱えながら、
「自分が甘えているだけでは?」
と自分を責めている人は少なくありません。
 

精神科医・平光源さんの著書
**『半うつ 憂鬱以上、うつ未満』は、
その“名前のない苦しさ”に
「半うつ」**という言葉を与え、
具体的な対処法まで示した一冊です。
 

この記事では、ネタバレあり
本書の内容・考え方・実用性を詳しくレビューします。

 

 

 

 

 


半うつとは何か?|本書の核心的な定義

本書で定義される「半うつ」とは、

うつ病と診断されるほどではないが、
憂鬱を超えた不快感・無気力・思考力低下が続く状態

です。
 


特徴的なのは、

  • 身体は動く

  • 仕事や家事は「できてしまう」

  • しかし、心が反応しない

という点。
 


著者はこれを
「心の問題」ではなく「脳の慢性疲労状態」
として説明します。
 


なぜ現代人は「半うつ」になりやすいのか

① 常に刺激にさらされる社会

  • スマホ

  • SNS

  • 終わりのない仕事


脳が休まる時間がなく、
神経が疲弊したまま走り続ける構造になっています。
 

② 真面目で頑張り屋ほど危ない

  • 空気を読む

  • 自分を後回しにする

  • 感情を抑える
     

その結果、
セロトニン(心のブレーキ)を酷使し続けることになります。

 

 


半うつの正体|脳内物質のアンバランス(ネタバレ)

本書の最大の特徴は、
半うつを脳内物質の視点で整理している点です。
 

セロトニン(安定)

  • 不足 → 不安・イライラ・睡眠障害
     

ノルアドレナリン(集中・警戒)

  • 乱れ → 思考停止・判断力低下・疲労感
     

ドーパミン(やる気・喜び)

  • 低下 → 楽しくない・始められない・達成感がない
     

半うつとは、
これらがすべて「少しずつ落ちている状態」
 

だから、

  • 気合ではどうにもならない

  • ポジティブ思考が効かない

と著者は断言します。

 

 

 

 

 


本書が一貫して否定すること

本の中で繰り返し語られるのが、

「気持ちを変えようとしないでください」


というメッセージ。

  • 頑張れ

  • 前向きに考えろ

  • 気分転換しろ
     

これらは、
ガス欠の車を叩いて走らせようとする行為だと説明されます。

 


半うつへの具体的な対処法(ネタバレ)

① まずは「食う・寝る」を最優先

  • 完璧な生活改善は不要

  • 抜かない・削らないことが重要
     

脳内物質は材料がなければ作れないため、
食事と睡眠が最優先事項になります。
 

② 小さな刺激で脳を再起動する

  • 朝の光を浴びる

  • ゆっくり歩く

  • 25分だけ作業する
     

どれも
「やる気が出たらやる」ではなく「できる範囲で入れる」
 

③ 「できたこと」を事実として数える

  • 喜べなくていい

  • 達成感がなくていい
     

脳は感情ではなく事実に反応する、
という説明は非常に現実的です。

 

 


半うつが一番こじれる原因

それは、

「まだ大丈夫」と我慢し続けること
 

  • 病名がつかない

  • 周囲からは普通に見える

  • 自分でも否定してしまう
     

その結果、
本格的なうつ病へ移行するケースがあると警告しています。
 

著者は半うつを
「うつ病の一歩手前の警告灯」
と表現します。
 


読後の感想|この本の本当の価値

この本の最大の価値は、
 

  • 無理に元気にさせない

  • 自分を責めさせない

  • 「壊れる前」で立ち止まらせてくれる
     

点にあります。

特に終章で、
精神科医である著者自身も
「苦しい」「辛い」と正直に語る部分は印象的です。
 

「しんどいと思った時点で、もう十分しんどい」


この一文だけでも、
救われる人は多いはずです。
 


こんな人におすすめ
 

  • うつ病と診断されなかったが苦しい

  • 元気だった頃に戻れない感覚が続いている

  • 自分の状態を正しく理解したい

  • 無理のない回復の道筋を知りたい
     


まとめ|「半うつ」は甘えではない
 

『半うつ 憂鬱以上、うつ未満』は、

  • 自分を責めるための本ではなく

  • 無理に治す本でもなく

  • 壊れる前に立て直すための本

です。
 

「まだ大丈夫」と思いながら苦しんでいる人にこそ、
ぜひ一度読んでほしい一冊です。

『サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい 会計編』を読んで分かった「本当に見るべき数字」

記事概要

本記事では、三戸政和氏の著書
『サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい 会計編』について、
実際の内容に踏み込んだ
ネタバレありレビュー
を行います。
 

  • 前作との違いは?

  • 会計が苦手でも理解できるのか?

  • この本の本質は何か?
     

を、中小企業M&A・会計思考・資本家思考という観点から解説します。
 



本書の結論を先に言うと

この本は、

「会計を学ぶ本」ではなく
「会社を買っても死なないための思考法」を教える本

です。
 

簿記や財務諸表を完璧に理解する必要はありません。
むしろ、本書が一貫して否定しているのはPL(損益)だけを見る思考です。

 

 

 

 

 


ネタバレ①:最大のメッセージは「PL思考からBS思考へ」

多くのサラリーマンや投資初心者は、
「この会社は儲かっているか?」という PL思考 で会社を見ます。
 

しかし著者は、はっきりこう言います。

  • 利益は操作できる

  • 利益は一時的

  • 利益は過去の結果


それよりも重要なのが、

BS(貸借対照表)に、どんな資産が残っているか

という視点です。
 

良い会社の定義(本書的)

  • 現金が残る

  • 将来も価値を生む資産がある

  • オーナーが変わっても回る仕組みがある
     

👉 利益が出ている会社 ≠ 良い会社
👉 資産価値が積み上がる会社=良い会社

ここが本書最大のネタバレであり、核心です。

 

 


ネタバレ②:「会社を買う」とは資産を買うこと

本書では、会社買収を特別なものとして扱いません。

  • マンションを買う

  • 車を買う

  • 株を買う


これらと同じく、

「価格と価値のズレを見る行為」


として会社を見るべきだと説明します。
 

中小企業は特に、

  • 情報が少ない

  • 会計が雑

  • 正しく評価されていない
     

つまりアービトラージ(歪み)だらけ

この「歪み」を見抜くための最低限の会計視点が、本書のテーマです。
 


ネタバレ③:危ない会社はBSに必ずサインが出ている

本書で繰り返し語られるのは、

「ヤバい会社は、必ず数字に痕跡を残す」

という点。
 

例えば:

  • 売上はあるのに現金が増えない

  • 意味不明な「仮払金」「未収入金」が多い

  • 借金の内容が説明できない
     

これらはすべて、
PLでは見えないがBSを見れば一瞬で分かる危険信号です。
 

重要なのは、

  • 儲かるかどうか → 考えない

  • 死なないかどうか → ここだけ判断する


という割り切り。

会計が苦手な人ほど、この姿勢が刺さります。

 

 

 

 

 


前作との違い:思想編と実務編の関係

前作

  • なぜサラリーマンが会社を買うのか

  • 人生戦略としての中小企業M&A

  • 発想の転換が中心
     

会計編(本書)

  • どの会社を買っていいか

  • 危険な会社の見抜き方

  • 数字を使った判断軸
     

前作=地図
会計編=コンパス

という関係です。
 


会計が苦手な人でも読める理由

この本は、会計の正解を求めません。

  • 用語は完全に理解しなくていい

  • 計算はできなくていい

  • 簿記の知識も不要
     

著者が読者に求めているのは、たった一つ。

「この会社、俺がオーナーになって夜眠れるか?」


という感覚的な問いです。

数字はその判断材料にすぎません。

 

 


この本をおすすめできる人

  • サラリーマンのまま資本家思考を持ちたい人

  • 中小企業M&Aや事業承継に興味がある人

  • 会計を「資格」ではなく「武器」にしたい人

  • PL中心の経営・投資思考に違和感がある人


逆に、

  • 簿記の教科書を求めている人

  • 一発で儲かる投資法を探している人

には向きません。
 


まとめ:この本の本当の価値

**『サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい 会計編』**は、

会計を通じて
「選択肢を持つ側」に回るための思考訓練本

です。
 

数字が分からなくてもいい。
ただ、数字から逃げない視点だけは手に入る。
 

それだけで、
サラリーマンとしての景色は確実に変わります。

第三章|眠らない酒場と、眠ってはいけない夜

本文

馬車は、音もなく進んでいた。

車輪が地面を踏みしめる感触はある。

だが、振動がない。
揺れているはずなのに、身体は静止したままだった。

 

スカーレットは荷台に腰を下ろし、老人の背中を見ていた。
背は曲がり、白髪は風に揺れている。
それでも手綱を握る手は確かで、迷いがなかった。

 

「……町は、遠いのですか」

問いかけると、老人は振り返らずに答えた。
 

「近いとも言えるし、遠いとも言えるな」

それ以上は語らない。
スカーレットも、それ以上は聞かなかった。

 

やがて、地平線の向こうに光が見えた。
淡い橙色の灯り。
夜とも昼ともつかない空の下で、そこだけが人の気配を宿していた。

 

「着いたぞ」

町は、思っていたよりも小さかった。
石造りの建物がまばらに並び、道は舗装されていない。
だが、不思議と荒廃した印象はない。

 

——生きている、というより、止まっている。

そんな言葉が浮かんだ。
 

老人は馬車を酒場の前で止めた。
木製の扉には看板が下がっているが、文字は擦れて読めない。

 

中に入ると、鼻を突く酒の匂いがした。
暖炉は燃えているが、煙はない。

客は数人いるが、誰一人として声を上げていない。

全員が、ただそこに座っていた。
 

「……賑やかでは、ないのですね」

「賑やかにする理由がないからな」
 

老人はカウンターに腰を下ろし、店主を見た。
店主は無言で酒を注ぐ。
代金を求める素振りはない。

 

スカーレットは戸惑いながらも杯を受け取った。

「飲んでも、よいのですか?」

「かまわん。だが……」
 

老人は一拍置いた。

「飲まねばならん理由は、ない」
 

恐る恐る口をつける。
味は、確かに酒だった。

熱も、苦味もある。

だが、喉を通っても満たされる感覚がない。
 

「……お腹も、空かないのですね」

「空かん。だが、食える、暇つぶしだが」
 

老人は淡々と語る。

「ここでは、生きるために何かをする必要がない。
 代わりに……何をしても、生きている証にはならん」

 

スカーレットは杯を置いた。
急に、怖くなった。

 

「……ここは、死後の世界なのですか?」

老人は笑わなかった。
ただ、否定もしなかった。

 

「そう思う者もいる。違うと言い張る者もいる」

それだけだった。
 

酒場を出ると、町はさらに静かだった。
風は吹いているが、音を運ばない。
足音だけが、やけに大きく響く。

 

「……眠る場所は、ありますか」

その問いに、老人は初めて足を止めた。
 

「ある」

そして、低い声で続ける。
 

「だが、忠告しておく。
 ここでは、眠るときは注意しろ」

 

スカーレットは眉をひそめた。

「危険なのですか?」

 

「眠るな、とは言わん。
 だが、眠る場所は選べ」

老人は、舟の錨のように馬車を留めていた止め具を外し、懐にしまった。
 

理由は語らない。

「いつ殺されるか・・・わからんからな」
 

その言葉が、妙に重く胸に残った。

夜——という概念があるのかどうかも分からないまま、
二人は町を出た。

 

町外れの道。
灯りはなく、闇だけが続いている。

スカーレットは、背後に視線を感じた。
 

振り返る。
何もいない。

だが、確かに——

何かが、こちらを見ている。
 

老人も気づいているのか、歩調を早めた。

「……誰か、いるのですか」

「気にするな」
 

しかし、その声には微かな緊張があった。

闇の奥で、何かが動いた気がした。
 

足音かもしれない。
風かもしれない。

あるいは——
 

「今夜は、眠れるでしょうか」

スカーレットの問いに、老人は答えなかった。
 

ただ、前を向いたまま、こう言った。

「眠れるかどうかはな……
 ここでは、運次第だ」

 

闇の向こうで、何かが笑った気がした。

 

 

 

 

 


『第3章|眠らない酒場と、夜の忠告』 終了 4章へ続く

 

【ネタバレ有】映画『シャーク・イン・ザ・ダーク』レビュー

生還エンド――“サメ映画らしくない”静かなサバイバル・ホラー

※この記事は映画『シャーク・イン・ザ・ダーク』のラストまでのネタバレを含みます



作品情報

  • 作品名:シャーク・イン・ザ・ダーク

  • 原題:Shark in the Dark

  • 監督・脚本:アンソニー・C・フェランテ

  • 出演:メーガン・カラスキージョ、ノアム・シグラー

  • ジャンル:サメ映画/サバイバル・ホラー/B級映画

  • 登場人物:ほぼ2人のみ

     

     

     

     

     


あらすじ(ネタバレ有)

バカンスでビーチを訪れたカップル、ウェストンとバレンティナ。
ウェストンはこの旅行中にプロポーズするつもりで、二人はクルーザーをレンタルし沖へと向かう。
 

しかし海底から現れた巨大な鮫がクルーザーに激突。船は転覆し、二人は海へ投げ出される。
バレンティナは頭を打ち視力障害を負い、ウェストンは鮫に足を噛まれ大量出血という致命的状況に陥る。
 

転覆したクルーザーの上で孤立する二人の周囲を、鮫が執拗に回遊する。
救助の望みがほぼない中、視力を失ったバレンティナと、衰弱していくウェストンは極限のサバイバルを強いられる。
 


視力を失った主人公はどう生き延びたのか

本作の最大の特徴は、視力障害を負ったヒロインが生存の主導権を握る点にある。

バレンティナは視覚に頼らず、
 

  • ウェストンの声や物音を位置情報として把握

  • 船体やロープを触覚で確認

  • 水音や振動から鮫の存在を予測
     

することで、無謀な行動を避ける。

サメと戦うのではなく、状況に適応することが生存につながったという描写は、本作を単なるモンスターパニックから一段引き上げている。
 


ラストでサメはどうなるのか(完全ネタバレ)

多くのサメ映画と違い、
サメは倒されない。死なない。
 

クライマックスでも、

  • 爆殺

  • 刺殺

  • 直接的な勝利
     

は描かれず、最終的にサメは二人から興味を失ったかのように姿を消す
 

人間が勝ったのではなく、
**「サメのテリトリーから生きて脱出できた」**という結末だ。
 

結果として、
👉 ウェストンとバレンティナは二人とも生還する。

 

 


これはホラー映画か?B級映画か?

ホラー映画か?

YES(心理・状況型ホラー)
 

ジャンプスケアや大量殺戮はなく、

  • 出血

  • 視力喪失

  • 孤立

  • 精神的追い詰め

によるじわじわ来る恐怖が中心。
 

B級映画か?

YES(低予算・小規模)

  • 登場人物ほぼ2人

  • 舞台は海上のみ

  • サメCGは最小限
     

ただし、
ネタ狙いの“おバカB級”ではなく、
真面目に作られた小規模B級という印象。
 


サメ映画として物足りない理由

正直に言うと、
サメ映画としての満足度は低め
 

  • サメの出番が少ない

  • 犠牲者ゼロ

  • 派手な見せ場がほぼない
     

『ジョーズ』『ディープ・ブルー』『MEG』のような
モンスターパニックを期待すると肩透かしになる。
 


それでも評価できる点
 

  • 視力障害という設定の使い方

  • 閉鎖空間(転覆船)の緊張感

  • 二人芝居による心理描写
     

サメを「敵」ではなく
避けるべき自然災害として描いた点は独自性がある。

 

 

 

 

 


総評(ネタバレ込み)

『シャーク・イン・ザ・ダーク』は、
サメ映画の皮をかぶったサバイバル・スリラーである。

  • サメが暴れ回る映画ではない

  • 人が死なない

  • 勝利も討伐もない
     

その代わり、
「生き延びるとはどういうことか」を描く静かな作品だ。
 

派手さを求める人には不向きだが、
サメ映画を一通り観た人ほど、変化球として楽しめる一本と言える。
 


こんな人におすすめ

  • サメ映画にマンネリを感じている人

  • 『47 Meters Down』系のシリアス路線が好きな人

  • B級でも設定重視の作品を評価できる人
     

おすすめしない人

  • 血しぶきと絶叫を期待する人

  • サメ=人が死ぬ映画だと思っている人