【ネタバレ有レビュー】
『シャーク 消えた三人の死体』はB級だが“後日譚”として異色のサメ映画だった
※本記事は映画『シャーク 消えた三人の死体』の結末を含むネタバレレビューです。未鑑賞の方はご注意ください。
■ 作品概要
タイトル:シャーク 消えた三人の死体
原題:Bull Shark 2
監督・脚本:ブレット・ベントマン
ジャンル:パニック/サメ映画
制作国:アメリカ
位置づけ:映画『Bull Shark』(2022年)の正統続編
本作は、低予算ながらも独自路線を貫くB級サメ映画であり、
単なる怪物パニックではなく、
「怪物を倒した“その後”」を描いた後日譚的続編である点が大きな特徴だ。
■ あらすじ(ネタバレあり)
舞台はテキサス州のレイロバーツ湖。
数年前、巨大オオメジロザメ(ブルシャーク)が出現し、多数の犠牲者を出した事件があった。
当時、猟区管理官だった主人公スペンサーは、
仲間や地元住民と共に命がけで戦い、サメを撃退することに成功する。
しかし彼は、
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仲間を守れなかった罪悪感
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PTSD(心的外傷)
-
世論と政治的責任の集中
によって心を壊し、アルコール依存症となり、
仕事も家庭も失った状態で今作は始まる。
■ 「消えた三人の死体」の真相
物語序盤、湖畔で若い男女3人が行方不明になる事件が発生する。
これが邦題にもなっている
**「消えた三人」**である。
しかし、
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発見されるのは遺体の一部のみ
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3人分の完全な死体は一度も揃わない
-
町の市長や開発業者が事件を隠蔽
という状況から、
**「死体が消えた」のではなく「真実が消された」**ことが明らかになっていく。
ラストでは、
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少なくとも2人は確実にサメに捕食され死亡
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残る1人(クリッシー)は即死ではなかった可能性
が示唆され、
母レズリーにとって最も残酷な真実が突きつけられる。

■ サメは複数いたのか?
作中では明確に断言されないが、
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被害発生地点が短時間で複数
-
噛み跡やサイズ感の違い
-
湖底で複数の影が描写される
といった点から、
少なくとも2匹以上のオオメジロザメが存在していた可能性が高い。
ただし、
ラストで倒されるのは1匹のみであり、
脅威が完全に消えたとは言い切れない余韻を残す。
■ クライマックス:サメの倒し方
主人公スペンサーは、
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動物の血
-
音響装置
を使ってサメを湖の中央へ誘導し、
**爆薬付き銛(ハープーン)**による至近距離攻撃で仕留める。
肉体的にも精神的にも限界の中、
彼は再びサメと対峙し、
今度こそ「逃げずに向き合う」ことを選ぶ。
■ 前作との関係性と続編としての意味
本作は、
映画『Bull Shark』(2022年)の完全な続編である。
ただし、
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前作は日本未公開・未ソフト化
-
タイトルに「2」や「続編」表記がない
ため、単体作品と誤解されやすい。
前作が
**「怪物を倒す物語」**だったのに対し、
今作は
**「怪物を倒した後、人生が壊れた男の物語」**である。
前作の生存者たちは今作にほとんど登場せず、
主人公を助けない。
それは、
英雄神話を否定し、孤独な贖罪を描くための意図的な構成だ。
■ この映画はB級映画か?
結論として、
制作規模・流通形態の面では完全にB級映画である。
しかし、
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ギャグ路線ではない
-
物語は一貫してシリアス
-
社会的テーマ(隠蔽・再開発・責任)がある
という点で、
いわゆる「ネタ系B級サメ映画」とは一線を画している。
B級だが、雑ではない。
派手ではないが、真面目な続編。
■ 総合評価(ネタバレあり)
『シャーク 消えた三人の死体』は、
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サメ映画が好きな人
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B級映画耐性がある人
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派手さより「後味」を重視する人
に向いた作品だ。
逆に、
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CGクオリティ重視
-
明るいパニック映画を期待すると
物足りなさを感じるかもしれない。
だが本作は、
「怪物を倒せば終わりではない」
「勝利の後にも責任は残る」

というテーマを、B級映画の枠内で誠実に描いた異色作である。
■ まとめ
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『シャーク 消えた三人の死体』は正統続編
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タイトルの「消えた三人」は隠蔽された犠牲者
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サメは複数存在した可能性が高い
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主人公は唯一の生存者ではないが、精神的に孤独
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B級だが、後日譚としては非常に珍しい構成
サメ映画の皮をかぶった、贖罪と再生の物語
それが本作の正体だ。










