ゆいは仕事終わりに御用達の中華料理へ。帰りが遅くなった菜々を『葉やま』でバイト中の孝之のところへ送り届けるついでに二人を食事に誘った。
天津飯でお腹いっぱいの小百合は予め頼んでおいたゴマ団子を持ってきてもらった。皿には4つ。一人で食べるのも気が引けるので4つの団子を一つずつお裾分け。最初は遠慮した3人だったが、小百合の美味しそうに食べる姿を見てはそっと手を出した。
「おっ!美味しい♪」
「でしょ~♪」
お冷を入れに来た慎二は、このメンツの理由を聞いた。話したのはゆいで、今日は最初からここへ来ることと、菜々を孝之のところまで送り届け時間が早かったこともあり、二人を誘ったことを話した。
慎二がユイに話すかどうかは分からない。仕方のないことでも自分だけがいないことに疎外感を感じたりしないだろうか、傍から見ればそんなことくらいで?とか、しょうがないとか思うだろう。そのそんなことが気にならない人もいれば気になる人も一定数いる。
「しょうがないけどさ、ユイちゃんもいればよかったね。いつかみんなで来たいね」
「ユイにそう言っとくよ」
小百合の言葉にみんなが頷き、席を立った。
お会計は孝之が菜々の分も払い、小百合の分はゆいが出した。
慎二と別れ店を出た後、ゆいは孝之と菜々を家まで送る。菜々は明日も授業があるので、それぞれの家に送ることになった。
ゆいの話で盛り上がった頃、孝之を降ろし、ちょっと静かになった空気の中、菜々を降ろした。
さっと食べてさっと帰るはずだったが、ゆいは孝之とは会う機会がないので、今日は話せて楽しかったと感想を話した。ただやっぱり『カッコいい』発言はゆいの誤解は解けても気になる一言だったと、少しだけ蒸し返した。
「そんなことないことはゆいが一番分かってるのに。それを言うならたけもっちゃんだって。二人ともイケメンじゃん。ゆいもそう思うでしょ?」
確かに。最初に孝之を見た時、小百合が好きになったらどうしようかと不安だった。そんなことまで蒸し返したら何て言われるか分からない。
結局は、そうだねとだけ言いアパートに着いた。
もう時間も遅いので今日はシャワーにするが、二人とも昨日の❤の約束を忘れている。それどころか小百合は再来週バイトをチェンジしたことを話し、荷造りをどうしようかと相談。そこはゆいも出来るだけ頑張ると言い、ゆいはゆいで、今度の日曜日に出掛けたいところがあると小百合に相談。
「小百合は日曜日の予定ってある?ネックレスを買ったお店の西野さん。大家さんになるから挨拶しておきたくて。でも午前中は引っ越しの見積もりが来るし、どうしようかなって」
「私は特にないけど、ゆい今週は神経すり減らした一週間だったんだよ。疲れはどこで取るの?」
「ここで取る」
ゆいは小百合を抱きしめ、『ここで取るからいい』とじっと目を閉じた。
「日曜日のことは分かった。でもロケって帰って来るのは早朝なんでしょ?」
間に合うと思い業者には来てもらうが、時間的に無謀だったかもしれない。
どうしよう・・・と、情けない顔をするゆいに小百合は撤収時間を何とか急げばいいから、ゆいにはいつも通りに撮影をしてくれと安心させた。
「ゆい、先にシャワーしてきて。明日の朝ご飯は何でもいい?」
「うん。小百合、慎二君の話。蒸し返してごめんなさい」
「許してあげる」
小百合は笑いながらゆいの頬を軽く摘まんだ。