疲れてると言えばそうなのかもしれない。でもそれは身体じゃなく気持ちが。誘ってくれた回転寿司屋も小百合は家で食べたいと言い、閉店間際のスーパーへ直行。
帰りの車の中では、小百合から服の替えを指摘され、正直に事情を話した。
すると小百合は呆れるどころか、さすが私と自分を褒めていた。
しかし海水で髪もベタベタで着替えたいのに、小百合のLINEを読み何かあったのかと気遣ってくれたなんて。
そのことについては、ゆいは気にしていなかったと言った。
「全部着替えたし、そこまで長居しないと思ったから。冷蔵庫も空っぽだったしちょうどよかったよ」
やっとの思いで家に帰ると、シャワーを浴びたいゆいは道の駅で買った野菜もスーパーで買った食料も全部テーブルに置くと、小百合に濡らした服をカバンから出してもらい、『シャワーしてくる!』と言って浴びに行った。
「ホントだ。先に洗っちゃおう」
ゆいの汚れ物だけを洗濯機に全部放り込みスイッチオン。ゆいを待つ間、小百合はゆいが買ってきた野菜を確認し、空っぽの野菜室へ入れた。
「小百合~」
浴室の扉が開き、呼ばれた小百合はシャワーのお誘いかと喜び勇んで行くと、全然関係ないことを言われる。
「由紀さんとさっちゃんが小百合にお菓子を買ってきてくれたの。白い紙袋に入ってるから」
「あっそうなんだ。分かった」
嬉しいはずなのにちょっぴり拍子抜けの小百合は、言われるまま紙袋の中からご当地のお菓子を見つける。
「へぇ。千葉のばかうけなんてあるんだ。お礼のLINE送っとかなきゃ」
サッパリして出てきたゆいは送ってる最中の小百合の後ろからそっと肩を抱き、スマホの画面を見ていた。
「ゆい?ちょっと待ってね」
由紀とさちにそれぞれお礼のLINEを送ると、ゆいの腕を離しクルっと振り返ってはゆいの顔をじっと見つめた。
「ゆい、焼けたね。痛くなかった?」
「ちょっとだけヒリっとする。これでも結構まめに塗ったんだけどね」
小百合は指輪が通してあるネックレスに触れ、外してもいいのか聞いた。ゆいは少し前かがみになり小百合が外すのを待っているが顔が近すぎて小百合は恥ずかしがる。
「なに照れてんの?チュッ❤」
「だって❤」
外した指輪をゆいの指にはめ、再びネックレスと首に掛けた。今度は小百合からチューのお返し。
「あっ♪もらっちゃった❤でも、今日は小百合が用意してくれたおかげで無事に、なのかな」
小百合といることで忘れていた今日の撮影のこと。小百合に聞いてほしいが先に小百合のことを聞きたいゆいは先に食べようと言い、冷蔵庫から酎ハイを出した。
「お腹空いたね。遅くなっちゃったけど食べよう」
軽く乾杯し、やっと空腹を満たす。ゆい、今が話すいいタイミング。
「小百合?LINEのことと手紙のことだけど。何か悩んでるの?話してくれない?」
無いと言えばゆいは悲しい顔をするので、小百合はユイと菜々に話したことと同じことを話した。
「それで課題が終わらないって言ったんだね。どうして全部背負いこむの?私じゃ頼りにならない?」
「そんなことない!でもゆいは今が一番忙しいし。だから私が頑張らなきゃって」
「小百合は十分頑張ってるよ。それ以上頑張ったらまた体壊しちゃう。今日だって私に甘えてくれたじゃん。晩ご飯のこととか。それでいいんだよ。もっと自分に甘えて。んで私に甘えてよ」
小百合は小さく頷き、酎ハイを飲んだ。