いつになったら心が休まるのだろう | トランジットガールズ Another Story ♬novel♬

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ドラマ トランジットガールズの未来の物語。

変わらないよ・・・。
私はずっと変わらない。

今日はゆいのロケが変更になり、途中で引き上げてくることになった。講義が終わったら真っすぐ帰るつもりでゆいにもLINEを送ったが、撮影が中断で戻って来るならと、図書館で課題をやりながら待っていることにした。

何時に連絡があるか分からない中、生協へ寄っては一回り。いつも買うチョコレートを止めて、今日はお菓子のアソートを買った。ロールケーキやらクレープ生地のお菓子、クッキーなどの全て一口サイズの可愛らしいお菓子だった。

これを冷蔵庫の扉に入れて置き、仕事で疲れたゆいに食べてもらう。小百合が出来ることはこれくらいだ。

図書館に入ると、先ず韓国語の辞書を数冊持ってきては机に広げた。

きっとゆいからの連絡は1~2時間はないだろう。小百合はやれるだけやっちゃおうと小さく伸びをして始めた。

 

小百合が頑張ろうと辞書を広げた時はまだ高速道路を運転中。行きと同じ道順なのになぜか行きより帰りの方が早い。車内での会話はもちろん今日の撮影のこと。

「ゆいちゃん、どうすんの?卓人のこと」

「きっと心が読まれてることは気付いてないと思う。私も乗り気じゃない人のカメラマンになるほど暇じゃない。でもあの子の表情を引き出さないと私のプライドもあるし。それか奥の手を使うか」

それは正直に話し、ゆいがカメラマンから手を引くこと。

「ゆいちゃん、冗談でしょ?止めときなよ」

「私、バカにされたみたいで気分よくないし。奥の手よ、奥の手」

卓人は恥ずかしいから出来ないとか言っておきながら心の中ではやる気がないから早く終われと思っているのだろうか。

「でも打ち合わせの時は、本人のやる気が見えたんだけどなぁ。良い表情してるときもあったからさ。それも見せかけ?やっぱり女のカメラマンじゃダメなのかな」

話してるうちにゆいはだんだんと自信がなくなって来た。

ロケは中止になったが楽しい気分で帰るつもりがゆいのグチで空気が悪くなってしまった。今の話はここだけにしてほしいと言い、高速道路を降りた。

「ゴメンね、疲れてるのにこんな話なんかして」

「そんなことはいいのよ。でも後3日あるけど」

「明日、撮影前に本人に聞いてみる。やる気があるのかどうなのか」

ゆいだってそんなことは一々聞きたくない。本人の士気を高めるために親睦会まで開いたのに、まさかの本人にやる気がないことを聞くなんて。

でも残り3日、このまま気持ちを探りながらの撮影は絶対にいいものは出来ない。撮影終了後も携わる以上、有耶無耶にはしたくない。

「ゆいちゃん、健斗さんに聞いてみるのは?」

由紀に言われ、その手も考える。しかし、卓人は心の内は健斗には話してないだろう。全ては明日の朝、卓人に話を聞いてからだ。

 

「はいっ、到着~♪お疲れ様でした」

車を降りる前、ゆいは小百合に一言LINEし荷台から機材を下した。

小百合はやっとの連絡に慌ててスマホを掴んだ。

『今帰った。まだ2時間くらいは帰れない』

「2時間かぁ。んじゃ、もうちょっと頑張ろうかな」

自分で選んだ絵本。結構なページ数だが残り15ページ。挿絵も入っているので実質7~8ページといったところ。このままいけば、今週中には終わりそうだ。少しでも早く終わらせて引っ越しのことや家のことを考えたい。

だが、小百合はロケは中止になったことは聞いたが、土曜に変更になったことはまだ聞いていない。