腹ごしらえのおにぎりは昨日炊いたコーンのピラフ2つ。
サプライズのお手紙をもらったゆいは、その期待に応えたい気持ちでおにぎりを食べた。
「ごちそうさまでした。美味しかったぁ」
「作っといてなんだけど、こんな早い時間のおにぎりはヘビーじゃなかった?」
「おにぎりだから良かったんじゃん。ありがとね」
小百合はまたベッドで横になり、バタバタと朝の支度を始めたゆいを見ていた。そのうちウトウトしてしまい、肩を叩かれた時にはゆいは家を出る時だった。
「小百合?もう行くね」
「あっ!寝ちゃった。ごめん、もう時間?」
小百合は飛び起きて仕事に行くゆいを見送る。
「着替えの支度ありがとね。じゃ~行ってきます」
「千葉まで遠いけど事故やケガのないようにね。いってらっしゃい♪」
お仕事頑張ってのチューをもらい、ゆいは家を出た。
ゆいを見送った小百合はもう少し寝ようとベッドに入り、一人の朝ご飯をどうしようかと考えた。ゆいに残りのご飯を全部握ったので、朝食べるなら炊かなきゃいけない。一人分を炊くのは電気代が勿体ない。じゃ夜の分も一緒に3合?夜は炊き立てがいいに決まってる。
「食パンもないし。朝からコンビニもめんどいし。冷凍ご飯ってあったかな」
寝るつもりだった小百合はしゃがんで冷凍庫を漁り物色。期待したご飯はどこにもなく、しょうがないので最後の手段でそうめんを茹でることにした。
小百合が朝ご飯で路頭に迷ってることなど(かなり大げさ)想像もつかないゆいは、もらった手紙が気になって仕方がない。冷静な気持ちで受け取ったが、内心は舞い上がってしまうほどに嬉しかった。出来ることなら今運転中だがこの場で読みたい。
スタジオに着いたときに❤と思ったが、すぐに出発しなければならないので今日はそんな少しの時間もない。
「ってことは終わって帰って来てからってこと?」
小百合からの気持ちを読んで自分でモチベーションを上げようと思っていた
だけに、読めないと分かったゆいは、それこそモチベーションが下がる。
「せっかく書いてくれたのに帰って来るまでオアズケ?そんなぁ」
小百合はきっと読んだ感想を待ってるのではと、駐車場に着いてから小百合にLINEを送り、事務室へ入った。
朝からそうめん。鍋に湯を沸かしたはいいがやっぱりためらう。食べる気がない小百合はそうめんを握ったままじっと見ていた。
その時聞こえたLINEの音。朝から誰?と思いながら開けた時、小百合は自然と口角が上がった。
『小百合~ちゃんと起きたかな?お手紙ありがとう。すぐに読みたいんだけど今日はタイミングが見つからなくてもしかしたら帰ってきてからになるかも。
でも小百合に逢うまでには絶対に読むから。小百合からのお守りだと思って今日は挑みます!』
せっかく書いたのだから読んでほしいし返事を聞きたいとは思っているが、それはゆいのタイミングで構わない。
「いつでもいいのに。っていうか、LINE送る余裕なんてないじゃんか。大丈夫なの?」
今日は誰と一緒に行くのか聞いていないが、慌ただしく出掛ける姿が容易に想像でき、小百合は小さくため息を吐き返事を送った。
「さてと。そうめん、どうしよう」
結局は袋に戻し、鍋の火を止めた。
小百合からのLINE。ゆいは気付かないままスタジオを出発。もちろん、小百合が用意してくれた着替えも一緒に。今日はこの着替えは吉と出るのか。