小百合が明日の朝のおにぎりを作ってくれた。家で食べたいゆいは寝坊しないようにと慌てて明日の支度をしてベッドに入った。小百合はまだ寝ない。これからが集中の時間だ。
横になりながら小百合を見ていたゆいは、やっぱり疲れたせいか眠くなってきた。小百合が終わるまで待ってようと思っていたが何度もまぶたが下りる。
「小百合、先に寝るね」
小百合はゆいのそばへ来てはちょこんと座り、ゆいにおやすみのチューをした。
「今日もお疲れ様だったね。私も適当なところでキリをつけるから。ちょっと明るいけどゴメンね」
「ううん、大丈夫。おやすみ」
しばらくするとゆいの深い寝息が聞こえる。疲れてるんだろうとは思うが、しっかり寝てくれたようで少しでも疲れを取ってほしい小百合はホッとする。
寝返りも打たないくらいに熟睡しているゆいに、小百合は久しぶりに手紙を書く。久しぶりだからってそんな物々しくない。可愛く折りたためる程の短いお手紙。いつ読んでくれても構わない。書きたいことは日曜のことと次の新居のこと。でも伝えたいことがあり過ぎて一枚の紙に収まらない。それでも何とか要約して書き上げきれいに折りたたんだ。
もう30分、1ページ分の翻訳を書き、小百合も寝ることにした。
さて、問題はここから。このままベッドに入れば振動でゆいが起きてしまうかもしれない。ここはゆっくりと足を滑らすように入り、そっと横になった。それでもやっぱり揺れてしまい、ゆいは目を覚ましてしまった。
「小百合も寝る?おいで」
ゆいは意識があるのかないのか、小百合を抱き寄せまたも深い寝息を小百合のおでこに吐いた。
くすぐったい小百合だったが眠気に負けそのまま夢の中へ。やっと今日一日が終わった。
朝方、ゆいを起こさなきゃと小さな責任感を感じ、小百合は早く目を覚ます。
ゆいを起こすまで後20分。小百合もまだ眠い。このまま寝てしまってはゆいが遅刻してしまう。ゆいに自力で起きてもらうという考えは眠たい小百合にはその判断がつかない。現にゆいは全く起きる気配がないし、なんなら小百合が起こしてあげたい。
もう寝坊するよりマシだと、小百合はゆいを起こした。
「ゆい、起きて。朝!時間だよ」
「起きたくない。小百合、代わりに行ってきてzzz」
「いいの?じゃ~代わりに授業受けてきて。今日は韓国語もあるから遅くなるけど。今日はイケメンとお話出来るかも❤楽しみ❤」
「やっぱ起きる。小百合は喋んなくていい!」
「なにそれ?ちゃっちゃと起きておにぎり食いな」
小百合に言われて思い出したゆいは、おはようのチューをして顔を洗いに行った。
少しずつ冷たくなっていく水で顔を洗いしっかりと目を覚ます。これから腹ごしらえと思いながらリビングへ行くと、小百合が座って待っていた。
「小百合、まだいいでしょ?寝ててよ」
「うん。お茶でいい?」
小百合は温めたおにぎりとお茶を出すと、昨日の夜に書いた手紙をテーブルに滑らすように渡した。
「これ。いつもはお弁当と一緒に渡してるけど、おにぎりをここで食べてくれるから」
「ありがと!昨日書いてくれたの?」
小百合は小さく頷き、ちょっと照れたように微笑む。
書いてくれた手紙はゆっくりと読みたい。でも時間がない。嬉しいゆいは何故か膝に置き、おにぎりをかじった。
「返事、遅くなるかもだけど絶対に書くからね。でも嬉しい❤」
早朝の撮影で少々気分が萎えていたが、小百合のおにぎりと手紙で最強のパワーをもらったゆいは、今日はこれで頑張れる!と言いリスの頬のように口いっぱいに頬張った。