今日は一緒に帰れると思い、楽しみにしていた小百合だったが、結局ゆいの仕事が終わらず一人役所へ行き帰ることになった。今日みたいなことはよくあること。ゆいの仕事は十分理解している。でも逢えると期待していただけにちょっとつまんない。
さて。小百合は初めて役所へ行き、うろうろしながら受付をすると自分の住民票を申請した。ゆいの分もと思ったが、ゆいの住所は今のアパート。小百合がもらうことはできない。自分の分だけもらいゆいに電話を掛けた。話を聞いたゆいは、思い出したように納得し、電話を切った。
「ゆいちゃん、どうしたの?」
「小百合に住民票をお願いしたんだけど、私のは自分で行かないといけなくて。当たり前なのに小百合にお願いしちゃってさ」
「そりゃそうだ。明日は無理だね。役所は5時まででしょ?今は?区役所ならギリ間に合わない?今から行け~!」
あきに言われ、あとは菜々にお願いしてゆいは急いで車でひとっ走り。やっと着いても駐車券でもたついたりで、受付表を取った時間は受付終了3分前。こんなにハラハラしたのは初めて。待ってる間に記入し待つこと数分。
「葉山ゆいさ~ん」
用紙をもらい外に出た瞬間、疲れがどっと出た。取り急ぎ小百合には連絡をしスタジオへ戻った。
LINEをもらった小百合は、ちょうど坂道を上ってる時。
「ゆい、もしかして終わったのかなぁ?待ってればよかったのかな・・・ん?」
事情を知った小百合はまさか仕事を抜け区役所へ行くなど想像もしてないこと。LINEを読んで足が止まる。
「強行突破だね。でもこれでいつでも不動産屋に行ける。私も早く終わらせなきゃ」
ゆいから帰る連絡が来るまでに、洗濯物を取り込み晩ご飯の仕度。そして。
今のうちに用意しておこうと、濡れてもいいエコバックに着替えの服一式と見えない袋に入れた下着。汚れ物を入れるレジ袋を入れた。
「タオルも入れておこうかな。あっ!明日は早出だって言ってた。おにぎり持たせなきゃ」
もうやってることはお母さん。でもゆいの世話をしてる自分、誰にというわけではないが優越感に浸っている。
「これで転んで濡らしても大丈夫。次は晩ご飯かぁ」
冷蔵庫が空っぽの中、小百合はコーン缶とバターでピラフを炊き、冷凍庫から『いつになったらここから出してくれるんですか!』と言われたら怖いトンカツ用の肉を解凍。みそ汁は何とか。
「よしっ。洗濯物は後にして、課題始めよう~っと・・・あ~ダメだ。やっぱ洗濯物が気になる。たたまなきゃ」
小百合がやっと自分のことが出来た時間、やっぱり7時。まだゆいから連絡はない。それもそのはず、今ゆいは菜々が帰りの掃除をしている間に、今日のスチールのチェックをしていたから。
時計を見て気付いたゆいは小百合に電話を掛けた。
当然小百合は、ゆいが今から帰るというと思っていた。しかしまだ帰れないという言葉にテンションが下がる。
「マジで?」
「ごめぇ~ん」
「大丈夫、今課題やってるから。あっ、使ってゴメンだけど帰りにコンビニでサラダ買ってきて。じゃ~もすこし頑張って」
ゆいが帰って来ない。遅くなるのは淋しいが、ちょうどいいと言えばちょうどいい。その間にやれるところまで頑張ろうと一人気合を入れた。
「帰りにサラダかぁ。晩ご飯何だろう♪よしっ!もう一息頑張ろう」
帰ったら美味しい晩ご飯が待ってる。ゆいはそれだけを励みにチェックを続けた。