大事なことはお早めに! | トランジットガールズ Another Story ♬novel♬

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ドラマ トランジットガールズの未来の物語。

変わらないよ・・・。
私はずっと変わらない。

いやいやそんな話、今ここで言うことじゃないでしょ!と、猛スピードで走ってる車の中で言いたい気持ちを抑え、ゆいは違う会社のCM契約を『受けます』と詳しい話を聞かないまま返事をした。

先生の言い方だと、もう話は来ていたような。どういうことなのか説明してもらいましょうか!などと、ドラマのセリフにでも出てきそうな言葉が頭の中を駆け巡る。結局ゆいはその一言だけを言い、後は無言のまま会社に着いた。

受付のきれいなお姉さんに取り次いでもらい、エレベーターで15階まで上がる。韓国の超有名コスメ会社。それでも日本という外国で自社ビルが持てるというのは凄いこと。

それだけ売り上げがあるということだが、だからこそ日本人のゆいの起用を『冒険』出来るわけだ。

先生と二人してフロアをキョロキョロすると、秘書のハンビョルさんが出迎えてくれた。

ハンビョルさん、自分磨きに余念がない。整形かどうかは別にしても相変わらず美人だ。

最初に契約のために来た社長室。あまりの広さに恐れおののくが、今日もドアを開けた瞬間、やっぱりその広さに背中がのけ反った。

 

ゆいが社長とたーちゃんに会っている頃、小百合は洗濯物をたたんでいた。

今日も天気が良かったので、シーツも枕カバーも何だか良い匂い。早くに寝ることが出来ないが、今日は気持ちよく眠れそうだ。

「明日は時計を買いに行ってその足で不動産屋かぁ。うまく見つかるといいんだけど」

ただ、何もこんな時期じゃなくてもいいのにと思ってしまう時がある。このまま見つかれば引っ越しはテスト期間と重なるか近くなるだろう。出来れば冬休みに入ってからじゃダメ?と。しかしそれを言ってしまうと、ゆいも今月は撮影のスケジュールが詰まっている。ゆいの場合、今月だけじゃない。どのタイミングも重なる。だったら早いとこ引っ越してゆっくりと荷解きすればいい。

「こっちの要望は固まってるし、それに似合った部屋が見つかればってことなんだけどさぁ。そんなにうまくいくかなぁ」

悩んでても時間が過ぎるだけ。小百合は気を取り直し、畳んだものを引き出しにしまった。

バイトに行くまで後1時間ちょっと。やっと始めた課題も自分が決めたページよりも進んだ。早く済ませばその分ゆいとゆっくりできる。今日はこれでキリをつけたが、少しの時間も勿体ないと思い、時間ギリギリまでもう一度テーブルに広げた。

 

ゆいたちは、社長室からメイク室という名の研究室へ通された。

これでもかというくらいにたくさんの美容器具が並ぶ中、ゆいはライトの前に座り、メイクを落としてもらう。もちろん自社製のクレンジングで。

ゆいは言われるままに落とし、みんなの前ですっぴんをさらけ出す。

たーちゃんは何度も見てきたので今さら驚くことでもないが、ゆいの素顔を初めて見た研究員たちはその綺麗さに驚き、ゆいはいくつもの視線を感じながら少し照れていた。でも心の中は全く別のことを考えていて、何度も先生をチラ見していた。

『先生、お腹空いたんですけど!お昼軽く済ませてから行くって言いましたよねぇ』

「ん?ゆいさん、どうかした?」

「いえ。たーちゃん、私の肌質はどう?」

「キメも細かいし水分量も申し分ないわ」

撮影するには今が一番いい。しかし、さすがに明日というわけにはいかないので、ゆいにはもう少し頑張ってこの肌質をキープしてもらい、ゆいのスケジュールの中で空いた日で調節して撮影に入ると決まった。

「撮影スタッフは前回と同じですか?」

今回もカメラマンは佐伯さんだと言う。ただ、佐伯さんのスケジュールもあるので、みんなで食事を兼ね日時を決めたいと言った。

話は一度中断。これからゆいは自社ブランドの化粧品で一通りのメイクをしてもらうことに。そこでゆいはあることを考える。