こっちのオアズケも辛い | トランジットガールズ Another Story ♬novel♬

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ドラマ トランジットガールズの未来の物語。

変わらないよ・・・。
私はずっと変わらない。

小百合は人見知りではない。初対面でも身構えることなく割と話せるタイプだと自分では思う。相手が質問ばかりしなければだ。

お昼、ゆいが作ってくれたお弁当でお腹も心も満たされ時に何だか奥歯に挟まったようなことを言われ、少し嫌な気持ちになる。『例えば?』と聞かれ、自分の返事の仕方がおかしかったのかと一瞬振り返るが、そこは『そうなんだね』と言ってくれたら話はそれで終わり。聞かれたからってまだ深く話せる相手じゃない人には答える理由はない。

昨日交換したLINE、消したいくらいだ。

 

「ななっち?たけもっちゃんは少しは元気になった?」

「ありがとね♪ちゃんとご飯も食べてるし。今はレポートが出てるから遅くまでやってる。シフト替わってもらえてよかったって。レポートが終わったら替わろうかなって言ってた」

「私は構わないけど、無理はするなって言っといて。じゃ私用事があるから先に行くね」

用事なんかない。ただ目の前の美穂と関わりたくないだけ。

 

一方、撮影がやっと一段落したゆいは、これから昼休憩。一人外に出ては小百合からのLINEを読んだ。ゆいにとってこれが本当の休憩時間だ。

『今朝話した雑誌のこと、あれが一番ページが載ってるから、バイトに行く前に生協で買ってくね。撮影はもうすぐだけど何か参考になれば』

『返事は要らないよ。読んでくれたらそれでOK!』

それでも返事を送りたいゆいは、文字を打とうとした時、ゆいを探していたスタッフから呼ばれた。

「葉山さん、ここでしたか。ちょっと良いですか?軽い変更がありまして」

「はいっ!今行きます」

ゆいは歩きながら一言だけ返事を送りスマホをポケットに入れた。

 

ユイたちと別れた小百合はテラスで今日もコーヒーを飲みながら自分の時間を過ごす。今もゆいからの既読はない。

食事は取れるのかなと思いながらボーっと外を見ていると、愛しのゆいからLINEが入った。

小百合が慌てて開くと、本当にたった一言だけ入っていた。

『私のためにありがとう。お願いします』

私のために・・・。そう、ゆいの仕事が上手くいくことをいつも願ってる。だから無駄かもしれないけど、手を貸すことができれば。

「ゆいから返事も来たことだしそろそろ行こうかな」

小百合はお弁当の感想とスタンプを送り教室へ行った。

 

ゆいは今、スタッフに呼ばれ変更の話を聞きながら前半に撮ったスチール写真を確認していた。

「今日は風がないので、屋上で撮るのはどうかと思いまして。そこでインタビューってのはどうでしょうか。葉山さんの構想と合致すればなんですけど」

「その辺は大丈夫です。一緒に考えましょう。ワンちゃんたちが逃げないようにすれば大丈夫だと。衣装はどうしますか?」

そうゆいは言ったが、『今なの?ね~何で今なの?』と、昼ご飯よりも小百合に伝えたかったことがたくさんあったのにとすごく残念がる。

スタッフ誰一人として席を離れないので、腹が減ったと言えない。

席を外していたさちが、これから準備をするスタッフを見て、なに?とゆいの腕を掴んだ。ゆいは泣きそうな声で説明し、準備を頼んだ。

「ご飯オアズケで泣いてんの?」

「半分そうで半分は違う。とりあえず輪湖さんとこ行こう」

ゆいたちが控室へ行くと、数点の衣装を選んでいる最中だった。どれも似たようなスタイルだが、色で迷ってるらしい。

今日は雲一つない快晴。キレイな青空が一面に広がる。だったらと薄いクリーム系のワンピースが空に映えるのでは?と勧める。

衣装が決まったことを連絡すると、ここで一区切り。今度こそ休憩に入った。

お腹が空き過ぎて早く食べたい。それよりも小百合からの返事が読みたい。

今日のお弁当は輪湖さんの差し入れ。食べようとフタを開けてスマホを掴んだ時、またもスタッフに呼ばれた。