少しでもゆいの力になりたい | トランジットガールズ Another Story ♬novel♬

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ドラマ トランジットガールズの未来の物語。

変わらないよ・・・。
私はずっと変わらない。

ゆいにとって目から鱗が落ちるほどのアドバイスを小百合が教えてくれた。男性モデルの写真を撮るにあたり、どうしたらいいのか今も模索中。悩みは尽きないが、自分よりも若い、それもイケメンモデルの写真集に携わることなど、今の自分の年齢や経験では有り得ないこと。なかなか挑戦できる機会はない。

これもゆいを紹介してくれた健斗のおかげだ。小百合とのことは水に流すということで、小百合からのLINEに返事を送り、都内のハウススタジオへ向かった。

今日は輪湖早苗のエッセイ本の写真撮り。今日はインタビューもあり、予定終了時間はとりあえず夕方までということで、多分延長する気持ちで現地に到着した。

他のスタッフさんたちは外注でお願いしたが、基本ゆいのアシスタントはさち一人。なのでゆいも一緒に機材を運んでは関係者たちに挨拶して回った。控室として用意した部屋に輪湖さんとワンちゃんたちが待機していた。

 

「おはようございます!」

今日のために可愛くトリミングしてもらった『つぶあん』『こしあん』がしっぽを振って近寄って来た。『あんこ』は人見知りなのか、輪湖さんの膝から降りようとしない。

ゆいは手をベロベロと舐められながらワンちゃんたちにも挨拶。

今日の予定を軽く説明し、控室を出た。

「ゆいちゃん、はい」

さちからウェットティッシュを渡され、やれやれと言いながら拭いた。

 

授業が終わった小百合はノートをカバンにしまうと、当たり前のようにスマホを開けた。ゆいからのLINEに胸が躍る。

『そっか!私、写真集ばっかり参考にしてた。教えてくれてありがとう!』

『今日はお昼もLINEが送れないかもしれない。ゴメンね。でも夜はお迎え行くから。待っててね!今から行ってきます!』

小百合は一瞬残念がるが、我に返り『私を誰だと思ってる!』と独り言を言う。ゆいの仕事を理解している小百合だもの、LINEが来ないことくらいで子供ようなことは言わない。

「とりあえず雑誌のことは伝えてよかった。ゆい、忙しいのかぁ」

小百合は、既読にならなくてもいいのでゆいに返事を送り、次の教室へ行った。そして、ゆいのために一肌脱ごうと、亜衣と弥生、そして他の女子たちに、今月の雑誌で卓人が掲載されているページが一番多い雑誌を教えて欲しいと聞き回った。

案の定、推しなのかと言われるが、そこは適当に返事をし、雑誌名を教えてもらった。一番多いのは今朝見た雑誌らしい。それにしても簡単に言えるくらい卓人は人気なんだと、それはそれで月曜日会えるのが楽しみになって来た。

 

授業が始まる直前、隣に座っていた亜衣が小百合に小さな声で聞いてきた。

「もしかして、ゆいさんの仕事?」

普段の小百合は芸能人のことを聞き回るようなことはしない。明らかに違和感があった。バレたと思ったがさすがにこれは言えない。

小百合は、今朝、生協で見た雑誌に載ってたことを話し、あーいうのが好みだと、その気もないことをさもそうであるかのように話した。

ゆいとの仲を知っている亜衣は、今一つの反応。小百合の話を信じてない素振り。だからって小百合もそれ以上のことは言わず、ノートを広げた。

 

卓人の撮影は5日後。もっと早くに気付けばよかった。そしたら選択の幅も広がったのに。ゆいのアシスタントになるならそんなことにも率先して考えて気付かなければ。

『難しいなぁ。まだまだだなぁ』

小百合の頭の中は授業よりも、如何にしてゆいの力になれるのか。

誰も教えてくれないことを自分で気付くのは難しい。もう新人ではないので、もうそろそろしっかりしないと周りの人たちに笑われる。笑われてないけど。

『早く卒業してゆいに就いて勉強したい』

そのためにも授業に集中しないとと、やっとボードの解説を書き始めた。