不安なのはゆいなのに | トランジットガールズ Another Story ♬novel♬

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ドラマ トランジットガールズの未来の物語。

変わらないよ・・・。
私はずっと変わらない。

いつもそうだった。どんなお弁当でも、ゆいは必ずお礼のLINEを送ってくれる。美味しかったと言ってくれる。それだけでいいのに家に帰ってもまた言ってくれる。出来合いものばかりで全然力入れてないものでも、大したものじゃないのにゆいはそれを愛妻弁当だと表現してくれた。

少しの言い合いも笑ってしまい、結局は明日一緒に作ることになった。

今日の晩ご飯は鶏団子の・・・雑炊。鶏団子の出汁が美味しくて堪らない。ゆいの味付けが大好きな小百合は、熱々の雑炊をすすり目を閉じては天を仰ぐポーズで食べていた。

「あ~美味しい。ね?今日のお昼は何を食べたの?」

「近くの和食の店で海鮮丼食べたんだけどね、美味しかったの。すっごく美味しかったんだけどね値段が美味しくなかったんだよね。

2000円だよ、2000円!予定変更がなければ本番の日まで会わないからさ、あれなんだけど」

ゆいは丼に何が乗っていたのか思い出しながら教えた。

「へぇ。それで2000円ってこと?そうだね、東京なら普通ってこと?いったいいくら給料をもらえば都内に住めるのかな。そんな気ないけど」

多分、小百合が想像している金額よりもっと高いはず。23区内に住むことは多少の夢があるが、ここは横浜。横浜もなかなかリッチな場所だ。横浜に住みたいと思ってる人もいるだろう。高望みは止めよう。

 

「美味しかった♪ごちそうさま」

「ここ私がするから、小百合は寝るなり課題するなりどうぞ」

「やるからさ、その前にまだ残ってたアレ。先生にもらったカットロールケーキ。食べてから」

小百合は、ゆいが洗い物をしている間に、冷蔵庫からケーキを出してはコーヒーを淹れるタイミングを待っていた。手を付けたい課題も今日中に終わりそうだ。食べてからでも遅くはない。

 

「あっ、たまには紅茶でもいいね。ゆい、紅茶でもいい?」

「うん、そうだね」

今日の小百合は怠くないのか言葉数が多い。怠さを紛らわすためではなさそうだ。ゆいは内心ホッとするが、それでも心配は消えない。

「ふ~終わった。ありがと」

食べながら話すことはお互いあるが、やっぱり先にどうぞと言って譲り合う。

あまりにも小百合が言うので、ゆいは『わたせ』さんの話をした。

話を聞いた小百合は『何で?』『マジで?』『ヤだ』の繰り返し。ゆい以上に疑問を持っていた。

「何で後から入った人にそんなこと言われなきゃいけないの?ゆいの意見が通ったからいいけどさ。んじゃ、その人が関わった写真集はみんな裸のお尻とか載ってるってこと?」

小百合のご指摘通りかもしれないが、とてもじゃないが確認する気にはなれなかった。

「裸にシャワーってのは見た。色気を撮るって私には無理」

「少しもないの?何事も経験とは言うけどさ」

小百合が懸念しているのは、言われるようなエロチックな撮影をしたことがきっかけで何度か会うようになり、お互いの心が接近し・・・みたいなことだ。

撮影の度に小百合が監視するなんてことは出来ないし、したくない。

でも、ゆいと卓人は年が近い。口に出さずとも、気が合うことはあるはずだ。

そんなことを一瞬思った小百合は、そんな経験は要らない!と吠えた。

「どしたの?いきなり。うん、要らないね。今回は私が決めることだし。あの子もしたくないって言ってるから。小百合、先にシャワーしてきて」

 

ゆいに言われた小百合は半分納得してないような返事で立ち上がりシャワーを浴びに行った。そしてトイレに入って思う。いつまでたってもゆいの仕事を理解していない。いいものを撮りたいっていう思いだけで頑張ってるのに、何で応援できないんだろう。

「撮影のこと話してくれたのに。一番分かってるのは私なのに。情けない私」

そう思ったら段々泣けてきては泣き声をゆいに聞かれてしまう。