一度買った本をあまり何度も読み返すことがない習性がある。
だから、久しぶりに本棚にある本を手にして読みだすと、
意外とその世界に入り込んでしまう。
先日、若い友人と話ししていたら、こんな質問があった。
「どんな人が好きでした?」
とっさに白洲次郎と伊丹十三と答えた。
本当は好きな人は一杯いるのだがその前後の会話からこうなった次第である。
勿論、お二方とも全然接点のない方であると思う。
感覚として片や硬派、片や軟派(適切な表現ではないが、対立軸として)である。
白洲さんは作家でないから、他の人が伝記など書いてそれを頭の中で組み立てて
人物像を作り上げているので実際とはかなり違っている印象かもしれない。
一方、伊丹さんは晩年には映画の監督などをしていたりテレビにも出たりして
存じ上げている。
その伊丹さんが若いころに書いた随筆は実に面白い。
冒頭に描いた文章は伊丹さんの初期のころの本だと思う。
「女たちよ!」
表題は女性に向かってのようだが、内容は男たちに向かっての
生き方、価値観はこういう風に持ちなさいといったものだった。
何十年も前のものだが今読んでもそのウイット、センスの良さ
は素敵である。
随筆であり文学作品ではないが、こういった本のほうが何度か読み直してしまう。
こういった男になりたいなと感じていたことを思い出した。
そして、若いころの自分の価値観の固まらない時期を思い出し
時間のたったことを悟るのである。