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凪の白花<小説>

静かに気まぐれに48の子たちの小説を書いていきます
(ここに書かれている物語等は全てフィクションです。実際の団体・個人等には一切関係ありません)





今現在の特殊な現象はが起きるにはいくつかの条件がある



一つ、私と二人っきりであること

一つ、私の機嫌が悪くないこと

一つ、次の日に大事な仕事があること






ここは都内の某ホテル東京での仕事を終えた私と珠理奈はこのホテルで
泊まり明日は大きな会場でのコンサートに臨む予定でいた
普通なら本番を前にして練習なり早く寝るなりを心がけるところなのだが
私は今ベッドの上で珠理奈に後ろから抱き着かれて身動きが取れなくなっている
そこで仕方なく明日の意気込みをブログに書きなぐっていたのだが…








「珠理奈…まだ?」




「………」






そろそろいいかと思い声をかけて見たけど返事が一切ない
普段なら絶対に許さないであろうこの行為を何故私が今夜許しているか
その理由は限界が来ているから…
私にではなく珠理奈に…
いつも玲奈ちゃん!と名前を呼びしつこいくらいにすり寄ってくる彼女は今日いない
私に返事を返す気力もない位に珠理奈は力尽きていた
一言で表すならまさに『電池切れ』








雑誌の取材、テレビの出演、レッスンの振り入れ、ラジオ、公演、休む間もなく働く珠理奈
それをこなしているのは私もだし珠理奈だけじゃないけど
珠理奈は適度にという言葉をしらない
何にでも全力で取り組む彼女は受けれる仕事はなんでも受ける
だから本人は自分のキャパを知らずに容易に限界を超えてしまう
朝早くから夜遅くまで続いた仕事のあと明日のコンサートの動きをギリギリで頭に叩き込んだ彼女はみんなの前では平気なふりを
していたが部屋に戻って二人になった瞬間明日のプレッシャーもあって
完全にショートしてしまった…そして今に至る










「………」








一言さえ発しない…
こういうことは年に何回か発生する…
そのたびに彼女は私にくっついて離れようとはしない
彼女曰く私でエネルギーを補給しているらしい…
吸い取られる側はたまったものじゃないのだけれど



私は珠理奈と向かい合う形になるように体を動かし
倒れこんでくる珠理奈の頭を肩で受け止める
表情は髪に隠れてしまって見えないけどきっと無表情だと思う
今はアイドルの松井珠理奈からただの松井珠理奈に戻っている
いくら大人びていると言ってもやはりまだ子どもなのだ
なのに彼女がその肩に背負っているのはその背中には重すぎるものばかり
そんな珠理奈の髪を梳くように頭を撫でる
彼女がこの姿を私にしか見せないということに少し優越感をおぼえつつ
この時だけ私は珠理奈を最大限に甘やかす
いつも突っぱねている分こういうときだけ特別に










「それ…きもちいい…」










ポツリ…と珠理奈は口を開いた
あ…回復してきたなぁ…と思いつつ返事はせずにそのまま頭を撫で続ける
んー…と声を出し珠理奈は玲奈の傍へと倒れこみ玲奈の足の上に頭を落ち着けた









「もうそろそろ大丈夫でしょ?」







そういって玲奈は珠理奈の顔を隠している前髪をそっと横に避けた
まだ弱弱しくはあったが珠理奈の顔には表情が戻ってきていた
今までのことが少し恥ずかしいのか玲奈のおなかに顔をうずめながら言う








「ありがとう…もう大分大丈夫…」





「本当に毎回懲りないんだから…あんまり心配させないでよ」









ごめん…と珠理奈はぼそっとつぶやいた
悪いのは自分だ…いつもいつも限界を簡単に超えて迷惑をかける
でもいつもはツンツンしている玲奈がこの時だけは優しくなるので
珠理奈はこの時間を気に入っていた
優しく自分を撫でる指もいつもより柔らかい声色もいまはとても心地よく感じる









「いつもツンツンな玲奈ちゃんが今日はデレ玲奈ちゃんだね」







なんて冗談でいうと本気で玲奈の足から落とされそうになって
2秒も待たず嘘ですごめんなさいと瞬間的に本気で謝った
次言ったら本気で落とすから…と本気の目で言われ珠理奈は今の自分の出せるすべての
力を振り絞って首を縦に振った










「でも…本当にありがとう…玲奈ちゃん大好き…」









玲奈に顔を合わせるように仰向けに寝転がると
玲奈は恥ずかしいのか顔をそむけて珠理奈を見ようとはしないが
横から見える耳はほんのり赤く染まっていて珠理奈はこっそりと笑みをこぼした









「玲奈ちゃんっていつもこういう時はすごい優しくしてくれるよね!いつもは全然許してくれないのに…どうしてこういうときだけゆるしてくれるの?」








その言葉を聞いた瞬間玲奈は目を見開いて珠理奈を見た
その顔は明らかににやにやしており、明らかに理由なんてわかっているのに
いかにも分かりませんといった顔で玲奈に詰め寄る
甘やかすとすぐ調子に乗るこの子供に怒りを覚えながらも
いつもは恥ずかしさが勝り言ってあげられないこの言葉もきっと今なら…と
聞こえるか聞こえないかギリギリの小さな声でそっとつぶやいた




















『好きだからよ…この世界のだれよりも…』






















この時の驚きや嬉しさ、恥ずかしさで顔を赤くして『私も大好き!』とはにかんだ
アイドルではなくただの松井珠理奈の笑顔を私はきっと一生忘れない