月の光の照らされたその城は光を反射して白く輝いていて
けれど同じくらい寂しそうで私は足を止めずにはいられなかった
私はきっとあなたに引き寄せられた
「うーん…次は南に向かおうかな?もうすぐ冬になるしね」
私は当てもなく旅をして世界中を回る旅商人
どこへ行こうと何をしようと自由…だって決めるのは全部自分だから
最初は世界を見てみたい。みたいな、そんな綺麗な理由だったような気がするけど
もう忘れた、長い時間をかけて旅をして…いろんな物を見ているうちに
すべてがどうでもよくなってしまった。
そこまで考えてザッ…と土を踏みしめていた足をふと…止めた
「んあ?こんな所に城なんてあったっけ?てか…ここどこ?」
考え事をしているうちにどこかに迷いこんだみたいだった
鞄から地図を取り出して確認してみるが次の村に着くまでにこんな場所は記されていない
この地図偽物か?とこれを売りつけてきた商人を恨むがそんなことを考えている場合ではない
「ていうか…暗い…なんで?さっきまでまだ日が出てたのに」
周りを見渡すと先ほどまで出ていた日はまるで元から存在しないかのように真っ暗で
唯一…白い月明りだけが足元を照らしていた
まだ冬には程遠いにも関わらず頬をなでる風はひんやりと冷たく
よく耳を澄ませば時々遠くから獣の唸り声が聞こえてくる
「なんかやばいところに迷い込んだみたいだね…これは…」
はあ…とため息をつきながら目の前にそびえたつ城に目を向ける
だいぶ古びてはいるが月明りを受けて淡く光り、堂々とそびえるその姿に
「きれいだ」
とポツリと言葉ば漏れた
まだ自分にきれいだなんて思える感情が残っていたのかと
半ば苦笑いを浮かべて城に向き合う
「とりあえず…行ってみますか」
普段なら余計な寄り道などしないのだが
なぜかあの城に行かなければという衝動に駆られて足を進めた
地図にない城…日のない空間…未知の世界
久しぶりに感じる好奇心を胸に城へ駆け出した
ガタン…ギィィィィ…
「し、失礼しまーす…」
まさか扉がこんな簡単に開くとは思っていなかった
と驚きつつおっかなびっくりで先へ進んでいく
外見とは違い中は思っていたよりもきれいだった
洋風の家具がおしゃれに飾られていて
上を見ればシャンデリアが目につき、左右にはタンスや絵が置かれている
廃墟であってもいかに元がきれいであったかを理解できた
「にしても…だれもいないのかな?」
少なくとも人の気配はしない
明かりはまったく付いておらず窓から入る月明りだけが
部屋の中を照らしていた
ここまで暗くて物音がしないと逆に不安になるんだけど…
結構私ビビりな方だけどここまで静かなのも逆に怖い…
こんなに廃墟なんだからもっとこう…ガタンとk「ガシャン!!!」
「ひゃぁぁぁぁぁ!!!!!」
すごい音がして慌てて振り返るとそこには
割れた花瓶と真っ黒な猫がこちらをじ…っとみていた
「ね…猫?はあ…もう…マジでびっくりした。あんまり脅かさないでよ…いくら私が願ったからって?」
そこまで言いかけると黒猫はまるで私の言葉が分かっているみたいに
盛大にあきれ顔でこちらを見つめてから私の横を通りすぎて
私についてこいとでも言うように顎をくい…と動かした
「ん?付いてこいってこと?猫のくせになんか生意気なんですけど…」
私がそういっても猫は我関せずといった様子ですたすたと歩いていく
ここが何処なのかもわからない私はついていくしかない
本当になんでこんなところに来たんだろ…と思いながら
もう見えなくなりそうな黒猫を急いで追いかけた