黒猫に道案内されてたどり着いたのは
城の一番上の大きな扉の前
細かく装飾がされており色あせても綺麗なままだった
「ねえ…私をここに連れてきてどうするの?って…あれ?」
ここまで連れてこられてどうしたらいいか分からず
当の本人に話を聞こうと思ったがさっきまで横にいたはずのその子は
煙のようにいなくなってしまっていた
「え…ここまで連れてきておいてなんて無責任な…」
しばらく唖然としていたがそうしていても何も始まらない
開けてみるしかないよね
ゴゴゴ…
部屋に入った瞬間…私は息をのんだ
部屋の一番奥にある玉座に座る人があまりにも綺麗だったから
ゴスロリのような赤と白のドレスに真っ白な肌…
閉じた瞼そして長いまつ毛…まるで人間じゃないみたい
「どちらかというと彫刻って言われたほうが納得できるかも…」
ぼそ…ッと独り言が出るくらいには驚いていた
「にゃー」
突然聞こえたその声に横を見ると
先ほどいなくなったと思っていた黒猫が当たり前のようにいて
玉座の人に向かって鳴いたあとまた煙のように消えてしまった
「ん……」
一つのうめき声と共に彼女の瞼がゆっくりと開き
薄い琥珀色の瞳が珠理奈を射抜いた
先ほどまで彫刻のようだった彼女にかすかに命が宿ったようで胸が高鳴った
「……だれ?」
「あ…私はただの旅商人だよ」
「ただの旅商人ならここには入れないわ」
「嘘じゃないよ!気づいたらこのお城の前に来てたんだから」
やれやれと思いながら肩に背負っていた荷物を下ろす
彼女の言葉はなんの抑揚もなく、私を見つけてからも
死んだ魚のような濁った眼をしていた
「もしかして…あなた、狩り人?」
「?…狩り人?何それ?」
「だったらその銃は?」
彼女は珠理奈の荷物から少し顔をのぞかせている
銀色の銃を指さして言った
「ああ…この銃?裏の闇市で買ったんだ。その道の奴らには高く売れるからって言って買わされたんだけど、本当かどうか…」
珠理奈は銃を取り出して体の前でぶらぶらと振った
確かに銀色の銃は珍しいが、反動も強くて打ちにくい上に
本体がかなり重く素人には扱えない。
それゆえこの銃はもう何年も珠理奈の元に居座っている
「そう…あなたが狩り人だったらよかったのに…」
「さっきから何のことだか分からないけど、私はただの旅商人だから…残念ながらね。でもまあ、勝手にここまで入ってきちゃったのは事実だから、何かお詫びをするよ」
何かしてほしいことがあれば言ってみて、大体何でもできるから…というと
彼女は下を向いて黙り込んだ
普段はこんなことに首を突っ込むタチではないけれど
彼女の目が、あまりにも自分が見知っているもので、
気づいたらお詫びなんて言葉を口走った自分に内心驚いていた。
「そう……ならいっそ…あなたでもいいわ」
黙り込んでいた彼女からポツリと言葉がこぼれた
よく耳を澄ませないと聞こえないような小さな声
「その銃を頂戴…そして…それで私を殺して」
彼女は珠理奈の手にある銃を指さし、全く光の無い目で珠理奈を射抜いた