植物が二酸化炭素を吸収し、酸素を排出するのは、「光合成」が行われるときであり、
その点だけをとらえて、植物は酸素の生産者だとする考えが常識化している。
小学校・中学校の理科で1度は習うことだが、夜間では植物は「空気中の酸素を消費している」のだ。
では、昼夜通じて酸素を生産していると言えるのか。
これについては、川田薫氏が、多種の植物を閉鎖系で栽培し、結論を出している。
結局、酸素の増加はなかったとのこと。
また、植物の一生について思考してみても、同様の結論が見えてくる。
植物が取り込んだ二酸化炭素は、どこへ行くのか。
それは、葉、枝、幹、果実、花などの材料である炭水化物をつくるのに使われる。
植物が成長している過程では、重量増加に対応する二酸化炭素が取り込まれ、光合成による
還元反応で、酸素が排出される。「炭素」は、植物の構成材料として固定化される。
光合成による炭素固定反応は、以下の式で表される。
nCO2+ nH2O → (CH2O)n+ nO2
その後、成長しない時期が続き、その期間は、平均すると日中排出される酸素と夜間消費される酸素は
川田氏が実験したように、等しい量になる。
そして、いつかは寿命を迎えることになり、枯れて、分解がはじまる。これにより炭素は大別して「大気中への放出」と、「次世代の栄養」のルートを経る。
●大気中への放出
分解過程で、以下の「酸化反応」が起こるため、大気中の酸素を「大量に消費」し、二酸化炭素を放出してしまう。
(CH2O)n+ nO2 → nCO2+ nH2O
●次世代の栄養
落ち葉からできた腐葉土は、炭素をかかえこんだまま堆積していくが、次世代の植物の養分として根から吸収されるため、土中の炭素は一定量のバランスが保たれる。
結局、植物の一生の活動は、大気中の酸素を増やしも減らしもしないし、二酸化炭素の量も同様であることが見えてきた。