歴史小説・鎖読(くさりよみ) -2ページ目

「流星 お市の方」:永井 路子

織田信長の妹として生まれ、

数奇な運命をたどったお市の方の人生を描いた長編です。


永井 路子
流星―お市の方 (上)

お市の方というと、

・絶世の美女であったこと

・浅井長政の反抗を兄信長に知らせたこと

・柴田勝家の妻として亡くなったこと

などがよく語られます。


この小説では、

兄の鋭すぎる時代感覚を理解できる肉親として描かれ、

単なる戦国に翻弄された美女、

というイメージを脱した面白さが特徴になっていると思います。


長政との間に5人の子を授かり、

長女:お茶々、後の秀吉側室淀君、大阪夏の陣で自害

次女:お初、京極高次の妻、常高院

三女:お江(ごう)、2台将軍徳川秀忠の妻

の3人の娘が特に有名です。


長女と三女が戦国時代の最終局面で、

豊臣と徳川の2大勢力に別れ争ったことは、

母お市の方の数奇な運命をさらに際立たせる結果になったとも言えます。


もしあの時浅井長政が信長に背かなかったら、

お市の方が勝家ではなく秀吉の妻になっていたら、

歴史は大きく変わっていたに違いありません。

37年という短い生涯の中で、

ある意味では戦国のすべてを見た女性だったという気がします。

「豪傑組―歴史小説傑作集3」:海音寺 潮五郎

おなじみ海音寺氏の短編集その3(最終巻)です。


九州柳川藩の武士を描いた表題作、

越前松平家のお家騒動を描いた「越前騒動」「忠直卿行状記」、

さらに一色満信が細川藤孝・忠興親子に殺されたという解釈で描かれた「一色崩れ」など、

九編が収められています。


つい最近「細川忠興」を読んだばかりで印象が強いせいか、

やはり「一色崩れ」が面白かったように思います。

細川親子が本能寺の変の後、

娘婿・妹婿である満信を切ったという話は新しく、

その後の細川家の隆盛を考えるとさもありなんという気にさせます。


海音寺 潮五郎
豪傑組

「かぶき大名―歴史小説傑作集2」:海音寺 潮五郎

表題作「かぶき大名」は、

徳川家を出奔しその後帰参した水野藤十郎勝成の一生を描いています。
歌舞伎の「吉原御免状」の主人公水野十郎左衛門は、

勝成の孫に当たる人です。

他に「日もすがら大名」「乞食大名」「阿呆豪傑」「戦国兄弟」など、

戦国の気風と武士の心意気を余すところなく伝えた小品が多いと思います。


徳川、豊臣、織田、伊達、島津などをはじめ、

名だたる戦国大名の伝記は多く書かれていますが、

歴史の表舞台にあまり出てこない人物を描くには、

短編の方がぐっとのめり込みやすい気がしています。


海音寺 潮五郎
かぶき大名―歴史小説傑作集〈2〉

「剣と笛―歴史小説傑作集」:海音寺 潮五郎

表題作「剣と笛」のほか、

前田利長と家臣を描いた「大聖寺伽羅」、

「南部十左衛門」「立花宗茂」など全九編を収めた短編集です。


少し前に読んだので忘れてしまった部分もありますが、
戦国時代を扱った短編はあまり読んだことがなかったので、

とても新鮮で楽しみました。

このあと「かぶき大名」「豪傑組」という歴史小説傑作集の続編があり、

それぞれすぐに読んだ記憶があります。

⇒bk1の書評

http://www.bk1.co.jp/product/2116928


海音寺 潮五郎
剣と笛―歴史小説傑作集

「戦国風流武士 前田慶次郎」:海音寺 潮五郎

戦国時代いちの傾き者(かぶきもの)として有名な

前田慶次郎利太(とします)。

五大老筆頭まで進んだ前田利家の甥として生まれながら、

上杉景勝に仕えるなど、

その自由奔放な生き様で世の人を魅了する稀代の風流人です。


※「花の慶次」というマンガでも有名ですね。


小説はその慶次郎の人生を、

秀吉の小田原攻めから関が原の後まで描いています。

名古屋山三や石川五右衛門など、

歴史の傍流とも言える人物たちとの交流や、

風流人慶次郎ならではの言動が印象に残る作品です。


海音寺 潮五郎
戦国風流武士 前田慶次郎

「天と地と」:海音寺 潮五郎

上杉謙信の前半生を描き、
角川映画にもなった海音寺氏の代表作です。

終生のライバルとなった武田信玄、
同時代の織田信長、徳川家康、長宗我部元親、
少し後輩の伊達政宗などにも言えることですが、
彼も自らの領国を統一するのにかなりの期間と労力をかけています。

応仁の乱から150年経ってようやく終わった戦国時代。

この時代に生まれ、

戦国の収束のため間接的に貢献した16世紀の偉人伝です。


角川映画の方はまだ見たことがないので、

ぜひDVDを借りて見たいです。


海音寺潮五郎
天と地と 上

「細川忠興」:浜野 卓也

細川幽斎の嫡男、細川ガラシャの夫、細川元首相の先祖として有名な、

細川忠興の人生を描いた長編です。


茶人、愛妻家、堅実な武略、長命などが好意的に描かれるなか、

日和見主義者と批判されることもある人物です。

信長、秀吉、家康と天下人3人にそれぞれ重用され、

最後は肥後54万石の大名になったからでしょう。


しかし実際はこの本の副題にもあるとおり、

本能寺の変や関が原の戦いなどの前後で、

常にギリギリの選択を迫られ、

しかも結果的に正しい方を選んできた強運の人でもあります。


特にガラシャ(玉子)夫人は明智光秀の長女で、

父幽斎(藤孝)も光秀と非常に仲の良い同僚だったため、

信長の死後に光秀につかなかったのは困難な選択だったはずです。

私情をぐっとこらえて本流を見極めるところは、

いちばん印象的でした。


妻が三浦綾子氏の「細川ガラシャ夫人」を持っているので、

次は借りて読みたいと思います。


※「江戸の宮廷政治」面白そうですね。


浜野 卓也
細川忠興―ギリギリの決断を重ねた戦国武将

「海王伝」:白石 一郎

笛太郎が主人公の海洋小説「海狼伝」の続編です。

続編の存在を知らずに前作を読み終わり、

「あー、続きが知りたい」と思っただけに、

これを見つけたときはすごく嬉しかったです。


感想としては前作の方がわくわくしましたが、
納得のいく物語の進め方、結び方だったと思います。

白石 一郎
海王伝

「海狼伝」:白石 一郎

1987年の第97回 直木賞を受賞した作品です。
村上水軍に捕らわれ、「海のウルフ」に成長していく笛太郎が主人公で、
時代設定は史実に忠実ながら、
物語はダイナミックな創作を用いた傑作海洋歴史小説になっています。

⇒白石一郎 - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%99%BD%E7%9F%B3%E4%B8%80%E9%83%8E

続編の「海王伝」と一緒に、

一気に読みきってしまいました。


白石 一郎
海狼伝
白石 一郎
海狼伝

「海のサムライたち」:白石 一郎

海洋小説の第一人者である白石氏が、

海にまつわる偉人たちを描いた11の短編集。

藤原純友、村上武吉、九鬼嘉隆、小西行長、三浦按針、

山田長政、荒木宗太郎、鄭成功などが主人公です。


村上、九鬼、三浦などの短編は、

それぞれ別に長編小説も描いている白石氏。

2001年にNHK教育で放送した「人間講座」を元に加筆したとのことで、

比較的最近の作品です。


私は定期的に海を見ないと気持ちを解放できないような気がして、

今年とうとう海の見えるマンションに引っ越してきました。

海が好きで「風通しの悪い土地では住めない体質」

と評された白石氏の感覚に、

すごく共感できます。


白石 一郎
海のサムライたち