「突然ですが、明日結婚します」第5話雑感 | 感想亭備忘録

感想亭備忘録

ドラマ、映画、小説について感想、解説、批評など。
願わくばたくさんの面白いコンテンツに出会えますように。

月9最低視聴率を更新したそうですね。そこまでダメダメなお話でもないと思うのですが、まあつまらないと言ってしまえばつまらないです。その上最近フジテレビはヘイト溜めてますからより一層見てくれないんでしょうね。困難な状況の中、ここまで平凡なドラマをぶつけたのがフジテレビの失敗かなと思います。

 

僕はエンタテインメントの物語には絶対に魅力的な対立構造、もしくは葛藤が必要だと思っています。対立や葛藤の解消、もしくは解消しようとする姿にカタルシスを感じる。これが基本構造だと思います。当たり前といえば当たり前なんですが。

 

たとえば、昨年末話題になった「逃げ恥」ですが、あれには人物や組織としての目立った対立構造はありません。ですがあれは、主役二人の心の中に強烈な対立構造があるんだと思います。

平匡(星野源)には「誰かに愛されたい、誰かを愛したい自分」VS「誰かを愛して拒絶されることを恐れ、他者を拒絶する自分」という対立があり、みくり(新垣結衣)には「誰かに必要とされたい自分」VS「必要とされるために頑張ることで『小賢しい』と嫌われてしまう自分」という対立があります。心にそういう対立を抱えた者同士が惹かれ合うことで生まれる葛藤が物語を魅力的にしていたのだと思うのです。

 

翻って「突然ですが、明日結婚します」の対立構造は、あまりにも安っぽいんです。山崎育三郎と高岡早紀の演じるライバルが「恋敵」のテンプレートそのままというか。「あなたとは付き合いません」と完全に拒絶された女の実家に乗り込んで晩飯を食らい、あまつさえ遅れて訪れた彼氏に喧嘩を売る頭のおかしい男。愛した旦那に裏切られ傷ついてるかのように振る舞いながら若い男に粉をかけ、しかも人の電話に勝手に出て話す非常識なおばさん。

主人公の対立項としてはあまりにも安い。

 

せっかく「結婚」を絶対のものとみなし、家庭を築くことに強い執着を持つ女性と「結婚」に絶望し家庭に全く価値を感じない男、という面白い組み合わせなんだから、その内面の葛藤をもっと押し出してくればよかったんじゃないかと思います。

 

あすか(西内まりや)でいえば、結婚と家庭という譲れない価値観が名波と出会うことで、愛する人とともに過ごすことができれば形に拘らないでもいいのかも、と揺れる葛藤を。

名波でいえば、結婚や家庭は忌避の対象だったにもかかわらずあすかとの出会いで、変わっていこうとするが変わりきれないという葛藤を。

 

どちらも今も薄っすらとは描いているんですが弱いんです。お互いの価値観の動機づけがふんわりしすぎてて希薄で「なんとなく結婚したい女」と「なんとなく結婚したくない男」にしかなっていないのが問題なんだと思います。

あすかにはもっと「家族の支えがなければ致命的な事態が起こってしまったかもしれない」というような過去を。名波には「無理矢理作られた家庭でつらい体験をし続けざるをえなかった」過去を。映像として見せてほしいんです。そうすることで、初めて自分たちの信念、価値観へのこだわり、執着の強さ、そしてそれらをすら揺るがそうとする恋愛感情の強さが表現できるんじゃないでしょうか。

山崎育三郎や高岡早紀はその状況を補強するスパイスぐらいでいいと思います。一方は用意された甘い逃亡先として、一方は結婚や家庭の無残さ、無力さの象徴として、時折主人公二人の心を揺さぶるぐらいで充分だったと思います。

 

フジテレビにはもっと冒険してほしいなあと思います。近年でもリーガルハイのような何もかもギリギリセーフ?いやアウト?ぐらいのリスキーなドラマを作って見せたんですから。爆死で当たり前、ぐらいに開き直って思い切ったドラマを作って欲しいです。