森のドアラの読書事情

森のドアラの読書事情

新書を中心に、本の感想・書評を書いていきます。
2022年からは毎月1日更新予定。

 

本書は、学校現場で深刻化する教員不足の実態と、その構造的要因を多角的に明らかにしている。教員不足は2010年代後半から顕在化していたが、文科省の本格調査は2021年にようやく行われ、しかも「配当定数」を基準とするため、実態を十分に捉えることができていない。

教員定数は生徒数ではなく学級数を基準に決められており、学級が増えなければ業務量が増えても教員が増えない仕組みになっている。加配定数は単年度・目的別の運用になっているため、非正規依存を強め、自治体の裁量や人件費抑制、内部留保によって、名目上は定数を満たしていても学校現場では不足が生じる構造がある。

X県(おそらく神奈川県)の調査では、正規教員自体が大幅に不足し、その穴を臨任や非常勤で埋め、それでも足りない分を管理職や過重負担で補っている実態が明らかになる。特別支援学校や実技教科で不足は深刻で、雇用形態は極めて複雑かつ不安定である。少子化を見据えた採用抑制、特別支援学級増、自己都合退職や病休・産育休の増加が正規不足を加速させている。

著者は、行財政改革と教育改革が教員不足を生んだと論じている。学級規模縮小の停止、非正規化、免許更新制導入、業務量増大と長時間労働、給特法による残業代不支給が志望者減少を招いた。そして、教員不足は自治体の非正規依存と国の制度改革の帰結であり、公立学校を社会のライフラインとして、労働環境改善と長期的な定数政策が不可欠だと結論づけている。

 

☆☆☆☆

 

 

 

 

『天皇と日本の近代』の下巻で「「教育勅語」の思想」という副題が付されている。本巻では、明治憲法をデザインした井上毅がどういう意図で教育勅語を作成して、それがどういう結果になったのか、その乖離が描かれる。井上は立憲主義に基づいて、特定の宗教や国体論から離れた道徳の確立を目指した 。しかし山県有朋によって、軍人勅諭と同じく儀礼的な公布形式になってしまったという。全体を通して井上毅を思想家として捉え、教育勅語を読み解こうとしている。

 

☆☆☆

 

 

上巻には「憲法と現人神」という副題が付され、近代天皇の二面性が論じられる。著者は天皇を「政治権力の主体(タマ)」と「神聖祭祀王(ギョク)」の二面性で捉え直す 。明治憲法において天皇は立憲君主を装いつつ、実際には法の外部に位置する「現人神」とされ、国家の根拠そのものとなる矛盾を孕んでいたとする。これにより大日本帝国は、天皇を祀り主とする宗教国家となったと論じる 。

 

☆☆☆

 

 

著名な実践家による、いじめ対策本。いじめは差別であり、絶対許さないという姿勢が見て取れる。かなり古い本であるが、現在でも通用する姿勢である。実践家だけあって、実際の教師目線から論じられている。ただ、いじめそのものよりもその周辺まで広く論じられている。

 

☆☆☆

 

 

 

南米最大の産油国で、経済的に豊かなはずのベネズエラ。ロシアがウクライナ侵攻をしたときにベネズエラのことをちょっと耳にしたので読んでみた。チャベス、マドゥロ政権の下で、経済が衰退していった過程を丁寧に描いている。チャベス・マドゥロ政権は貧困層の支持を得るが、権威主義になれば政治不正は起こるし、経済政策を誤れば経済は破綻する。特に経済については、やってはいけないことをすべてやってしまったという感じ。

 

☆☆☆

 

 

著者は憲法学の第一人者らしく、集団的自衛権が問題になっていた2018年の出版。政治的な本は著者と意見が違うと低評価になる傾向があるものだが、ちゃんと議論の筋を勉強したいと思った。とは言え、私と著者の意見の違いは「小さいながらあるかな」くらいだと思っていた。

 

しかし、読んでがっかりした。安全保障問題に関する意見の違い以前の問題だ。どんな本でも最後まで読むようにしているが、第2章で断念。語り下ろしとのことだが、それにしてもひどい。

 

著者は、憲法については専門の憲法学者が決めるべきだと言う。もちろん、専門家の見解は大事だ。しかし、刑法や民法やその他の法律とは違って、憲法は国民が読んで分かるものじゃないといけないんじゃないのか。実際、憲法は中学校の公民で学習する内容だ。著者の考えに従うと、政治のことは政治学者に任せるべきだということになるが、それでいいのか。

 

著者は、憲法改正に反対という立場で、自衛隊を合憲としつつ、立憲主義を強調している。これはこれでいいのだが、憲法改正について国民が考えること自体が異常だというのは異常だろう。ここまで露骨なエリート主義を公言して、誰も止めないのかな。

『憲法と平和を問い直す』(ちくま新書)を読んだときもちょっと気になってたが、この人の本は読まないことにしたほうがいいようだ。

 

☆なし

 

 

 

 

『旧約聖書』から「創世記」・「出エジプト記」・「申命記」の三書を、『新約聖書』から「マルコによる福音書」・「ローマ人への手紙」・「ヨハネの黙示録」の三書を選び出し、解説している。まあ、分かりやすい。「ヨハネの黙示録」はまったく知らなかったので、勉強になった。

 

☆☆☆

 

 

著者はYouTubeで統計に関する動画を出している人。わりと面白いのでたまに観ているが、書籍も出しているということで読んでみた。本書もYouTubeも、この人の戦略を創造しながら読む(観る)と面白い。本書では、身近な例を使って統計に興味を持ってもらおうという意図がある。その辺はタイトルにも表れているが、内容は分かりやすいし、まあいいかなと思う。

 

☆☆☆

 

 

 

寛容・不寛容について関心があったので読んでみた。本書では主にネット炎上における「極端な人」の正体を考察している。経済学者らしく、さまざまなデータを基に分析していて、説得力はあると思えた。

 

☆☆☆