長谷部恭男『憲法の良識』朝日新書 | 森のドアラの読書事情

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著者は憲法学の第一人者らしく、集団的自衛権が問題になっていた2018年の出版。政治的な本は著者と意見が違うと低評価になる傾向があるものだが、ちゃんと議論の筋を勉強したいと思った。とは言え、私と著者の意見の違いは「小さいながらあるかな」くらいだと思っていた。

 

しかし、読んでがっかりした。安全保障問題に関する意見の違い以前の問題だ。どんな本でも最後まで読むようにしているが、第2章で断念。語り下ろしとのことだが、それにしてもひどい。

 

著者は、憲法については専門の憲法学者が決めるべきだと言う。もちろん、専門家の見解は大事だ。しかし、刑法や民法やその他の法律とは違って、憲法は国民が読んで分かるものじゃないといけないんじゃないのか。実際、憲法は中学校の公民で学習する内容だ。著者の考えに従うと、政治のことは政治学者に任せるべきだということになるが、それでいいのか。

 

著者は、憲法改正に反対という立場で、自衛隊を合憲としつつ、立憲主義を強調している。これはこれでいいのだが、憲法改正について国民が考えること自体が異常だというのは異常だろう。ここまで露骨なエリート主義を公言して、誰も止めないのかな。

『憲法と平和を問い直す』(ちくま新書)を読んだときもちょっと気になってたが、この人の本は読まないことにしたほうがいいようだ。

 

☆なし