読了。
3月に読んだ「日台万華鏡 ー台湾と日本のあいだで考えた―」の著者、栖来ひかり氏による翻訳の本書、タイトルにある「陳澄波」は1895年生まれの台湾美術界の活性化に尽力した画家である。
陳澄波を探して (著)柯 宗明 (訳)栖来ひかり
今から40年前、1984年の台北から物語は始まる。
アメリカ留学経験のある若い画家・阿政に作者不明の絵画の修復が依頼される。
修復をするために、阿政は絵画の作者について、恋人である新聞記者の方燕と調査に乗り出す。
調査により、陳澄波という画家の存在が浮かび上がるが、詳しい事実についてはなかなか明らかにならない。伝手をたどって、様々な人を訪ねていくと、陳澄波についてのみならず、若い阿政、方燕が知らなかった台湾の当時の情勢などが語られる。
画家・劉新禄に話を聞きに行った際、新聞記者である方燕が「魯迅」を知らなかったというシーンがある。
阿政が「魯迅と魯迅の本は、台湾ではタブーだよ」と方燕に耳打ちする。
え、どうして?・・・・よく考えると舞台は1984年。
台湾では1987年7月まで戒厳令が敷かれており、様々な情報統制がなされていたのだ。
台湾の戒厳令については知ってはいたものの、当時、魯迅がタブーだったとは。
私の中学生時代、国語の教科書に「故郷」が掲載されていた。
日本では魯迅は皆知っているだろう。
調べてみると、現在でも中学3年用の国語の教科書、各社全てに「故郷」が採用されているらしい。
又、陳澄波は東京美術学校に留学し、帝展に入選している。
その背景もあり、日本の美術事情、当時の日本での暮らしについても語られている。
登場人物たちの物語りにより、台湾の近代史についてリアルに感じられ、すっと気持ちに入ってきた。大変な時代だったのだ。
注釈も良いバランスで付けられ、読みやすかった。
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本日、吉祥寺の「GALLERY KAI ギャラリー会」に行ってきた。
web gallery&shop「色匂ふ」主催の、高橋朋子氏の「春に浮かぶ vol.2」展の初日。前回は2年前だった。
今回はお茶室での展示もあり、窓からは井の頭公園の緑が良く見え、
とっても素敵な空間に。
私が訪れたのは午後3時近く。
ちょうど、人が切れたところだったので、高橋氏自らお茶室の展示に誘導してくださり、しばしお話ができた。
最近の緑色、紫色の作品については、窯から出すまでどんな感じになっているか分からないところがあるとのこと。
確かに、展示の作品や、手持ちの類似の作品を見ても同じ表情ではない。
又、黒い作品に緑色の発色が出ている箇所があり、それが私には魅力的であるのだが、こちらも窯から出すまで分からないようなデリケートさらしい。
うーん。その唯一無二な感じが焼物の魅力なんだろうな…。
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せっかく吉祥寺に行ったので、「小ざさ」で最中を求めた。
横浜高島屋美術画廊の「高橋朋子 Moon Pavilion」展で求めた「まるまろ皿」の新タイプを使用。
左が「白あん」、右が「小豆あん」。
美味しいよね~。ペロッと2つ食べられる。