昨日、大田区立郷土博物館に行ってきた。

 

 

川瀬巴水展である!

こちらは6月に催された「プレ展示」で訪れている。

本展示とあって、「川瀬巴水」の幟が。

 

このほかにも・・・。

 

 

大田区公式PRキャラクター・はねぴょんが「入場無料」と。

 

 

良いねえ。幟。盛り上がってくる。

 

 

奥のほうに看板が見えるので行ってみると・・・、

 

 

看板に使われているのは、

馬込の月」 東京十二題 昭和5年(1930)作 版元・渡邊庄三郎

まさに本博物館の地元を描いた作品。

展示の解説パネルに「巴水の代名詞ともいえる深い青を基調とした本作品」とあった。

 

 

ずいずい入って、鑑賞。

前期は「東京の風景編」、馴染みの地名ばかりである。

 

★メモ★

 

五月雨ふる山王」 東京十二題 大正8年(1919)作 版元・渡邊庄三郎

解説パネルに、「同じ画題の作品を年代によって比較してみると色づかいやテーマ性の違いをみることができます」。

本展覧会の解説パネル、とても分かりやすい。鑑賞のポイントをさりげなく示してくれているのも良い。

 

井のかしらの残雪」 東京十二題 大正9年(1920)春 版元・渡邊庄三郎

良い。素朴な風景。

 

桔梗門」 東京十二題 昭和4年(1929)作 版元・渡邊庄三郎

角雲版」と「丸雲版」があった。

他の作品で、色の濃淡を変えての試し摺り、色を変えての試し摺りなどが展示され、面白いと思っていたが、こちらは雲の形が変えられている。

完成版を作り上げるのに、こういうのも検討するのか、と感心。

 

五月雨(荒川)」 昭和7年(1932)作 

土井貞一版」は、雨が空摺りで表現されており、戦後の「土井版画店版」は黒く細く雨が摺り混まれている。

描かれている女性の差す傘の色が土井貞一版で若草色、土井版画店版で藍色と違っていることに、帰宅後図録を見て気づいた。又、川の色もずいぶん違う。会場では雨の表現ばかりに気をとられていたようで、目に入らなかったのか。

 

品川」 東海道風景選集 昭和6年(1931)3月作 版元・渡邊庄三郎

他の美術館でも見たことがあり、とても好きなモチーフ。

 

清洲橋」 昭和6年(1931)2月作 版元・渡邊庄三郎

藍色の夜空で橋の灯りが美しい「濃摺版」、燃えるような夕焼けの試摺、「朱色摺版」。

川に浮かぶ舟で何かを燃やしているようで、小さな炎と白い煙のたなびく様子が描かれている。

舟に座っている人が両手を炎に翳している。2月の作品なので暖をとるための火?

 

佃 住吉神社」 新東京百景 昭和11年(1936)5月写 版元・渡邊庄三郎

夕方の空か。もしや朝焼けか。空の色が美しい。

 

山本海苔店といえば、海苔「梅の花」の朱色に梅の花の枝が描かれている缶が思い浮かぶ。

巴水は、昭和26年(1951)~29年に、山本海苔店から依頼されて絵はがき、肉筆画など描いている。

仮題/森ヶ崎海苔乾し」、「仮題/海苔枠乾しと富士」、「仮題/海苔乾し場と富士」の肉筆画と版画が展示されていて、海苔好きの私にとっては魅力的だった。

 

海苔を干している様子とともに、海苔の乾燥小屋が描かれている。

解説パネルによると、この乾燥小屋は、雨や曇りの日の海苔の乾燥に使われ、大森では昭和初期から建てられ始め、戦後広く普及したそうで、石炭ストーブが焚かれ、海苔の乾燥がなされていたそう。

大田区立郷土博物館には、この乾燥小屋の模型があり、内部の様子を見てみると巨大なストーブがいくつか配置されていた。ほう・・・・。

 

又、肉筆画の「仮題/山本海苔店」に描かれたお店の雰囲気が良い感じで、思わず海苔を買いに行きたくなった。

 

版画に生きる 川瀬巴水」という、巴水の版画制作過程の記録映像が放映されていた。 1956年(昭和31)撮影のもののようで、少し音声が聞きづらい。

「私が信用する彫り師・・・」と語られていたので、巴水自らナレーションか。

これは40分間の放映であったが、全て見た。

 

とても興味深い。

 

巴水の旅先?でのスケッチの様子、見物の子どもがどんどん増えていく。

スケッチ対象の民家から出てきた女性がチラッ、チラッと巴水を見て歩いて行く様子など、ほうほう、こんな雰囲気でスケッチされていたのね。

スケッチを終えて、煙草で一服、の巴水の様子も。

 

彫り師の素晴らしい手さばき。彫刻刀を研ぐシーンまで。

作業後、大きめのお湯のみで、お茶を楽しんでいる様子が良い雰囲気であった。

 

摺り師が竹の皮からバレンを作るシーンを見て、初めてバレンの作り方が分かった。

これって、作品ごとに作るとか、頻繁に作るものなのだろうか。

又、版木の調整をしている様子にビックリ。こうやって摺り上がりがズレないように調整するのか。

ナレーションで「これは難しい。ベテランで腕が良いから簡単になっている」ようなことを言っていたと思う。

こちらも刷り終わった後、版画を見つつ、一服、のシーンにほっこり。

 

と、決して広い展示室ではなかったが、盛りだくさんの内容で大変満足した。

 

 

こんなところに埴輪が。

注意してみると、植え込みにも埴輪が飾られていた。

よく考えたら、大田区は多摩川沿いに古墳があり、多摩川台公園古墳展示室(この多摩川台公園もなかなか良かったことを思い出す)もあるし、埴輪の出土も多いだろう。

「埴輪推し」なのか。

 

 

スタンプラリーも「2期(7~9月)」のスタンプも押せ、2つたまった。

その次の3期は10月からで、すでに川瀬巴水展は終わっている(9月20日まで)。

どんな企画展があるのか、歴史のある大田区ゆえ楽しみである。