大田区立郷土博物館に行ってきた。

 

 

入り口には、大田区公式PRキャラクター「はねぴょん」が。

 

 

7月17日からの特別展「川瀬巴水-版画で旅する日本の風景-」のプレ展示を鑑賞。

 

 

今回のプレ展示は、関東大震災後から昭和20年代にかけての旅によって作り出された版画30点ほど。

しかし、作品のもとになっているスケッチが一緒に展示されているため、かなり見応えがあった。

 

今回メモした版元は全て渡邊木版画店。

 

大坂 天王寺」旅みやげ第三集(昭和2年(1927)作)

はらはらと雪が降る夜の様子。背景奥に五重塔が見え、その前にいくつかの建物、門など。

画面手前中央に番傘を差した人物が描かれ、積もった雪にその人物の足跡がある。

 

解説パネルに「写生帖には番傘をさした着物姿の人物は見えません。制作の過程で巴水自身の姿を描き加えたとも考えられます」。

ふむふむ。確かに一緒に展示されていた「写生帖第18号」のスケッチには人物は描かれていない。

 

このパネルを読んでから、

展示されている写生帖のスケッチと、作品を見比べて違いを探すようになった。

 

遠州 新居町」東海道風景選集(昭和6年(1931)8月写)

※ほかの作品は「昭和○年」なのに、これだけ「」になっていた。図録も同様の表記。

 

夜の風景。川に浮かぶ舟、石垣の上に民家が数棟。

1か所だけ雨戸が開けられているところがあり、光が漏れ、人々の姿が見える。

樹木の感じ、舟、などスケッチの通りだが、人々はスケッチにはない。

この人々が描かれていることで、物語が感じられるのかも・・・。

 

松嶌 材木嶌」日本風景集 第一輯 東日本篇(昭和8年(1933)5月作)

風景はスケッチ通りだが、帆船が描き加えられている。

海面に写る帆船の様子は「見たとおり」に見えて、やっぱり凄い。

 

神戸 長田神社 八雲橋」 日本風景集 第二輯 関西篇 (昭和9年(1934)10月作)

雪の風景。番傘を差した和服の女性。赤い欄干や樹木に雪が積もっているが、写生帖44号には番傘の女性が描かれているものの、雪はない。

うーん。すると、積もった雪は「ここはこんな風に積もるだろう」という巴水の創作?

 

熱海 錦浦」(昭和15年(1940)作)

岩だらけの海岸で、釣りをしている人。

写生帖第47号には、しっかりと水彩で描かれたスケッチ。

ほぼ同じように描かれているが、スケッチより版画のほうが、波の様子、釣り人の服が風ではためいている様子などドラマチック。

 

宮城縣 作並温泉」(昭和16年(1940)作)

写生帖第59号に渡り廊下の手すり部分に跨がってる子どもなどのスケッチ。

子供たちは版画にも登場している。これはリアルな情景だったのか。

 

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常設展の「馬込文士村」の展示に、小林古径の「早春」(当館蔵(大正時代カ))が。

これはちょっと得した気分。

※解説パネルに「当館蔵(大正時代))と書かれていた。「大正時代か?」という意味だろうか。

 

近くの農家を描いた作品のよう。

小ぶりですっきりとした掛け軸になっている。

淡い色調で、人物は描かれていないが、物語の挿絵のように見える。

 

又、大田区から出土した土器、農漁村だった時代の人々の暮らしも紹介されており、

大森麦わら細工」という細工の展示には驚いた。

素朴で味わいがある。「麦わら編み細工」では動物などの形を作りおもちゃや飾り物として、「麦わら張り細工」は箱などに張り装飾模様として活用されていたよう。

 

この麦わら細工、浮世絵や『江戸名所図会』にも描かれていることが紹介されていた。

土産物として販売されている様子が描かれていた。

 

現在、この細工の復元などをしている会があるそう。

 

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図録が先行販売されていたので、購入。

 

 

な、なんと布製バッグ付き!

バッグの上に置いてあるのは「令和3年度大田区郷土博物館スタンプラリー」のスタンプカードである。

 

 

郷土博物館のパンフレットと川瀬巴水展のチラシ、スタンプカードの中身。

スタンプカードのスタンプが大森麦わら編み細工の動物である。

スタンプラリーは燃える!

 

そして、この図録。驚きの分厚さ。

 

 

上は、平塚市美術館の川瀬巴水展の図録。

平塚市美術館は、たっぷりと大きく版画が掲載されており、版画メイン。

大田区郷土博物館は、版画もたっぷりだが、解説文書もわりと多く、木版画ができるまでの紹介、写生帖、日記、愛用品の紹介などまで掲載されているから分厚いのだろう。

これはじっくりと読みたい。

 

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興味深い「展示」が入口近くに。

 

馬込半白節成胡瓜

 

 

解説パネルによると、「明治30年代から昭和30年ころまで、大田区馬込地区で栽培されていた特産の胡瓜」で、「青キュウリに比べて柔らかく、ぬか漬け用に人気があった」とのこと!

ほう・・・。初めて見た。

 

そして、「馬込文化村」の散策マップも。

 

 

こうみると、馬込地区には多くの作家や画家などが住んでいたことが分かる。

気候の良いときに散歩しても良いかも。

 

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特別展「川瀬巴水-版画で旅する日本の風景-」は、

前期は7月17日から8月15日まで、後期は8月19日から9月20日までで、なんと入館料は無料なのである。

この前後期に分けて約400点が展示されるらしい。かなり楽しみである。