ノスタルジーというかサイタマルジ―か?

 

 

これも原武史先生の作品だ。もとは週刊誌に書評として連載されていたものを集めた作品のようだが、読んでみればお分かりの通り、とても書評とは呼べるものではない。むしろ鉄道を利用した日帰り旅行の日記だ。著者が何人かの友人と関東近辺のいろいろな街をあるテーマの下で訪れる。話は沿線でのグルメ(蕎麦やうどん)や鉄道関係の話まで広がり、そこに著者の職業的な関心である日本の天皇制を中心とした政治しがらみの話が関わってくる。書評の対象である本については、わずかにその書名が言及されるのみ。そういう意味では不思議な作品なのだが、けっこうおもしろい。

 

そう、つまるところは、本作品は、著者の思い出話なのだ。高度成長時代に西武線沿線で育った生粋の中関東人(正確には著者は東京都のお生まれのようだが、西武線や東武東上・伊勢崎線の沿線はどこまでが東京で、どこからが埼玉になるのかは沿線風景を見ている限りではほぼ判読不能、ましてや70年代には!)の思い出話なのだ。私自身はこの地域にはあまり土地勘はないのだが、70年代後半に西武新宿線で東伏見方面に大学の体育の授業で初めで出かけた時は、その東京とは思えない風景に度胆をぬかれたものだった。というわけで、本書に充満している著者のノスタルジアにあふれた視角には懐かしさを感じる。残っている風景もあり、消え去った光景もある。そういう時代だったのだ。そういえば、消え去った光景。日本だけではない。英国にも同じような変化はあったのだ。