勝手に論愚選 【読売俳壇2024,06.24】 | 論愚阿来無の欠伸日誌(ろんぐあらいぶのあくびにっし)

論愚阿来無の欠伸日誌(ろんぐあらいぶのあくびにっし)

「小人閑居して不善を為す」日々大欠伸をしながら、暇を持て余している。どんな「不善」ができるのか、どんな「不善」を思いつくのか、少し楽しみでもある。

 アラコキ(アラウンド古稀)世代が、何に夢中になり、どんなことに違和感を覚えるのかを徒然に綴っていきたい。

勝手に論愚選
【読売俳壇2024,06.24】
[矢島 渚男 選]
金魚の子飛び出すやうに動きをり (川口市 広田 絹子)
走り根にヘルメット置く昼寝かな (横浜市 沼宮内 薫)
〔評〕バイクばかりか自転車までヘルメットの時代になった。この句、上五がいい。ここなら茂っている木の陰で涼しい。
夏帽子仏教好きの不信心 (習志野市 加古 隆男)
神主もリュックで祝詞山開き (館林市 篠塚 勝晴)
田植機を眺めて飽きず下校の子 (倉敷市 中路 修平)

[高野 ムツオ 選]
樺忌をわすれないぞえ梅雨半ば (相模原市 荒井 篤)
〔評〕安保闘争デモで大学生樺美智子が亡くなってから六十年以上経つ。当日は梅雨最中の雨降りだった。この悲劇を忘れてまいとの思いが俗謡調の中七から伝わる。
けふ千歩あすは二千歩夏帽子 (東大阪市 渡辺 美智子)
寄り添ひてみな空仰ぐ金魚草 (越谷市 金子 百合子)
沖縄忌ひとりにひとつ喉仏 (水戸市 加藤木 よういち)
縮まればそこも宇宙ぞ蝸牛 (周南市 松岡 哲彦)

[正木 ゆう子 選]
亀の池覆ひてへくそかづらかな (川越市 大野 宥之介)
〔評〕気温も温度も上がる頃の水辺。池は濁っていて、亀の下には鯉が静かに泳ぎ、時おり牛蛙の声が低く響く。ずいぶんな名前の葛は灸花(やいとばな)ともいい、白い小花の中心が赤く美しい。
更衣してコーヒーを飲む時間 (真庭市 宮田 敏子)
蜘蛛落ちて土塊となり蜘蛛となる (北本市 萩原 行博)
草笛に耳裏返る岬馬 (川越市 石田 浩二郎)

[小澤 實 選]
十二杯のジョッキをむんずMadchen(メッチェン)は (東京都 野上 卓)
回る回る干し烏賊造りの回転機 (芦屋市 田中 俊)
蛇交(つる)むサッカーボールの大きさに (福島県 黒沢 正行)
鈴本の椅子に胡座の甚平(じんべ)かな (栃木県 あらゐ ひとし)
父よりも祖母のねばりや田植終ふ (神戸市 吉野 勝子)