勝手に論愚選 【読売俳壇2024.05.27】 | 論愚阿来無の欠伸日誌(ろんぐあらいぶのあくびにっし)

論愚阿来無の欠伸日誌(ろんぐあらいぶのあくびにっし)

「小人閑居して不善を為す」日々大欠伸をしながら、暇を持て余している。どんな「不善」ができるのか、どんな「不善」を思いつくのか、少し楽しみでもある。

 アラコキ(アラウンド古稀)世代が、何に夢中になり、どんなことに違和感を覚えるのかを徒然に綴っていきたい。

勝手に論愚選
【読売俳壇2024.05.27】
[矢島 渚男 選]
山毛欅(ぶな)の森さざめく茅花流しかな (倉敷市 中路 修平)
葉桜の余呉に今年もコウノトリ (寝屋川市 川上 純一)
旨かろうわが葬了へて飲むビール (八王子市 日下部 潦太)
啼きもせず眉も動かぬ春の鵙(もず) (南房総市 山根 徳一)
二度寝して二度目が深き春の夢 (東京都 野上 卓)
塾はなく駄菓子屋があり昭和の日 (宝塚市 広田 祝世)

[高野 ムツオ 選]
鏡の面割りて始まる田植かな (日立市 菊池 二三夫)
(評)漣(さざなみ)一つない代田の面を大きな鏡に見立てた。そこに苗を満載にした田植え機が今年初めて入る瞬間である。田の神も次々と苗が植えられてゆくのを見守っている。
鑑真和尚の瞑目つづく涼しさよ (川口市 高橋 まさお)
(評)鑑真像からの発想。失明までして渡日し、弱者救済にも尽くした鑑真の瞑目は千三百年前から今も続く。苦難の果ての涼しさ。
妻も子も胎児もいまは昼寝かな (東京都 佐藤 ゆう)
村吞みしダム湖の上野鯉幟 (日南市 宮田 隆雄)
万緑やバス停はまだ廃校名 (宍粟市 宗平 圭司)
社会人らしくなりたる五月かな (白井市 毘舎利 愛子)

[正木 ゆう子 選]
太陽にアイスクリーム見せにけり (東京都 藤ヶ谷 国柱)
(評)嬉しくて、アイスクリームを太陽に向かってかざしているのは幼児か。お日様に舐められちゃうぞ。そんな会話も聞こえてきそう。小さな手は、たちまちべとべとに。
一戸跡瀟洒(しょうしゃ)な二戸や柿若葉 (京田辺市 森本 煕子)
白亜紀の石とや桂浜長閑 (浜田市 大島 一二三)
往く人を吹く風として散る桜 (上尾市 中野 博夫)
鳥湑(した)む金のゆまりや春夕焼 (北本市 萩原 行博)

[小澤 實 選]
水筒の水で鎌研ぐ草刈女 (横浜氏 我妻 幸男)
惜春やコロッケのたね刻みつつ (船橋市 中島 かず代)
海風やはちきれさうな鯉のぼり (東京都 中島 徒雁)
腸(はらわた)をまぶす鮑の刺身かな (茅ヶ崎市 清水 呑舟)
こつくんと鳴りし喉(のんど)や逝きし夏 (下田市 森本 幸平)