勝手に論愚選 【読売俳壇2024.04.】 | 論愚阿来無の欠伸日誌(ろんぐあらいぶのあくびにっし)

論愚阿来無の欠伸日誌(ろんぐあらいぶのあくびにっし)

「小人閑居して不善を為す」日々大欠伸をしながら、暇を持て余している。どんな「不善」ができるのか、どんな「不善」を思いつくのか、少し楽しみでもある。

 アラコキ(アラウンド古稀)世代が、何に夢中になり、どんなことに違和感を覚えるのかを徒然に綴っていきたい。

勝手に論愚選
【読売俳壇2024.04.】
[矢島 渚男 選]
ビートルズのレコードに傷春惜しむ (弘前市 長利 冬道)
海峡の潮目定かに夏立ちぬ (松山子 高山 洋子)
封人の家の婆っちゃん春炉焚く (桐生市 杉戸 乃ぼる)
(評)奥の細道で芭蕉も泊まった地方役人の土間を隔てて馬小屋がある薄暗い家。芭蕉は「蚤虱馬の尿(バリ)する枕もと」を作っている。この句、親しみをこめた「ばっちゃん」がいい。炉を焚いて老婆が迎えて呉れた。
風呂場から九九の声する四月かな (浜松市 久野 茂樹)
法被着せ柩に桜笛師逝く (狭山市 清水 政美)
初燕見しと訪問看護師が (八王子市 斎賀 勇)

[高野 ムツオ 選]
長閑さやここにはあってガザにない (高崎市 枝窪 俊夫)
花の山車わんさわんさと往還へ (埼玉県 小鹿原 君江)
氏神の定めしところ蕗の薹 (江別市 北沢 多喜雄)
花びらの鯛のうろこの如くなり (河内長野市 平野 彰一)
若草やポストは仕事中なのです (桐生市 志村 猛)
囀やつっかえながらの七の段 (春日部市 相沢 明子)
ごつい幹ごつい根っこや花万朶 (青森市 小山内 豊彦)
篝火に引き寄せらるる飛花落花 (仙台市 鎌田 櫂)

[正木 ゆう子 選]
野犬ねむる水張る前の昼の田に (笠間市 沢崎 だるま)
ありふれた不幸なのかも聖五月 (川崎市 稲田 覚)
お使ひは買物籠よ昭和の日 (横浜氏 岡 まゆみ)
ほほ杖はたのしきものよ初音聴く (東海市 斉藤 浩美)
よく晴れてカレーに放り込む土筆 (東京都 土井 隆史)
春愁ひ逆立ちすれば治るとふ (東京都 佐藤 ゆう)

[小澤 實 選]
春燈や机に古代魚のフィギュア (さいたま市 山もと 明)
春雷やラジオがジャリと音たてり (三田市 依藤 あかね)
柏餅食べて柏葉折りたたむ (山口市 高橋 まさお)
新緑を舌でねじ切るキリンかな (倉敷市 中路 修平)
海恋しと桶で蛤泣きし夜 (日立市 菊池 二三夫)