勝手に論愚選 【日経俳壇2024,05.18】 | 論愚阿来無の欠伸日誌(ろんぐあらいぶのあくびにっし)

論愚阿来無の欠伸日誌(ろんぐあらいぶのあくびにっし)

「小人閑居して不善を為す」日々大欠伸をしながら、暇を持て余している。どんな「不善」ができるのか、どんな「不善」を思いつくのか、少し楽しみでもある。

 アラコキ(アラウンド古稀)世代が、何に夢中になり、どんなことに違和感を覚えるのかを徒然に綴っていきたい。

勝手に論愚選
【日経俳壇2024,05.18】
[横澤 放川 選]
動き出す俎橋の花筏 (国分寺 秋山 英子)
(評)靖国通りを九段から下りきったあたりの橋。江戸以来の名称。運河の流れは緩慢だ。何気ない写生だが、場所柄から微かな不穏感も。
天地(あめつち)に彷徨ふデブリ余寒なほ (東京 宮浦 酔舟)
(評)この憂鬱は晴れることはもうないのかと思う。このあめつちを穢しつつ生きる我等人間とは。
余震余震奥の花散る余震余震 (大船渡 桃心地)
(評)このひとの作品には優れた美意識がイロニーと一つになっている。批評精神の産物なのだ。
初採りの絹莢の彩卵綴 (流山 伝田 幸男)
永遠をうつむきかけてゐる菫 (小平 中澤 清)
忘れごとふえゆく夫にチューリップ (横浜 畑中 和子)
花の国朝の祈りのバッハ弾く (府中 森谷 眞理)
戦争を黙ってみている更紗木瓜 (桶川 玉神 順一)
来年は昭和百年糸瓜蒔く (武蔵野 斉藤 百合子)

[神野 紗希 選]
憲法の日の草原に差す朝日 (上尾 中野 博夫)
(評)誰もが自由に生きられるよう憲法はある。草原には広やかに風が吹き渡り、朝日は原初のまばゆさを帯びる。素朴な平和の光を失わぬ国でありたい。
灰燼(はいじん)に抱く子つめたし汗の夢 (鹿嶋 佐々木 悠人)
(評)燃えた町の灰にまみれ抱き寄せる子は、命の失せた冷たさ、悪夢から覚めれば汗も冷え、これが現実となる戦火や被災の地獄を思う。
ムスカリや源氏絵巻の色かくも (神戸 籾野 あやの)
百雷の巳みて長虹加賀の夜 (東京 永井 純子)
戻ればたましひのなき牡丹園 (名古屋 加藤 國基)
ブランコの子消へ母消ゆウクライナ (川崎 根本 汎)