勝手に論愚選 【読売俳壇2024.05.14】 | 論愚阿来無の欠伸日誌(ろんぐあらいぶのあくびにっし)

論愚阿来無の欠伸日誌(ろんぐあらいぶのあくびにっし)

「小人閑居して不善を為す」日々大欠伸をしながら、暇を持て余している。どんな「不善」ができるのか、どんな「不善」を思いつくのか、少し楽しみでもある。

 アラコキ(アラウンド古稀)世代が、何に夢中になり、どんなことに違和感を覚えるのかを徒然に綴っていきたい。

勝手に論愚選
【読売俳壇2024.05.14】
[矢島 渚男 選]
立ちあがる波に石蓴(あおさ)の見えにけり (神戸市 林山 任昂)
(評)明快な写生句。怒涛の薄いところに一枚の石蓴がくっきりと見えた。写生力が俳句の基礎である。
長閑さや芦雪の仔犬みな尨毛(むくげ) (佐世保市 相川 正敏)
(評)長沢芦雪(ろせつ)は江戸後期の画家で応挙の弟子。奔放な筆致で動物画にも高い技量を発揮した。これは何匹かの犬の毛並みがふさふさと巧みに描かれていた。
酸素ボンベ提げて弟春日和 (志摩市 岡山 花野)
乙女らのスイーツ広ぐ花莚 (宝塚市 広田 祝世)

[高野 ムツオ 選]
夜の森の被曝桜に集ふ神 (四街道市 樹下 石上)
(評)福島原発事故で帰還困難区域となった桜の名所「夜の森」(よのもり)。近年立ち入り可能となった。観桜客が立ち去った夜更け、神々が集まり、人間の未来についてひそひそ話し合っている。
罅(ひび)割れの棚田に海猫(ごめ)の来てをりぬ (出雲市 石川 寿樹)
地震(ない)ありし能登千枚田田を返す (武蔵野市 相坂 康)
花の雲かき分け走るのと鉄道 (大津市 千川 修一)
くしやくしやのハンカチだけが知る怒り (佐野市 高橋 すみ子)
高千穂の神々遊ぶしやぼん玉 (所沢市 萩野 オサム)
ここに校舎ここに校庭さくらさくら (大船渡市 桃心地)
千万の花の絨毯踏みて征き (対馬市 神宮 斉之)

[正木 ゆう子 選]
七人は乗れぬと留守や伊勢詣 (川崎市 福本 よしき)
絹莢(きぬさや)のとるほどもなき筋を取り (静岡市 小河 健冶)
降りやまぬ雨やかりかり初かはづ (大分市 加藤 元二)
(評)蛙の鳴き声のオノマトペは色々あるが、カリカリは少し意外で、しかもかなり納得。次の二句の「もやもや」と「カヤカヤ」も個性的。
百匹の蝌蚪(かと)もやもやと子のバケツ (小山市 松本 喜雄)
満天星(どうだん)の花カヤカヤと万の音 (東京都 松永 京子)
ふらここや大空蹴って反抗期 (秦野市 諸星 光恵)

[小澤 實 選]
本堂へ玉砂利を突く遍路杖 (名古屋市 平田 秀)
蟇出でて隣家の犬の吠えつづけ (東京都 望月 清彦)
百四歳母生き切って春に逝く (東京都 小沢 悦子)
型抜きのチキンライスにパセリかな (横浜市 小沢 悦子)
花冷えの回廊僧と歩みおり (野田市 高梨 昇一郎)
春風やぽろろぽろろと山羊の糞 (東京都 天地 わたる)