勝手に論愚選 【日経俳壇2024.3.30】 | 論愚阿来無の欠伸日誌(ろんぐあらいぶのあくびにっし)

論愚阿来無の欠伸日誌(ろんぐあらいぶのあくびにっし)

「小人閑居して不善を為す」日々大欠伸をしながら、暇を持て余している。どんな「不善」ができるのか、どんな「不善」を思いつくのか、少し楽しみでもある。

 アラコキ(アラウンド古稀)世代が、何に夢中になり、どんなことに違和感を覚えるのかを徒然に綴っていきたい。

勝手に論愚選
【日経俳壇2024.3.30】
[横澤 放川 選]
やつと知る独り来帰る彼岸道 (稲沢 上田 克彦)
(評)彼岸はもともと生死の向こうという意味だ。読み解きにくい句かも知れないがこうとしか詠めない句かも。やっとも帰るもどの語も物思わせる復座瑠那こころの跡だ。
啓蟄の瓦礫の都市や裸虫 (小平 中澤 清)
(評)人間というどうしょうもない毛無し虫。造っては壊し、奪っては誇る。なんだ、ジェノサイドなどということばさえ持つこの虫は。
一年は昨日の如し初桜 (永野 中沢 義壽)
(評)黒田杏子さんのための数多の友垣による追悼文集を編集してみたが、烏兎匆々(うとそうそう)の思い。
神の名を借りる諍ひ春寒し (藤枝 山村 昌宏)
妻逝きて四角に戻す雑煮餅 (横浜 白鳥 秋介)
夫の目は実に節穴よ蕗の薹 (水戸 足達 とよ子)
御神火を御身に宿し山眠る (富士宮 高村 富士郎)

[神野 紗希 選]
レモンチェッロ手に手に石鹸玉のデッキ (狛江 北欧小町)
(評)甲板で憩う人々。イタリアの風景だろう。レモンのお酒の明るさ、石鹸玉のきらめき、旅心が弾む。
のどけしやまだ名を呼べば泣けてくる (府中 高橋 栄美)
走りつつ電車錆びゆく花の雨 (さいたま 武智 しのぶ)
孤独とは朧を回る観覧車 (高松 島田 章平)
燕来るなにもなかつたかのように (広島 秋山 博江)
家に来て家買へといふ蝶の昼 (川崎 折戸 洋)
鞦韆(しゅうせん)を揺らしジェンダーといふレンズ (宇都宮 大淵 久幸)
踏切は鉄の匂いや春愁 (葛城 山本 啓)
春立ちぬ鷹も兎も生きろ生きろ (八王子 梅澤 春雄)