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きみの靴の中の砂

このサイトは "Creative Writing" の個人的なワークショップです。テキストは過去に遡り、随時補筆・改訂を行うため、いずれも『未定稿』です。

(S/N 20251208-2 / Studio31, TOKYO)

 

 

 

 

 遠浅の環礁は潮の満ち干に関わらず、時折、小振りながら鮫が迷い込むらしい。

 

 ホテルのプールサイドで、飲み物をサービスする若いウエイトレスが、
「海で泳ぐならサメに注意してくださいナ」と笑って教えてくれる。

 

 バリの州都デンパサールから飛行機で三時間、ここはまさに赤道直下。

 

 

 東京から離れるほど、きみに逢いたくなる。

 

 

 

 

 

【The Buffalo Springfield - On The Way Home】

 

 

 

 



 

 辻邦生の生前に編まれた作品集が今、『ぼくが死ぬまでに手放さないであろう三十冊』に全六巻とも残っている。

 

 鴎外以降、世に出た作家の全集はかつて他に十人分ほど書庫にあったが、辻以外は最早全部古書肆に買い取られて行っていってしまった。

 

 辻を残した理由をずっと考えていたのだが、よくわからないでいた。

 

 ところが先日、月報の『辻と粟津則雄の対談』にその答を見つけた  ——  粟津の主旨は『同時代の作家と比べ、辻の作品の雰囲気には(当時日本人のほとんどにあった)敗戦がもたらした後遺症というか、闇市的なところを感じさせない』というものだった。それが、大東亜戦争を知らない戦後世代の書痴を惹き付ける理由だと思った。

 

 しかし、実は、そこが辻の小説家としての弱点でもあって、一世を風靡した同世代の『第三の新人』達の人気と一線を画することにもなった。

 

 





【Minnie Riperton - Island In The Sun】

 

 

(S/N 20251207-2 / Studio31, TOKYO)

 

 

 

 

 趣味や仕事、あるいは日々の生活でも、ある日、『こんなことをしていて何になるんだろう』と思うことは誰にでもある。いい例が日記で、何十年も続けられる人もあれば三日で終わる人もいる。その違いはどこにあるのか。

 

 目的の有無か、さもなければ日記に課したハードルの設定ミスか。

 

 価値のありそうなもっともらしい目標を立てるより『とにかく一行でいいから書く』程度の目標であれば三日で終わることはないような気もするが...。これで続かなければ、字を書くことが嫌い・面倒臭い、つまり向いていないということになる。


 数十年間いち日も休まず日記をつけた永井荷風が『書く気力も失せつつある亡くなる月の記述』は、連日『夜、大黒屋』と夕飯を食べに出かけたことだけを記す程度。それでも日記は休まない。


 『一行でもいいから続ける』という目標は、困難なほどハードルの高いことのようには思えないが...。

 


 
  



【The Walker Brothers - Hurting Each Other】

 

 

(S/N 20251207 / Studio31, TOKYO)

 

 

 

 

 歳を取ると何故か古いことを思い出す。そのメカニズムは脳学者により凡そ解明されているが、問題なのはその本質ではなく、古いことをよく思い出すようになったら年寄りになったというサインが出ていることを自覚せよということだ。そうなったら、なるべくそれに抗うような努力を心掛けたい。

 

 

(S/N 20251206-2 / Studio31, TOKYO

 

 

 

 日本酒なら一合程度を夕飯と共に嗜むのを『晩酌』といい、それ以上飲むと『呑み』になると知ったのはそんな昔のことではない。若い頃は一升瓶が三、四日で空いたが、歳を取るに連れ、控えるつもりはないのに自然と常識の晩酌範囲に収まるようになってきた。

 

 人にもよるだろうが、加齢により酒量は自動制御される。

 

 

(S/N 20251206 / Studio31, TOKYO)

 

 

 

 

 主婦一年生など家庭料理初心者は、レシピ本どおりに再現できれば花丸。その先はベテランの領域。

 

 さて、このプロセスは『芸術』も同じで、まず模倣・コピーから入るのが基本。しばしば、それを疎かにして先へ進もうとするチャレンジャーがいるが、ほとんどの場合、挫折して目標にたどり着けない。

 

 

(S/N 20251205-2 / Studio31, TOKYO)





 小説の場合、読んでストーリーが読者の頭に刷り込まれてしまうと再読までに結構年月を要することもあって、その点、小説にはハンディーがある。その裏返しで、ストーリー性の希薄な著作こそ再読に耐え得ると言ったら、ストーリーテリングを重視する小説家志望の若い人達にとっては辛口な意見であるかも知れない。

 

 

(S/N 20251205 / Studio31, TOKYO)





 時折、venezia-sanmarcoというハンドル・ネームからメールが届く。
 ぼくのアドレスなどSNSのプロファイルにすら書いてあるのだから、誰からメールをもらおうと別に不思議はないのだが...。

 さて、最近では四日前...。


「こんばんは☆ 今、どこですか? 今夜もIron Skillet(鉄のフライパン)  ——  ぼくが夕食でよく行くレストラン・バー  ——  ですか!?」と謎の人。
「一昨日の夜は行ってましたけど、今夜は自室で短い日記  ——  のようなもの  ——  を書いてます」とぼく。

「そうですか...。今夜は、どこにも出かけなかったのですね? わたしは、これからIron Skilletへ行くかも」と彼女。

 その夜は、それだけ。

 発信人が誰だか知りたくもあり、その夜、着替えてIron Skilletへ出かけてみてもよかったのだが...。

 






【Martha Reeves & The Vandellas - Heat Wave】