きみの靴の中の砂 -4ページ目

きみの靴の中の砂

このサイトは "Creative Writing" の個人的なワークショップです。テキストは過去に遡り、随時補筆・改訂を行うため、いずれも『未定稿』です。

(S/N 20260129-2 / Studio31, TOKYO)

 

 

 

 

 亡くなった大正生まれの父親は、子供を誉めることは少なかった。そもそも昭和以前の生まれの男とはそういうものだったのかも知れない。

 今、死んだ父親に誉められたことで記憶に残るのはたったひとつだけ。

「おまえは、お金が有るときは有るように使い、無いときは無いようにしか使わないところが立派だ」

 当たり前のことと言えば当たり前だが、借金してまで遊ぶヤツもいることを考えれば、あながち当たり前ではないのかも知れない。

 

 

 

 

 

【The Beatles - Money (That's What I Want)】

 

 

 





 書く気の起きないときは、出来ればそれを忘れて、好きなことだけしながら待つのがいい。
 例えば食べるとか...。

鍋焼ときめて暖簾をくぐり入る   西山泊雲(1877 - 1944)



 

 今朝は、写真家・南川三治郎さんの『推理作家の発想工房(1985年 文藝春秋 初版)』を再読。この本の良いところは、作家達のオフの写真が豊富にあって、彼等が仕事ばかりしているわけではないことがよく分かり安心できる。

 午後は、頬杖つきながら、チェスの何手かを考える。そうしていたら、チェス好きで有名なモロッコ出身のスペイン人劇作家・奇人アラバール(Fernando Arrabal 1932- )を思い出した。
 彼二十歳の処女戯曲『戦場のピクニック』は、毎年、世界のどこかで必ず上演されている。

 






【Caféde la Gare - Pique-nique en campagne(戦場のピクニック)】

 

 

(S/N 20260129 / Studio31, TOKYO)

 

 

 

 

 ヘンテコな論法で、文学高校生の一部で昔も今も人気の作家辻潤の著作は、Kindleに無料版があるので読めないこともない。

 

 辻潤著作集の冒頭『浮浪漫語』の一節に、

『物を書こうという気の起る時には、もう既に自分は甚だしい束縛の囚人である。少なくともそういう意識の下で自分は物を書くのである。だから、書いたり、饒舌 ったりした後ではキット余計な無駄なことをしたように感じる時が多いのだ。(辻潤. 辻潤著作集 辻潤集 (古典名作文庫) (p. 5). (Function). Kindle Edition. )』

 

 半世紀前の文学高校生は、同好の士同士では、暇さえあればこんなコトばかり話題にしていた。

 

 

 

 

 

【Barbra Streisand - Run Wild】

 

 

(S/N 20260128 / Studio31, TOKYO)





 昼時、そのランチ・カフェの客は、店頭のサインボードに書かれた『今日の二種類のランチ』の品書きを見て注文する。それで用が足りるせいか、別に手に取れるメニューがあるのかどうか気にしたことはない。ただ、時折小さなスケッチ・ブックをめくっている客がいるので、もしかしたらそれがソレなのかもしれない。



 

 何人かいる常連達は、自分の好きなものをア・ラ・カルトの如くランチ客の引けた後の昼下がりに来て頼む。たいして手間のかかるものでなければ、なんでも作ってもらえるようだ。例えば、魚肉ソーセージとピーマンの醤油炒めと目玉焼きを定食にしてもらうなど  ——  これは、K氏という退職した紳士が明けても暮れても注文するので『K氏定食』という別名もあった。


 というぼくが気に入っているのがトースト・サンドウィッチ。西洋正統の八枚切りの食パンを使ってくれる。具はその時の気分で『卵』とか『ハム』の他、手近にある野菜やチーズが共に挟まれて出てくる。細かい注文はつけない。普段はそれと珈琲、週末なら緑のパイント壜入りの麦酒と共に頼む。

 たった七卓しかない店だから、コントなどを考えながら、腰を長くすえがちなぼくが出かけるのは、もっぱらランチの客が引けた昼下がり...。


 今日、偶然にも例の小さなスケッチブックが手近にあったので手に取ってみると、やはり手作りの  ——  たった一冊しかないらしい  ——  メモや写真を貼り混ぜた品書き帳であった。
 結構、いろんなものが作れることはわかったが、ぼくの好きなトースト・サンドウィッチの記載は見当たらなかった。

 






【The Beatles Experience (From Argentin) - Tell Me Why】

 

 

(S/N 20260127 / Studio31, TOKYO)





 2013年3月16日の下北沢『本屋 B & B』でのトーク・イベント【川内有緒×佐伯誠 『バウルを探して』発売記念イベント 世界の片隅から片隅まで、旅・会う・書く ~いつだって源流を覗き込みたい~】を聴きに行く段取りにしくじり、涙を飲んだ  ——  インタヴュアーの佐伯誠さんを視界に捉えるチャンスだったのだが...。

 佐伯さんは、とにかく著作が少ないことや記事になるような(写真を撮られるような)公の場に容易に出ようとしないところなど、つまり彼は、トーマス・ピンチョンのように、ファンを  ——  あるいはぼくを  ——  かわしていく。

 

 

(S/N 20260126-2 / Studio31, TOKYO)





 古いカセットテープから聞こえてきたのは砂浜に崩れる波の音

 大きく 小さく 遠く 近くに

 海からの風 陸の風  ——  風向きで音の色が変わる



 日盛りの瞑目...

 音のグラデーション






【Antonio Carlos Jobim - Wave】

 

 

(S/N 20260126 / Studio31, TOKYO)





 英国で伝統の軽食(今の日本の牛丼のように考えてもらってもいい)  ——  フィッシュ(フライド・フィッシュ)& チップス(フライド・ポテト)のしっかりした店なら、魚は常に五種類ほど用意されている。単品バラ発注が利くので、三種類食べたければ、ただ、そう頼めばいい。

 ぼくは、ハリバットとコッドフィッシュが好きだ。日本で言うところのオヒョウとタラ。

 イートインで食べるときは、皿の上のフライド・フィッシュの縦の中心線に沿って身の中程までナイフを入れ、そこに店特製のワイン・ビネガーをかける、これが作法  ——  ナイフを入れるのは身にビネガーが染み込み易いようにするため。
 ぼくは、この写真にあるような乾燥パセリを振ったアメリカ風フレンチフライよりも、西瓜や蜜柑の半月型に切った方が好きだ。その方が食べたときの充実感に富む。

 さて、写真には『皿に敷いたナプキン』に新聞記事が刷られているのが見える。これは、テイクアウトする場合、『包装紙に(余計な揚げ油の吸収がいい)新聞紙を使う』という長い伝統をイメージしている。残念なことに、日本は勿論、英国でも衛生面から食物を新聞紙で包むのが御法度になって久しい  ——  インクに含まれる鉛成分が身体に良くないというのがその理由。しかし、新聞紙ほど余分な油脂を吸い取り、かつ保温に優れたものは他には見当たらない。

 






【Jackson Browne - These Days】

 

 

(S/N 20260125-2 / Studio31, TOKYO)

 

 

  

 

 撮影データを残していないので、いつ撮った写真かはウロ覚えでしかない。
 高校を卒業して間もない頃か...。あるいは成人式の頃か...。
 線路際の道のようだが場所もハッキリしない。

 

 カメラをいじっていて、うっかりシャッターを押してしまったような写真...。

 

 

***

 

 

 新聞の地方版だか市の公報だかを広げて読んでいたイチ子さんが顔も上げずに言う。
「神奈川県の高校の卒業式は、今年は17日だって」

 そうか...。卒業式か...。

 

 このところだいぶ暖かくなって、庭のナンテンの紅い実をついばみに来る野鳥の数が増えたような気がする。

 

 

(S/N 20260125 / Studio31, TOKYO)





 日曜の朝。


 金属を衝突させる音が聞こえるのは、イチ子さんが、オーブンの受け皿をターナーでこそげてグレービーソースを製作中か...。
 

 さて、後から掛けるそのグレービーがよく染み込むようにトーストは中が乾くまで焼いておきたい。それをまず皿に敷き、次に最初のサニーサイドアップを重ねる。次にミートローフ。その上に焼トマトのスライス。最後にもうひとつサニーサイドアップを載せ、上からグレービーをたっぷり掛ける。パセリなど、刻んだ青物を黄身の上に散らすと美しい。

 ところで、これがなんという料理なのか詮索したことがない。深く考えることなく、ただ、オープンサンドと呼べば済む話か。

 大皿にそれぞれを分けて盛り付けるのではなく、小振りの皿に積み重ねていくところなど、英国ならではの装い方だ。イギリス人は、昔からの習慣で、これを食べづらいなどとは誰も思わないのだろう。



 食卓で「なにか話題ある?」と聞くと、イチ子さんは、
「ええ、あるわよ。世界各国のお料理屋さんがあるなか、なに故、アングロ=サクソン料理店はないのか、なんてどう?」
 確かにいい話題だ。世界中、至る所を歩いてきたけれど、どこへ行っても、イギリス料理とアメリカ料理の看板を掲げたレストランは見たことがない。

 

 

 

 

 

【angels - You Can't Hurry Love】