きみの靴の中の砂 -3ページ目

きみの靴の中の砂

このサイトは "Creative Writing" の個人的なワークショップです。テキストは過去に遡り、随時補筆・改訂を行うため、いずれも『未定稿』です。

(S/N 20251214 / Studio31, TOKYO)

 

 

 

 

 詩人尾崎喜八は明治25年(1892)生まれ。昭和49年(1974)、82歳でに亡くなっている。

 山に関わりの深い作家達のホームグランド的出版社・創文社から亡くなった二年後に出ているこの本からわかることは、八十才にもなると日記や手紙のような私信以外は、若いときのように頭に湧いてこないということだ。

 

 随分永く創作に関わってきたと思っていた、詩人新川和江さんだって最後の著作は八十才くらいだから、文芸に関わる人は、大体八十才くらいで創作脳が電池切れを起こすようだ。

 

 それが相場ということなら、文筆家の晩年の生き方も多少工夫して楽しく出来るかも知れない  ——  机に向かって悶悶とする人生にも『潮時』があるのを知っておきたい。

 

 

 

 

 

【Foxes and Fossils - Don't Worry Baby】

 

 

(S/N 20251213 / Studio31, TOKYO)

 



 

 クリスマスが近づくと、ぼくは決まってイチ子さんのためにパエリヤ・バレンシアーナを作る。

 作り方は、昔、スペインのアンダルシア地方コスタ・デルソルのマラガへ旅したときに覚えたものだ。

 

 日本で一般的に流布しているレシピと違うのは、最初に油を熱するときに、熟したトマトをふたつほど手で握りつぶすことだ  ——  これにどんな意味があるのかわからないが、兎に角習った手順ではそうだ。そしてチキンを入れ、キツネ色になるまで炒める(チキンも途中からキツネへと変わり身に忙しい)。いい色になったところで塩胡椒で味付けして、チキンを一度取り出す。入れ替わりに刻んだトマト、緑のピーマン、スライスしたニンニクを入れて加熱。そしてサフランを浸けて黄色くなった水を差し、長粒種とジャポニカ米を半々にブレンドして投入。最後にチキンを戻す。炊きあがる途中で赤ピーマンの細切りとシーフードを飾る。スペイン人のように多めの水で炊いて、余った水分を中途で捨てるなどしない。

 

 北半球のクリスマスには、炊きたてのパエリヤ・バレンシアーナの温かさは有難い。日本の冬景色と地中海の夏の情景が瞼の裏で重なる。

 

 合わせる酒は、ジンとベルモットを 15 : 1 でステアした、モンゴメリーと呼ばれる辛口のマティーニ。

「いくらかっこを付けたいからといったって、ベルモットを霧吹きでかけるなんておかしいわよね」といつだったかイチ子さんが笑ってたっけ。

 

 あと十日もしないうちにキリスト教世界ではクリスマス休暇。雪国では、夜間帰省する車のテールランプがどこまでも続いていることだろう。

 

 





【Chris Rea - Driving Home For Christmas】

 

 

(S/N 20251212 / Studio31, TOKYO)

 

 

 

 

 生まれて初めてポテトチップスを食べたのはいつだったか  ——  今日買ったパッケージにその答があった。

 

 そうだ、あの日だ  ——  カカトの骨にヒビが入って、春休みに山梨県の下部温泉(骨折に効果があるといわれていた)におばあちゃんに連れられて湯治に行ったときだ。

 

 

(S/N 20251211-2 / Studio31, TOKYO)

 

 

 

 

 雲の研究家でもあった詩人尾崎喜八は、戦前のある日、今までに見たこともない雲が漂っているのに気づき、レポートを中央気象台(気象庁の前身)に提出した  ——  その雲の形状を報告したのは、民間人では最初だったようである。後年、尾崎が上梓した雲の研究書によると、気象台からの返信には、それは『飛行機雲』と説明されていたという。

 当時、飛行機はエンジンの性能及び機体構造が進化(単葉低翼、全金属に加え引込脚)により、遂に時速500kmに届こうとしていた  ——  上空の気温、風向きなどにより、高速戦闘機の翼端では空気が急速冷却され、筋状の雲を発生させた。

 

 今朝、久し振りに飛行機雲を見たとき、尾崎の報告を思い出した。彼が見たのは、もしかしたら、帝國海軍が三菱に試作を命じた『十二試艦戦(昭和十二年度試作発注艦上戦闘機  ——  零式艦上戦闘機のプロトタイプ)』が曳いた飛行機雲だったかも知れないと空想が膨らんだ。

 

 

(S/N 20251211 / Studio31, TOKYO)





 ぼく達は社会において、人間関係という円環の一部を形成している。

 

 

 

 

 

【The Chicks - I Don't Want to Spoil the Party】

 

 

(S/N 20251210-2 / Studio31, TOKYO)

 

 

 

 

 プール掃除。

 

 

 

 

 

【angels - ふたりの夏物語】

 

 

(S/N 20251210 / Studio31, TOKYO)





 『クートラスの思い出』著者岸真理子・モリアさんは、すでに半生を巴里に暮らす方である。しかし、それにしては余りにも使いこなされた書き言葉  ——  いい文章には執筆者独特の薫りがある。
 奥付を見ると、然るべき納得の文筆家が推敲をお手伝いしていた。

 






【Gordon Lightfoot - Did She Mention My Name?】

 

(S/N 20251209-2 / Studio31, TOKYO)

 

 

 

 

『言葉の錬金術(Arthur Rimbaudによる命題)』  ——  いにしえの昔からわたし達日本人がことごとく使い回してきた日々の言葉、青カビの生えたような名詞や形容詞  ——  現代日本の詩人達は、果たしてそれらを黄金の言葉に変えられているだろうか。

 

 

 

 

 

【中島雄士 - もしもビートルズがマライア・キャリー『恋人たちのクリスマス』をカバーしたら】