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きみの靴の中の砂

このサイトは "Creative Writing" の個人的なワークショップです。テキストは過去に遡り、随時補筆・改訂を行うため、いずれも『未定稿』です。

(S/N 20260209 / Studio31, TOKYO)

 

 

 

 

 高校を卒業したあとすぐには大学へ行かず、親のお金で二年ほど、お茶の水駿河台あたりで遊んでいた。

 

 『梅花亭ギャラリー』という小品を構想したのは、そんな頃のことだ。

 

 夏の夕暮れ、麻布十番をバスで通りがかったとき、車窓からその名の画廊を見つけた。それを口に出してみたら語感が気に入り、なにかしら小品にしたいと考えたのだったが、結局、それは成就することなく時間は過ぎた。

 

 そのとき書き上げられなかった『梅花亭ギャラリー』への思い入れが今も頭の隅に残る。完成しなかった理由は、当時、流行っていたウルフ・カットのきみを想う気持ちがミューズの機嫌を損ねたと今は理解している。

 

 

 きみは、アテネ・フランセの一年生になっていた。

 

 きみの学校帰り、駿河台の『Lemon』というティールームででよく待ち合わせた  ——  レモンは、フランス語ではシートロンというのよと教えられたのを覚えている。

 

 三十歳を過ぎてお互いに独身だったら結婚しようと、お互いに保険を掛け合ったものの、結局、それを行使するには至らなかった。

 

 

 

 

 
 
【Hitomi Tohyama - Our Lovely Days】

 

 

(S/N 20260208-3 / Studio31, TOKYO)

 



 

 島の陽は今、遂に南中に至る。

 

 今夕から明日にかけて、砂糖黍の豊作を祝う恒例のラム酒祭りがあるというので、ホテルの滞在客のほとんどは岬の向こう側  ——  南国の酒の出荷で賑わう港町へ早々と繰り出してしまった。

 

 リゾートととは言え、赤道に近いこの島では、炎天下の日盛りにホテルのプールで泳ぐ者はいない。今日も独り占め状態で、それが、むしろ爽快に感じられる。

 

 南国の果実に飾られた、足の長い大きなシャンペングラス  ——  そのブルーのカクテルのクラッシュアイスが見る見る溶けていくのを気にしながら、果たして今夜、カーニバルにひとりで行ったものかどうか、いまだ決めかねているのだが...。

 

 





【Tony Rivers & Harmony Grass - I Remember】

 

 

(S/N 20260208-2 / Studio31, TOKYO)

 

 

 

 

 佐賀のデコポンをお獅子に剝いて食べながら、昨夜からの残雪を窓から眺めていた。こんなふうにして雪を見ると、よく思い出すのが伊藤整の処女詩集『雪明かりの道』。

 

 伊藤整は戦前から日大の芸術科で講義をもっていた。戦後は次男も日芸で文学を長く教えた。ぼくは、その次男・伊藤礼先生の講義は受けたことはなかったが、卒論だけ指導を受けた。そんな縁もあってかどうか、伊藤整は、日本の作家の中で鷗外、荷風に次いでよく読んだ。

 今でも長編小説『氾濫』と『戦中日記』は時折繙く。

 

 小学生の頃の礼先生は、その戦中日記によく登場していて、本人を知っているだけに興味深い。

 

 

(S/N 20260208 / Studio31, TOKYO)





 いち日の船旅。

 全長25フィートやっとの小さなスループ。


 今は7ノットほどの微風に押されて前進中  ——  およそ同じ速度の追風に任せて進めば、風は止まり、まるで波間を漂っているよう。


 

 真昼の海霞み  ——  葉山は間もなくVanishing Pointと重なる。


 

 狭いギャレーに大小ふたつのウォータータンク。

 ひとつは(大きい方は)マリーナの洗艇場の水道水  ——  これ、飲み水。
 もうひとつには赤ワインが3リットル。

 






【Gilbert O`Sullivan - You Are You】

 

 

(S/N 20260206-2 / Studio31, TOKYO)





 長いこと書き続けていると、スランプに陥った場合の理由も次第にわかってくる。脱出方法は、それを回避すれば済む話じゃないか、ということになろうが、ところがそれがまたそう簡単に出来ないワケがあって厄介  ——  作家のスランプは結構八方ふさがりなのだ。

 

 

 

 

 

【Vanity Fare - Early In The Morning】

 

 

(S/N 20260206 / Studio31, TOKYO)



 

 

 ちょっといいなと心ときめく男は概ね妻帯者  ——  最早、手遅れを認めざるを得ないのは、M子38歳  ——  今のところ、男運は絶望的。

 

「おっと、オレはダメだよ。独身だけど、オリンピック四大会分も年上だから...」

 

 

 

 

 

【The Serchers - Love Potion No. 9】

 

 

(S/N 20260204 / Studio31, TOKYO)

 

 

  

 

 きみがいないと

 ぼくは

 どこかへ漂流していってしまいそうだ。

 


 
 

 

【Laura Nyro - Wedding Bell Blues】

 

 

(S/N 20260203-3 / Studio31, TOKYO)

 

 

 

 

 父親から写真撮影のトレーニングを受けたときの最初の機材『コニカ 2B型』。露出計は付いていないので、空を見上げて雲量を測り、光量を読んでからシャッタースピードと露出の組み合わせを選ぶことになる。汎用フィルムはネオパンSかSSだった。