江國香織トークショー in 名古屋 Part1☆ | 読書至上主義

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毎日1冊は本を買ってしまうワタクシの雑感です。

昨日、江國香織さんのトークショーに珍しく夫婦で出かけてまいりました。偕成社から刊行された初の長編童話『雪だるまの雪子ちゃん 』、そして「三省堂書店 名古屋髙島屋店 開店10周年」を記念して今回開催されたものだそうです。



読書至上主義-『雪だるまの雪子ちゃん』
『雪だるまの雪子ちゃん』 偕成社


余談ですが、私はアメリカの大学を卒業して帰国し、就職活動をしていた1ヶ月の間、三省堂書店の名古屋テルミナ店(B1)で朝から晩までアルバイトをしていました本 あの頃はレジも手打ち。千円札のおつりを出すところを間違えてお客さんに1万円札を渡し、隣のお局アルバイトのお姉さんが気がついて撤収し、ちょっと叱られた記憶があります。プププ。ドジだった。夜6時30分頃になるとレジ前に長蛇の列ができ、文庫5冊ぐらい買うお客さんが「全部カバーをして下さい」と言った時には焦ってカッ~プンプンとなり、どっ、どうしよう、と。初心者の私は、紙のカバーをかけるのが遅かったのです。ベテランさんは速いのですよ!! 後ろにひたすら並ぶお客さんを見ては、自分の手が早く動かないし、もうドキドキして気が遠くなった思い出がありますガーン


さて、私は1997年冬に初めて江國香織さんの短編集『つめたいよるに』を読み、心動かされて以来彼女が好きに。江國さんのことが気になってから早12年間。私は一度も生の江國さんに会う機会には恵まれませんでしたが、なんと今年は春の三重県四日市市の講演で初めて“生”江國さんを拝見し、昨日は2回目。それだけに、これがいかに貴重な体験だったかというのは実感しています。これまで江國さんは何度も東海地方に来ていらしたのに自分が多忙で気がつかなかっただけなのか、あるいは今年が珍しい年なのかは解明出来ていません。でも、人生って、所詮、そういうことなのかもしれません。常にそこにあるのに、自分が勝手にそれをしないだけ? 自分の意識がただ自分のつまらない人生をつくってしまっていただけ。だとしたら、怖いですね……叫び


さて、くだらないどうでもいい個人の前置きが長くてすみません。長いレポになりそうなので、何回かに分けて記事をUPさせて頂く予定です。奈菜さんyurikoさんが 特にお待ちかねのご様子なので、普段より丁寧に書きたいと思います。


今回は三省堂書店 名古屋髙島屋店で『雪だるまの雪子ちゃん』を購入した100名限定のご招待というトークショーでした。私のレポはいつも短い箇条書きなのですが、今回はうちの主人が詳細に渡りメモしていたので、それをザッとコピペします。

但し、彼曰く「あー、もう、いや。疲れた。ノートテイキングはしてあるけれど、これ以上書けない」と言いながらお昼には外出してしまいましたので、主人のレポはこれで終了かもしれません。続きは、私の箇条書きになる可能性が大ですが、あしからずべーっだ!


わんわんにゃーぶーぶーヒヨコヒツジうり坊ブタ馬ウサギペンギンフグカエルカメ


ミッドランドスクエアっていう名古屋駅前のおっきなビルの中のこじんまりとした会議室で開かれた江国さんの講演会。整理券を得て集まった100人ぐらいはほとんどが女性。30代ぐらいの方が多く、みんなきちんとした身なりの人ばかり。中には着物の女性も。
試験前の会場のように静まりかえった会場に、江国さんは、1、2度おじぎをしながら入ってきた。グレイ系のチュニックワンピースに、黒のレギンス、黒のパンプスといういでたち。左右の薬指にはそれぞれ大きなファッションリングが。


進行役は偕成社の編集者、広松健司さん。広松さんは、江国さんがアメリカ留学中にはないちもんめ童話大賞をとったときに、エアメールを書いてコンタクトを取った以来の長い付き合いという。江国さんが日本に来た時に新宿で会ったのだが、実は、そのとき、隣のテーブルには、江国さんの妹もこっそりいたのだという。知らない編集者から初めてコンタクトを受け、それがどんな編集者なのか、一緒に確かめて欲しかったのだという。実は、このことは広松さんもその後、10年ぐらい聞かされなかったのだという。「だって失礼でしょ」と江国さん。
広松さんはそのころ、あかね書房にいたのだが、そこで『こうばしい日々』や『ぼくの小鳥ちゃん』を一緒に作ったのだという。
江国さんは今回の『雪だるまの雪子ちゃん』の著者紹介が気に入って、この紹介をこのあとずっと使いたいぐらいだと言っていた。


ものがたりが書きたいという気持ちは、すごく小さい時から持っていて、意味のないうそをいつもついていたのだという。「きょう、すごく背の高い男の人に会った」とか。でも、友人の井上荒野さんのほうが本格的でディテールまで凝っていたのだという。負けた、と思ったと江国さん。例えば「きょう、転んで、膝からすごく血を出していたら、きれいな女の人が通りかかって、白いハンカチを取り出して拭いてくれた」とか。

あと、江国さんは言葉でいろいろなものを描写していた。どれだけ言語化できるのかということに興味があった。日記を書いていたのだけれど、何ページも何ページも書いていて、すごく時間がかかっていた。中学生のころなんかは、食事の時、テーブルに両親が座った場所から何からすべてを描写しないと気がすまなかった。旅行に行っても葉書を書く時間のほうが長かった。人生を生きている時間よりも、書いていた時間のほうが長いかも。あと、1年のうちで最初にスイカを食べた日、最初にいちじくを食べた日、のこととかは毎年きちんと書く。


擬態・擬音語の言語化も楽しかった。ハトの鳴き声も言葉にしようとしたけれど、難しかった。おもしろいのは、フッフードゥドゥルドゥと鳴くんだけど、フッフーで始まって、必ず、またフッフーでハトは終わるんですよね。
音をリアルに書くのと実際のリアルは違う。『ウエハースの椅子』でも、秋の虫はリーンリーンと鳴いていないなと思って、リレリレリレかなとか思って書くと、文字のリアリティとしてはリレリレリレなんだけれど、実際に聞くとやっぱりリーンリーンだなと。
私、疑い深く、常識もない。時事も知らない。ニワトリがコケコッコーって鳴くって(いうことになってる)ことを知らなかった。実際のニワトリも見たことなかったし。犬がワンワンって鳴くって(いうことになってる)こともあまり知らなかった。犬は小さいときから飼ってたんだけど、それがワンワンと鳴いているとは全然思っていなかった。共通認識がたとえあったとしても、私は自分で探すんです。

本も体で感じて欲しいです。味も、音も。『雪子ちゃん』でも風をバーバーとかボーボーとか書いてる。

私のは、体を使って読む本ですね。


昔「童話屋」でアルバイトをしていた時に、今江祥智さんの『子どもの国からの挨拶』を読んで、懐かしい感じを持った。そうだ、私は、このこどもの国にいるはずなのに忘れていたって感じ。その頃たくさんの講演会にも参加して、講師の薦める本を買ったりした。
「童話屋」は、店員が人前で本を読んでいてもいいアルバイトだった。借りて帰ってもよく、夢のような読書環境だった。そのときにあの有名な「ファックス事件」があったんですよねと、広松さん。25年前、21、22のころでしたね。


※FAXを何度送っても紙がなくならないので、送れていないと思った江国さんが、20回ぐらい先方にFAXを流してしまい、クレームの電話がかかってきた、という伝説のエピソード。江国さんファンならば、ご存知の有名なお話を紹介。


でも私には「知らない強み」があって、一人旅でも怖くなかった。パリの地下鉄でジプシーの男の子に刃物を見せられても、その子があまりに小さかったので、怖くなかった。でもあとでみんなに、それは回りにもっと大きな子が何人もいるから危ないんだよと聞かされた。今なら怖くてひとり旅には出られない。
小説の懸賞賞金で旅に出たいというのがあって応募してましたね。はないちもんめのときは、佳作を2回とって、それから大賞をとった。賞品には旅行もついてたけれど、アメリカ留学中だったからいけなかった。結局、妹が行った。
23、24のころ、1年間、アメリカに留学した。そこで言葉がすきって改めて気付いた。英語もすきだったけれど、日本語も好きになった。母国語でないことばでコミュニケーションする楽しさがある。伝わったり、伝わらなかったり。
あるチューターに英語を教わっていたのだけれど、あまりに英語が分かるのでそのひとのことが好きになって、小説を書きたいということを初めて話したら、そのひとはアルバイトでチューターをやってて本業は弁護士だったんだけれど、自分もこんなにひとに教えるのが上手いなんて気づかなかったと言って、その後、弁護士をやめて外国人に英語を教える先生になっちゃった。私は当時、映画の字幕をつける人になりたかったんですね。

運命の出会いだったのですね、と広松さん。


広松さんは言う。「今回、江国さんから、すごいアイデアを思いついたってメールをもらったんです。それが雪だるまが野生なのって。これで長靴下のピッピみたいな世界を作れるかもしれないってことで」
私、雪が好きで、雪だるまにも親近感を持っている。雪だるまは生きにくそうだし、不器用そう。でも、なんだか同情を拒絶するというか、気高さを感じる。
夫には雪子ちゃんは私(江国さん)に似ていると言われた。でも夫は『雪子』を読んでないけど(爆笑)。山本容子さんの挿し絵が似ているらしい。(209ページの)寝ている雪子の手の様子が、寝ている江国の手に似ているという。くたんとなった感じが。
それで雪子ちゃんを執筆している頃、寝ているときに旦那になにかを話しかけられ「そんなの知ってる。私をだれだと思ってるの? 雪だるまの雪子ちゃんよ!」って言ったんだそうです。覚えてないけど。寝ているときに、主人公になりきっているのかも。それは、他の作品執筆中でもよく起こります。起きている時にはさすがにそうはなりませんが。


Part2につづきます音譜