向田邦子さんの大ファンです。
きっかけは、直木賞受賞作の短編集『思い出トランプ』を10年前に読んだことからです。
『阿修羅のごとく』もそうですが、どんなに幸福そうにみえる家庭でも、びっくり箱を開けてみるとどんどん埃が出てくるという話が多いです。最近思うのですが、誰だってどんな家だって問題だらけで、むしろ問題がないことの方が「異常」だと思えるようになりました。
私の好きな言葉は、「禍福は糾える縄のごとし」ですが、これはかつて向田さんが黒柳徹子さんに向かって「あなた、この言葉の意味わかる? うふふ」と意味深に問いかけたことがあるそうです。黒柳さんはその時まだ若く、「どんな意味なの?」と向田さんに聞き返したとか……。
向田さんの名短編を、柴門ふみさんが漫画化した文庫があります。
『花の名前 向田邦子漫画館』 新潮文庫
これはお薦めです。とにかく素晴らしくまとめてあります。
文庫を読むのが面倒な方には、絶対によろしいですよ
私が一番好きな短編は、「春が来た」です。
昔、NHKでドラマ化され、桃井かおりと松田優作が演じていました。
いいドラマですが、私はもちろんオンタイム世代ではないのでDVDを買いました。
暗く沈んだ一家の長女に彼氏が出来た。その彼が毎週一度家に遊びに来るようになったら、汚かった母親がおしゃれに活き活きと変わり、引きこもり気味だった妹も元気になり、家の中まで綺麗に変わっていく……。しかし、その結末は?
他にもたくさん好きなのですが、やはり「だらだら坂」ははずせない。
やっとのことで中小企業の社長になった主人公。愛人が出来た。
その愛人は、面接で自分が落とした醜い女……。
彼女のさえない細い目がどこかせつなくて好きだったが、容姿を気にしていた愛人は、ある日突然整形してしまう。
すると、男は意外なことに……。
いやぁ~、もう向田邦子は天才です。今生きていたら何歳でしょう。生きていて欲しかった!!
向田邦子の親友だった女優の加藤治子は、向田ドラマで本当にいい演技をします。
いわゆる「女の情念」を表現させたら、天下一品
彼女にファンレターを書いたら、昔(もう9年前でしょうか?)わざわざお返事を頂いたことがあります。
向田邦子作品は私達世代が死んでも、いつまでも残っていくだろうし、残って欲しいと願います