たいやきとおでんと銭湯と安アパートと‥遠い恋 | のすたる爺の電脳お遊戯。

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北国の港町に生息する莫迦親父な生き物が
日々の手遊びを時に駄文で綴り
また戯れ絵で遊ぶ、泡沫の如き代物。

遠い昭和の昔、住み暮らした東京

西巣鴨、滝ノ川の裏路地のような商店街に

夏はかき氷とか売ってたが冬は常設で

たい焼きと大判焼き売る店があって・・

 

隣の酒屋でビール買って持ち込めた

コインランドリーのような雰囲気の

コンクリ打ちっぱなしな土間風の場所に

木のベンチ並べてある待合場所で

夕方早く帰宅した帰り、食ってたたいやき。

 

 

粒あんが頭から尾っぽまでみっしり入った

持ち重りのするたい焼きと牛乳も旨かったが

其処の親父とおばちゃんの工夫なのか

あの頃には珍しくピザ用チーズと安いハム入れた

ハムチーというチープに異国な奴、旨かったんだよな。

 

・・餡子か?其れともハムチーにすっか?・・

・・せんぱぁいとおんなじのぉ、食べるぅ・・

 

餡子入り70円でハムチーちょい高価な80円

まだ消費税なんか欠片もない時代だったよ。

 

 

もう初冬の木枯らしが吹く東京の新下町・・

一歩間違うと貧民窟みたいな

アパートと平家がわしゃっと密集して

自転車すれ違うのもやっと、な

分かれ道の側道の角の店。

 

井戸端会議な近所のおばちゃんや

如何にも悪餓鬼そうな小学生に交じった

背丈じゃさほど餓鬼と変わらないちびデブ・・

 

焼きたてのたい焼き、ハムチー・・

チーズ溶けて熱くてふーふー冷ましながら

其れでも小動物のようにはむはむと

時折笑顔で無心に喰ってたちびデブは可愛かった。

 

 

歩き食い普通にやってた品のない学生の小生は

特売の缶ビールなど片手にプチ贅沢しつつ

・・良い頃合いだね、兄ちゃん、此れ喰うかい・・と

焼きをしくじったたい焼きからはみ出た尻尾

焼き鳥の串に刺した奴にソース掛けた謎食物を

時折親父から貰っちゃ本気で嬉しくて礼言って頭下げ

 

・・風呂帰りに寄ってきな、夜はおでん始めたからよ・・

 

と、妙に酒焼けした声で言われて照れたりしてた。

 

 

 

真横でちびデブが、あ、シャンプー買って~とか

たい焼き喰いながら普通に言い出すもんだから。

 

ひと串50円の妙に醤油の濃いおでんも好きだったな・・

効きの悪い練りからし、無茶苦茶添えて喰う黒い蒟蒻。

小さな石鹸はカタカタ成らなかったけど・・

近所の川は石神井川で神田川じゃ無かったけど・・

確かに、ああ、何も怖くなかった気がする、あのころ。