すべての問題の原因は、必ず過去にある(不明)
戦略をもってしても、成功が保証されるわけではない。しかしそれなくしては、失敗が確実である。(P.F.ドラッカー)
戦略とは何か
戦略とは、現在地と目的地を結ぶルートのこと。
Step.1 現在地を明らかにする
Step.2 目的地を明らかにする
Step.3 現在地と目的地を結びつける方法=戦略を考える
カーナビは「1.現在地の確認」をする。それからドライバーに「2.目的地の入力」をさせ、「3.最適ルートの検索」をする。ここではカーナビが戦略の立案をしている。しばらく運転をしていると工事中の場所があったり道を間違えたりして、はじめに計算されたルートから外れることがある。するとカーナビは即座にルートを再計算して、新しいルートをドライバーに提示してくれる。
この比喩から導かれる戦略の概念を理解するためのポイントは、
・現在地は常に変化している
・目的地は現在地ほど頻繁には変化しない
・戦略=ルートは、基本的に現在地の状況に応じて変化する
つまり、優れた戦略立案のためには、現在地の確認が鍵となる。
目的地は現在地に依存した不確定な未来であり、本質的に幅を持った存在である。自動車の比喩で考えると、現在地から辿り着ける目的地は、様々な制約条件(予算, 時間, ガソリン残量, 車道の整備・通行状況)によって、ほぼ決まってしまうことがわかる。すなわち、
・現在地は客観的な事実で出来ている
・目的地は現在地に依存し、かつ幅のある未来のことである
ということがわかる。目的地と戦略は単独で存在できるものではなく、いずれも「現在地」に依存している。この比喩をベースとしてさらに思考を深めると、
・目的地はイベントによって思いがけず変化することがある
・目的地によって、確認すべき現在地の内容や優先順位が変わる
・目的地によって、ルート=戦略を考える難しさは変化する
事もわかる。
戦略と人
戦略プロジェクトのメンバに必要な資質は、
1.現状維持を嫌い
2.大きな危機感を持ちながらも
3.希望を失わない態度
である。「我々は変わらなければならない」という点において同意出来ない人が、戦略プロジェクトの中心メンバになることは、致命的なミスである。
現在地を知る
・自社にできること
・顧客がもとめること
この2つが重なる領域がビジネス展開可能な領域。特に、
・自社にできるきこと
・顧客がもとめること
・競合にできないこと
この3つが重なる領域はスイートスポットと呼ばれる。スイートスポットには「顧客に対して、自社にしか提供出来ない価値」が含まれている。すなわち、ある種の独占状態を指し示している。
直観的にスイートスポットを考えるためには、「自分の会社とサービスがなくなった場合、困るのは誰で、それはなぜか?」という問い掛けについて考えればよい。
ウェブサービス業界で考えた場合、競合はGoogleやTwitterやFacebook、国内であれば楽天や食べログ、じゃらんや価格コムといった同業サービスだけが競合というわけではない。例えばテレビや新聞等の別媒体、小売店やコンビニエンスストアのようなリアル店舗なども「競合」と考えられる。
例:フェラーリの競合はトヨタやホンダではなく、小型飛行機やヨット…2件目の家や絵画、宝石などの「富裕層向け嗜好品」とも考えられる
スイートスポット=強みの扱いについては以下のフレームが参考になる。
1.スイートスポットの有効活用(攻めの戦略)
2.スイートスポットの維持(守りの戦略)
3.スイートスポットを広げる(成長の戦略)
目的地を設定する
糸井重里曰く、「詳しそうだったり、大事そうだったりする地図よりも、遠くの灯のほうが、人を力づけられるように、僕は思う」
出来る限り正確に未来を予測するための基本的な考え方は以下の3つが有名。
・なるべく近い未来を予測する
・未来を自らの手で作り出してしまう
・現状から、未来を予測する
ドラッカー曰く、「すでにそこに起こっている未来を探せ」。
孫子曰く、「敵味方の現状を比較分析し、それを軍議にかけ、十分な勝算があると判断されるときにのみ、戦争を実行せよ」
優れた目標は、まず第一に、そこにいる人々のモチベーションを有効に高めることができる。目標が曖昧な改善案ばかりで、どこにも高い目標が無い組織は「リーダーシップの無い組織」といえる。
背伸びをすれば届くような場所に適切にゴールを設定する事は勿論として、「成功と失敗が誰の目にも明らかになり、戦略の実務にゲーム性を持ちこむ」事が出来ればよい。そもそも、測定出来ないものは、正しく管理出来ない。正しく評価出来ない。
大局観を重要視し過ぎることなく、細部に気を配る。こと戦略に関しては、数字による細かい管理がどうしても必要である。
社会に対して(金儲けばかりではない)何らかの付加価値を提供し、その精神的対価を得るといった考え方はメンバのモチベーションを刺激する。
優れた目標の条件は、次の5つ。
1.リーダー自身が設定している
2.有期で到達可能(長くても2-3年内)
3.背伸びをすれば届く程度の難易度
4.測定可能
5.利他性のスパイス
ルートの選定=戦略立案
・前論
戦略立案に際しては、実行時に問題となる点を想定する事が重要である。また、「実行のし易さ」「実現可能性」「戦略がもたらすインパクト」等をチェックポイントとする。
生まれたばかりの「種」戦略は、多くの人々を巻き込み、実際のビジネス環境の変化と実行の中で新たに見つかった情報をフィードバックしながら頻繁に修正され、最終的に巨大な戦略プロジェクトとして精度をあげていく。
「種」戦略から生まれる戦略という旗は、フィードバックやアイデアが集まる中心軸になる。逆に言うと、戦略という旗がない組織では、フィードバックやアイデアがウェット情報としてどこかの誰かの心の中に保管されてしまい、大規模にシェアされる事がない。戦略という旗を求心力として、現場から貴重な情報を吸い上げる事が重要である。
なぜならば、現場には優れた戦略を立案するのに必要な情報と、立案されるべき戦略そのものまで落ちているからである。
戦略とは、コミュニケーションを活性化させるための道具とも言い換えられる。よって、戦略の立案を密室で行う事は、現代社会においては犯してはならないタブーであるといえる。関係者を充分に巻き込まないで立案した戦略は、それがいかに優れていたとしても、うまく実行出来ない。
・立案
戦略の立案においてもこのフレームが有効である。
1.スイートスポットの有効活用(攻めの戦略)
2.スイートスポットの維持(守りの戦略)
3.スイートスポットを広げる(成長の戦略)
攻めの戦略に関しては、強みを絶え間なくアップデートする事、すなわち新しい手を打ち続ける事が重要である。また、そのための方法論・組織論を構築する事が重要である。トップの地位につくということは、顧客の頭の中に消えないメッセージを刻む事でもある。例えば「日本で一番高い山は富士山だが、二番目に高い山は?」の問い掛けに答えられる人は、ほとんどいない。
守りの戦略に関しては、既存の顧客を大切にし、流出を防ぐ事が重要である。また、自社にしか出来ない事をコピーされないような手を考える事も重要である。模倣のための情報キャッチアップとその体制構築も重要である。
成長戦略に関しては、顧客自身がまだ気付いていない欲求を、顧客を注意深く観察する事で見つけ出す事が重要である。
優れた大戦略は、民主主義的な方法からは生まれない。異なる利害を仲良く平均化するような形でまとまった戦略は、少なからぬケースで最悪になる。そもそも、平均化するという発想は、差別化するという発想の対極である。将来に関する大戦略の立案においては、尖った少数意見を大切にする態度が求められる。
組織の構造が問題であることは意外と少なく、多くの問題は、そこで働く人間にこそ原因がある。臆せず、「活用」の視点で人を見る事が重要である。
・あたらしいアイデア
あたらしいアイデア、イノベーションは、トレードオフを解消する。高品質なものを低価格で提供する等、現在の矛盾を克服するためにこそ求められる。ブレイクスルーとは、それまでトレードオフだと思われていた事を、これまでになかった新しいアイデア一発で解消してしまう行為の事を意味する。
・戦略のキャッチコピー
戦略のエッセンスを、短くて覚えやすいフレーズにまとめて関係者の間で広く共有することで、戦略プロジェクトに関わる人から戦略に沿った公道を引き出す。ストラテジック・プリンシプル。「市場で1位または2位を占める。さもなければ撤退する」「グローバルニッチトップ」など。
戦略を成功させるために
・人を説得するための方法論
多くの人々を説得し、周囲を巻き込む事が、戦略実行の成功の鍵。説得する相手の考え方や価値観にあわせて、こちらの出方を変える必要がある。
「専制君主(コントローラ)タイプ」
・行動的で自分の思った通りに物事を進めることを好む。
・決断力がある半面、結論を急ぎ過ぎる面もある。
・他人に仕事を指示される事を最も嫌う。
・このタイプに対し、こちらが相手をコントロールするような素振りを見せるのはNG
・単刀直入に結論から話し、客観的なゴールを見せ、判断は任せるようにする
・コントローラからの反論には堂々と受けて立つ態度を示さないと、信頼を失う
・報告連絡相談を怠ってはならない。さもないと、強烈な敵になる可能性がある
「自由奔放(プロモータ)タイプ」
・他人からの注目を好み、周囲に影響を与えたいと考えている
・褒められる事を喜び、社交的、自発的でエネルギッシュ
・あきっぽく、どんぶり勘定
・プロジェクトにとっては、序盤戦で非常に強力な味方になってくれる事が多い
・一方、後半戦になってくると、すでに興味が他の案件に移っている事も多々
・ビジュアルイメージを駆使して壮大に夢を語り、プロジェクトがいかに注目されているかを強調する
・プロモータの話には、やや大げさにあいづちを二度打つくらいの態度で応える
「縁の下の力持ち(サポータ)タイプ」
・人間関係を重視し、争いを好まない
・周囲の人の気持ちに敏感で、気配りの人でもある
・自身が周囲の人から十分な関心を向けてもらっているかどうかにも敏感で、潜在的には他人からの感謝や注目を求めている
・こうした関心が足りないと反目することもある
・リスクを嫌い、計画や目標には興味が薄い
・他のメンバの多くがプロジェクトに賛同している事を示す
・完全に権限を委譲してしまうことは避け、常に協働する態度を示す
「求道者(アナライザ)タイプ」
・行動の前に多くの情報を集めて分析し、きちんと計画を立てる
・孤立を恐れず、人間関係の構築にも相手を慎重に選ぶ
・粘り強く、最後までやり遂げる堅実さがある
・一方で評論家タイプのようなマインドを持ち、当事者意識に欠けるケースも多々
・何か質問をしても「回答までに熟慮が必要」であるため時間がかかる
・戦略実行時に、新しい情報を見つけてきては戦略をより堅固なものに育ててくれる人でもあるため、プロジェクトには必須
・完璧主義者である事も多いため、夢を語っても無駄。ロジカルに戦略のポジティブ面とネガティブ面を伝え、事実と推測の前提条件をはっきりさせて、なるべく具体的なデータを示す
・組織トップのコミットメント
トップには戦略にコミットメントすることが正しいかどうか、常に迷いがある。よって、プロジェクトがトップのお墨付きである状態を確実にキープする事も重要。
- 臆病なトップの場合
「今の状況は○○です。これから□□するつもりです。」と簡素に報告だけをする。これで責任にグレーゾーンを作る事になり、臆病なトップとしても自分が口を挟みたいときにだけ口を挟めるようになる。
- 勇敢な(ワンマンな)トップの場合
実行すべき戦略や優れたアイデアは、とにかくトップ自らの口で発言させるようにする。トップの方向が大きく間違っていない限りは、あまり関わらず、粛々と自分の持ち場で仕事をした方が賢明。この手のトップは多忙にも関わらず全ての問題に絡みたがり、結果として抱える議題の数が増え、優先度の低い(現場にとっては優先度の高い)案件がこぼれてしまう。トップが仕事を抱え過ぎないように、権限委譲の誘導をする事が重要。
- 誰がトップかわからない場合
プロジェクトが大々的に社内で宣伝される前に、必ず出来る限り多数の有力者から、プロジェクトへの協力を「暗黙の了解」の形で取り付ける(=根回し)が求められる。
・情熱の伝染
「智に働けば角が立つ。情に棹せば流される。意地を通せば窮屈だ」
ただロジックで押すばかりでは人と衝突してしまいます。反対に、相手の立場や気持ちを考えすぎると、流されてしまいます。かといって意地を通そうとすれば、結果として孤立してしまい、目標はとても達成できません。この「ロジック」「相手の気持ちを考えること」「意地」はそれぞれ戦略実行のために欠かせないものですが、バランスを意識しすぎてもいけません。
ただ「熱い」だけの人では、「情熱の伝染」を生み出す事ができないことは、多くの人が経験を通して知っている。なぜか?
情熱のベースには正義感があることが多い。だけど、この正義感というのは曲者。正義の旗を高らかに掲げるということは、批判されない安全地帯で自分だけが目立つことにつながるから。往々にして、人間の正義感は「自らが十分に世間から認められていない」という不遇感を埋め合わせるために発露することがある。だからこそ、経験のある大人は、他人の掲げる「正義なるもの」に懐疑的になりがち。
つまりは自らの情熱を実際の行動や態度で示すことが必要。
・組織内にやさしい空気を作りだす
組織内にやさしい空気を作り出す。お互いの事を「実際に理解しているか」ではなく、「理解しようとしているか」が決定的に重要。笑う。柔らかさを取り入れる。真剣に聴く。
・その他のポイント
- 相手が100%間違っているように思えたとしても、相手は決してそうは思っていない。対立が生まれることは戦略実行における宿命だと受け止め、いかに相手側が厳しい態度を取ろうとも。こちらは反対派を決して遠ざけない態度を貫くことが鍵。
- アドバイスは最低限とする
- 非公式に朝のブリーフィングを行う
- 仕事の割り振りには手を挙げさせる
- プロジェクトの成果を政治的なツールとして使う
最も政治的に遠い立場にある人の手柄とする。等。