さて、どこから書けば良いのか。
結論から申し上げると、良問揃いで、問題を解き終わったあとでスタンディングオベーションしたくなるような感動を覚えた。
できた人には易しく、できなかった人には激ムズ。
今回の入試では合否を分けた教科になったでしょう。
数学で無難にこなせた人は合格にぐっと近づき、困惑した人は少し運がなかったかもしれない。
大問1 小問で2点×9問
ここは多くの生徒が満点を取るでしょう。
逆に今年はここを落とすとかなり苦しくなる。昨年の1次関数の変化の割合のような、これは心配だぞ?というものはなく、どれも無難な問題だった。
大問2 確率
歴史は繰り返すのか。ここで確率が来るのはかなり意外だった。
(1) 15/16 正答率も高そう。
(2)は問題の問われかたが普通と違っていた。
AさんBさんの順に玉を取り出し、
Aが白玉を取り出す確率とBが白玉を取り出す確率を比べるもの。
これまでであれば、ここで2パターンの樹形図を書き、それをもとにそれぞれの確率を明らかにして比較するというのが通例であった。
しかし今回は、A,Bの順に取り出すという、取り出し方が1パターンしかないので樹形図は一つで良いのだ。
樹形図を1パターン書いて、
そこからAが白を取り出す確率は3/4
Bは9/12=3/4
したがって白玉の出やすさに違いはない。
というのが正解。
書き方に困惑してパニクった、という生徒が多かった。
ここの4点は今回地味に効いてくるのではないか。
大問3 整数の性質(文字式を活用した証明)
これは整数の規則などを捉えて、それを文字を活用して明らかにする問題。
整数を文字をつかって表す、それを変形させて説明の根拠とする、という一連の流れにおいて、細かい力量差をすべて炙り出すように問題が丁寧に作り込まれていた。
たとえば文字をつかって式を動かしていき、
3n+3=3(n+1)となったとき、それが何を意味するのか。
真ん中の数の3倍になることの証明にもなるし、単純に3の倍数になるということの証明にもなる。
意味が分かっていないと、(1)から問題そのものを捉えられない。
(2)では文字式を計算させ、2n+2が出たところでそれが何を説明できるものか?を選ばせる。2(n+1)にできたところでそれって何?という本質的な問いを続けてくる。
(3)ではいつものことだが、ここできちんと「m」をつかって説明しているかの心配がよぎる。いつものクセで「n」でやっちゃってるんじゃないか?はありがちなミスだ。
もっとも小さい整数をmとして、真ん中の整数はm+1、もっとも大きい整数はm+2と表される。
真ん中の数の2乗から1をひいた数は、
(m+1)^2―1=m^2+2m+1―1
=m^2+2m
=m(m+2)
※もっとも小さい整数はm、もっとも大きい整数はm+2なので、m(m+2)はそれらの積を表しているため、証明の解答としてはここまでで良い。
これについても、その意味が分かっていないと
「mは整数だから・・・」などというズレた文言を入れてしまう危険性はある。
(4)は連続する整数を4つにしてみて、
もっとも小さい数と2番目に小さい数の和
→2a+1(整数aを用いた場合)
2番目に大きい数ともっとも大きい数の和
→2a+5
これらの積は4a^2+12a+5
これに「3」を加えると「4」でくくり出すことができ、4(a+1)(a+2)と表すことができる。
これらは数学において「文字」とはどんな役割を果たすのか?をしっかり理解していないと、もはや問題の意味すら分からないということになる。
そして、まさにそれこそが数学を苦手とする生徒の泣き所なのだ。苦手な人には辛い問題になった。
大問4 1次関数
秀逸だった(2)
a>400,b<24,c>20 の「意図」は何か。
それはすでに示されているA社のグラフと「形」を比べて判断しなさいということだ。
切片が400以上,
0<x<120の範囲内ではA社(0<x200)よりも傾きが小さく、
x>120の範囲ではA社(x>200)よりも傾きの大きな「形」を探せばよい。
これは関数のグラフの意味を問うもので、ここでも基本的な理解が必要になる。
ここは雰囲気で「イ」と選択するケースなので、大事故にはならないだろうが、問題としては良いと思う。
(3)は、大問4の締めとしては易しい問題で、ここで冷静さを取り戻した人は多いはず。
さあ、もう一度元気を取り戻せ!と側にいたら声をかけたいところだ。
大問5 平面図形
昨年に引き続き「円に内接する図形」ではないのか・・・と思いきや
地獄の(3)!!
ここでハマった人は多かろう。
おそらくだが、なんならこの「2点」をあっさり捨てて(4)で3点を取りにいったほうがむしろ与し易かったという人はいると思う。
しかし、何度も模試を繰り返して自分なりのリズムを持っている生徒であればあるほど、大問5(4)、大問6(3)を解こうとするアイデアは組み込まれていないので、人によっては証明の(2)から(3)、(4)と全部落としてしまうかも。
作問された方は、大問の締めを例年よりも易しくしたつもりだろうが、もはやそこまで到達できるメンタルではなく、ここはもっとも差がついた大問になったと思う。
大問6 空間図形
ここでようやく例年通りの問題が。
日頃から訓練し、満点を取りに行くだけの根拠を持っている数学の猛者たちならここは仕留めたと思う。
そうではない多くの生徒にとっては(2)を正解できたかが大きな分かれ目になる。が、普段の模試でもここは(1)だけ正解という人が結局一番多いので、良くも悪くも普段通りのデキだったはずである。
大問2(2),大問3の全部,大問5の全部,で、どの程度粘って一つ一つ拾えたかがポイント。
以上、全体的に本質的理解を問うものが多く、付け焼き刃での対応が難しい内容だったと思う。
3年になってからではなく、1年生の頃から一つ一つ丁寧に積み重ねているか、スキルや公式の暗記ではなく、その意味を理解しているか、という問題が多かった。
数学が好きな生徒には良いが、そうでない生徒ははっきり3年夏からでは間に合わない、そういう問題であった。
そして、内容を理解できている人にとっては計算が困難なものはなかったので、計算ミスも出にくく、大半の「難しかった~」という仲間たちの中で、むしろ「あれ?オレ結構できたけどな?」というケースがありそう。
平均点は30前後。さらに下回っていても全然不思議ではないが、今回は「平均」はあまり意味を持たない。
できた人は普段より解けたし、できなかった人はかなりやられたという二極化が起こっているのではないか。
ここで気持ちをリセットして、いつものように「入試は社会から」である。
ここから冷静さを取り戻せるかどうかが合格のために不可欠である。