
ここ数年「リスキリング」という言葉をよく耳にします。
その多くは、IT技術やプログラミング、AI活用を会得するための「学び直し」の必要性からくるものでしょう。
アンドリュー・スコット/リンダ・グラットン著の『LIFE SHIFT2』では、人生100年時代の行動戦略として、この学び直しについて強調していました。
60歳近くでの現役引退が通用していた時代から、人の平均寿命が伸びたことで人生100年時代を生き抜くためには、複数のスキルを会得する必要があるというものです。
なぜなら、20歳近くで社会に出ても、若手の頃には通用していた職業スキルが、40~50年も経てば世の中の技術進歩や市場の変化などによって通用しなくなってしまうことが多いと考えられるからです。
この先10~20年ほど先を見据えても、自動運転技術の進化による長距離トラックドライバーや鉄道運転手の仕事は減少していくことでしょう。
また、佐原が勤務していたような金融機関での融資審査では、15年以上も前から部分的にではありますがシステムによる手助けの割合が増えています。
こうした技術進歩やAI、ロボットの普及により、従来は通用していた人間のスキルや技能が仕事として成り立たなくなってしまうというものです。
それは、あたかも海水面(AIやロボットなどの技術レベル)が次第に高くなり、水面近くに住んでいた人(代替されやすい職業)から水没していくイメージです。
そのためには、標高の高い所(技術進歩に代替されない職業スキル)を目指して自分をより高みに押し上げるための努力、つまりリスキリングが必要だというわけです。
しかし、だからといってICTやAI、プログラミングといった技術を画一的に皆が会得していっても大丈夫なのだろうか?と私は思うのです。
なぜなら、その分野には、元々のシステムエンジニアやプログラミングを得意とし、長年その業務で食っているプロフェッショナルな人達が居るからです。
その人達だって、日進月歩のAI技術には必死で食いついていっているはずです。
そんなプロフェッショナルな分野に、皆がヨチヨチ歩きで今からついて行けるものでしょうか。勿論、何もしないよりは随分良いとは思いますが。
こんなことを私も、ここ5年以上考えていました。
将来残る仕事は何だろうか? AIやロボットなどに代替されない仕事は何があるだろうか? と。
それを考えたときに「職人の仕事」が良いのではないかと思ったのです。
例えば、上下水道の配管工事や電気工事、大工といった職人です。
社会のインフラを支えるために、なくてはならない仕事です。
相応の高い知識と経験が必要です。
でも次世代を担う若手の成り手が少ない職業です。
それは、社会的地位や賃金などの処遇面でどうしても見劣りしてしまうからでしょう。
また、3K職場であることも少なくありません。
でも、ちょっとした大工仕事を隣で見ているときや、電気工事職人が手際よく配線工事や電気工事をしている姿を見ていると、それは自分にはとても格好良く見えるのです。
手際の良さだけでなく、その仕上げの綺麗さなどはまさしく職人技です。
こうした職人的仕事は、もっと社会に認められて良いのではと以前から感じています。
必要とされる職業なのに、人手が足りていない。
供給量を上回る需要があるのに、賃金などの単価が上がっていかない。
自分は、職人たちの仕事をもっと高みに上げていきたい、そう思うようになって5年ほどが経ちます。
「いっそ、自分も職人的仕事を手掛けてみようか。」そんなことを考えてみたことも、山仕事や木こりの仕事をしたいと思ったきっかけの一つなのです。