2025年12月16日付のFNNプライムオンラインが、
『現場に燃えたタオル…扉のドアノブ外れ閉じ込め?個室サウナ火災で男女死亡 非常ボタン押された形跡も作動不明 東京・赤坂』
と題した記事を報じていました。
以前、仕事で、倉庫のような部屋に仕事先の方数人と入室した後に、ドアノブが壊れ、スマホで連絡して、外から開けてもらった経験があります。
この時は、ドアノブが壊れて自力では出られなくなった際に、外の人に連絡すれば、部屋から出られるだろう、という感覚があり「絶望感」は全くなかったですが、今回の被害者のように、初訪問したサウナで、火災時にこのようなことが起きたら、パニックに陥るだろう、と思います。
以下に、この記事を要約し、サウナ運営会社の問題点とこのような状況における私たち利用者のリスク管理について、考察しました。
《記事の要約》
東京・港区赤坂の個室サウナで、利用中の男女2人が死亡した火災事故について、新たな事実が明らかになった。
2025年12月15日正午過ぎ、赤坂の個室サウナで火災が発生し、サウナ室内の座席や壁が焼損。利用していた30代の男女が死亡した。
捜査関係者によると、2人が発見された際、サウナ室の出入り口に設置された扉のドアノブが、内側・外側ともに外れていたことが判明した。
サウナ室の中から扉を開けることができず、2人が室内に閉じ込められた可能性があるという。
サウナ室内には非常用ボタンが設置されており、押された形跡が確認されているが、実際に作動していたかは分かっていない。
現場には燃えたタオルも残されており、警視庁は16日、現場検証を実施。
出火原因や死亡との関連について詳しく調べている。
2人はサウナ室の出入り口付近で倒れており、女性の上に男性が折り重なるような状態だった。
肩や背中などにやけどの痕はあったものの、致命的な熱傷ではなかったとみられており、一酸化炭素中毒などの可能性も含めて捜査が続いている。
（要約、ここまで）
《筆者の考察》
今回の個室サウナ火災は、単なる「不運な事故」として片付けてはならない事案である。
報道や各意見から浮かび上がるのは、サウナ運営会社における安全設計と設備管理、そして緊急時対応体制の重大な欠陥だ。
第一に問題となるのは、密閉空間であるサウナ室において「内側から確実に脱出できる構造」が担保されていなかった可能性である。
高温・低酸素環境では判断力や身体能力が急激に低下する。ドアノブが外れる、力を要する開閉構造であるといった設計は、それ自体が致命的なリスクとなる。
過酷環境を想定した施設では「万一、通常の操作ができなくても脱出できる構造」が当然の前提とされている。
第二に、非常用ボタンの信頼性と、それを起点とした人的対応体制である。
非常ボタンが押されても作動しない、あるいは作動してもスタッフが即応できないのであれば、安全装置は形骸化しているに等しい。
ISO思考で言えば、これは「単点故障を許容する設計」であり、リスクアセスメントが機能していなかった可能性が高い。
第三に、設備点検と日常管理の問題だ。
ドアノブの緩みや非常装置の不具合は、突発的に起きるものではなく、兆候があった可能性が高い。
定期点検、記録、是正措置という基本的なマネジメントサイクルが適切に回っていたのかが問われる。
一方、利用者側にもリスク管理の視点は必要だ。個室サウナを利用する際には、入室前に「非常ボタンの位置」「扉の開閉方法」「異常時の通報手段」を必ず確認したい。
室内に可燃物を持ち込まない、異臭や異常な熱を感じたら即座に退出するなど、自己防衛行動も重要である。
しかし、今回の事案では、利用者の注意だけで回避できたとは考えにくい。
安全は「特別感」や「高級感」よりも優先されるべき基本条件であり、運営側には徹底した設計思想と管理体制の見直しが強く求められる。
これはまさに「ISOの復権」が問われる事故と言えるだろう。
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