砂利採取業の 環境パフォーマンス とは、採取計画の立案から掘削・運搬・原位置復元に至る一連の事業活動が、地形・水質・大気・生態系・地域社会 に与える影響を、あらかじめ定めた環境方針・目標に照らしてどの程度低減・管理できているかを示す総合指標である。ISO 14001では、
1)事業特有の環境側面(粉じん、騒音、水濁度など)を網羅的に洗い出す
2)影響度・発生頻度・管理可能性から「著しい環境側面」を特定する
3)KPI(例:PM10濃度、濁度NTU、騒音dB、植生復元率など)を設定し、PDCAで継続的に改善する
ことが要求される。
《環境パフォーマンスの具体例と取組み方》
以下に、砂利採取業に特有の著しい環境側面の具体例と、それに対する実践的・制度的に正当な取組み方を示します。
1)景観・地形改変および土砂流出
(1)採取を小区画に分割し“掘りながら戻す”順次原位置復元方式を採用
(2)法面は1:2〜1:3で整形し、早生樹+在来草本で緑化
(3)雨水排水溝・沈砂池を設置し、降雨時の濁水を捕捉。
2)粉じん飛散(PM10/PM2.5)
(1)クラッシャ・ベルトコンベヤにミスト噴霧ノズルを装備し85 %捕集
(2)未舗装走行路は再生アスファルトで簡易舗装+散水車
(3)出入口にタイヤ洗浄機を設置し、公道への土砂付着ゼロ化。
3)騒音・振動(重機・発破)
(1)低騒音型バックホウ・ローダを導入(85 dB→78 dB)
(2)発破は非電気式マルチデトネータで装薬量を最適化し、振動規制値(計画震度70 dB)を遵守
(3)敷地境界に防音土堤/大型コンテナ壁を配置。
4)水質濁度・地下水位への影響
(1)河川採取では川表側に遮水土堤を築き、採取区画を隔離
(2)ポンプ取水せず自然流入方式とし、水位低下を抑制
(3)取水・放水口で月2回濁度計測し、20 NTU以下を維持。
5)生物多様性への影響
(1)繁殖期(4〜6月)は採取停止、夜間照明も禁止
(2)希少植物は事前調査で移植、湿地を残置しエコトーンを形成
(3)年2回、魚類・底生動物モニタリング結果をWeb公開。
6)重機燃料使用・温室効果ガス排出
(1)電動ショベル+ハイブリッドダンプを順次導入、燃料原単位をt-CO₂/t砂利で管理
(2)アイドリングストップとテレマティクスで運転効率を評価し、燃料5〜7 %削減
(3)場内事務所は太陽光+蓄電池で自家消費化。
<モニタリング・評価・利害関係者対応>
1)測定計画
粉じんは境界3点でリアルタイム測定、水質は取水・排水口で化学的酸素要求量(COD)を月次分析。
2)内部監査
年1回、法令(砕石採取法、騒音規制法、水質汚濁防止法)と目標進捗をチェック。
3)外部コミュニケーション
住民説明会を半期ごとに開催し、苦情受付窓口をISO 14001「緊急事態手順」に統合。
<まとめ>
砂利採取業は社会インフラを支える一方、自然改変リスクが大きい。
したがって、「採る⇔戻す」、「測る⇔示す」、「減らす⇔知らせる」 の三層で環境パフォーマンスを高めることが不可欠である。
ISO 14001を活用し、定量KPIと地域対話を両輪にPDCAを回すことで、事業者は資源供給と環境保全、住民信頼の三方良しを実現できるのです。
(※ 自分を変える“気づき”ロジカル・シンキングのススメ メルマガ965号より)
 
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