容疑者Xの献身。 | ★One Chance★

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死にぞこないの、人生ボロボロだった男が前向きに生きている。
思ったことを書き連ねていこうと思う。良いことも悪いことも。

 

東野圭吾さんの作品が大好きで、特にドラマも含めてガリレオシリーズに嵌ったんだけれども、

その中でも特に印象に残っているのが「容疑者Xの献身」かな。映画もとても良かった。

スカパーで再放送をやっていたのを録画していたから、仕事が終わって終電で家に帰ってきてから

久しぶりに観た。

 

湯川先生の大学時代の同級生である天才数学者「石神哲哉」がもう1人の主人公になってる作品。

物語は「石神がどんな犠牲を払ってでも守りたかったもの」を軸に展開されていく。

数学の世界でいう「証明」を殺人という舞台で発揮していくから、トリックの考え方が斬新過ぎて、

答えを知った時に「確かにそれは絶対に証明できない」という納得感が半端なく素晴らしい。

物理学者 vs 数学者の直接対決の要素もすごいが、そこに人間臭いドラマを仕掛けてるからね。

3人目の主人公である花岡靖子との不器用過ぎる関わり方・・・・。

四色問題の「隣同士が同じ色になってはいけない」というのは、石神と花岡靖子のことだったんだと

気づいた時は衝撃を覚えて、ものすごく濃い内容の作品なんだなぁ・・・って思った。

 

湯川先生は長身でイケメン、頭が良くてスポーツ万能、若くして帝大の准教授で、女性にモテモテ。

完璧な湯川と比べ、石神は恋愛経験に乏しく、モテない、口下手で感情表現も下手・・・・・

本当は帝大に残って数学の研究を続けたかったのに、家庭の事情で叶わず、高校教師となって、

独学で研究を続けている努力家。だけど教え子になめられている高校教師という評価・・・・

白髪交じりで常に下を向いて歩いているような人。

2人とも天才的な頭脳を持っているのに、露骨に差が出てしまうのが不平等な世の中というものだけど、

個人的には石神のほうが湯川よりも感情移入しやすい。

不器用に人を愛する石神はとっても人間臭くて、視聴者に親近感を抱かせているような気がする。

 

石神はなぜ、ここまで花岡靖子と娘の美里を愛せたのか?

本を読んだ時、映画を観た時には、僕自身もいまいち答えが分からず、花岡靖子って相当な美人で、

石神にとってドストライクゾーンに嵌り、一方的に片思いをしたんだろうなぁと思っていた。

 

久しぶりに映画を観たけれど、今の僕なら、なんとなく分かったような気がした。少し境遇が似てるから。

 

石神は過去に自殺未遂をしている。自分の人生に絶望し全てを投げ出そうとして、アパートの自室で

自殺準備をしているところ、隣部屋に引っ越してきた花岡靖子と美里が挨拶にやってくるシーンがある。

2人と挨拶をかわし、窓を開けると隣の部屋から2人の笑い声が聞こえてくる毎日が始まり、

街中で会えば、明るい声で話しかけてもらって、挨拶程度の会話が出来る。

たったそれだけのことなんだけど、孤独な石神にとっては、2人の存在が生きる希望になったんだろうと。

映画の最後で内海刑事が放った「石神は花岡靖子に生かされていた」という言葉が全てを物語るよね。

 

僕にも辛い過去がある。4年前の冬、自殺を本気で考え未遂に終わっている。

4年前の夏、婚約解消をして両親とも元婚約者とも距離を置き、仕事以外の時間はボーっとしていた時、

「僕の人生って・・・」と考えてしまい、ギリギリ生きてはいたけど、顔を上げ前を向ける状態じゃなかった。

それでも責務は果たさなきゃいけない!と思って、仕事だけは全力投資した。かなり無理をしてね。

当然、身体はどんどん辛くなっていくし、状況は悪くなっていく。もう這い上がれないな・・・そう思った。

12月、北海道に出張に行く機会があって、支笏湖近くの山で首を吊る準備をして飛行機に乗った。

色々考えたんだけど、なるべく他人に迷惑をかけないで、少し想い出がある場所で死のうと思ったから。

仕事を終え、夜タクシーで近くのスーパーまで行き、山に向かって歩いた時は涙が止まらなかった。

ロープを準備し、いざ首を吊ろうとしたけど、想像を絶する苦しさに思わず暴れてしまい地面に落ちた。

本当に苦しかった・・・・。

首には痣みたいな傷が出来てしまい、首まで隠せる服を着て、帰りの飛行機に乗ったのは忘れない。

極寒の中、1時間その場で泣きながらどうするか?を考えたけど、僕にはもう死ぬ勇気はなかった。

 

出張から家に帰り、死ねないから生きるしかない。もう多くは望まないからなるべく穏やかに過ごそう。

病気か何かになって死んでしまうのなら、それはむしろ望ましいなぁ・・・なんて、酷いことを考えていた。

 

普通に過ごしていたけど、日を追うごとに張り合いがなくなり、毎日崖から滑落するような感じが続く。

そんな状態の中で転勤を経験し、更に追い込まれてしまい「もうどうでもいいや・・・」となっていたところに

今の自分が本気で好きになった人と出会った。

話しかけるのに9ヶ月もかかってしまったけど、石神と同様、少しずつ毎日が明るくなる感覚があった。

もうダメだ・・・と思っていたのが、徐々にまた前向きに生きていこうと変化し始める。

生まれて初めて「俺・・この人を幸せにしたい」

思ったのも、石神と同じだったからかもしれない。

絶望してた時にその存在に救われ「何があっても守り抜きたいなぁ・・・」と強く思うようになったから。

 

何だかカッコつけてあれこれ書いたけれど、今の自分はしっかりと顔を上げて前を向いて生きている。

人間万事塞翁が馬だとはよく言うよね。

今の自分があるのは間違いなく好きだった人のおかげ。

僕はきっと感謝し続け、幸せを願い続けるだろう。

例え「隣同士で同じ色にはなれない」結末だったとしても、友人の1人として、ずっと応援していたい。