『パニック・イン・テキサスタワー』 | 銀幕と緑のピッチとインクの匂い

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映画は洋画、それも古い映画が大好き。本は外国文学。ドラマは洋物。サッカーは海外チームと代表の応援、という思いっきり偏った嗜好で、天の邪鬼に感想を語ります。但し、脱線話題多し。

 

 

THE DEADLY TOWER/SNIPER

カラー 95分 テレビムービー

監督 ジェリー・ジェームソン

出演 カート・ラッセル ジョン・フォーサイス リチャード・イニグェス ネッド・ビーティ パーネル・ロバーツ クリフトン・ジェームス ポール・カー

 

1966年8月1日夜明け。テキサス州オースティン、テキサス大学の鐘楼の上から、ひとりの青年(カート・ラッセル)が、無差別に銃を乱射し始めた。犯人の名はチャールズ・ホイットマン。25歳。元海兵隊員……。

 

 

ホイットマンは、前夜に妻と母を刺殺したのち、沢山の銃器を持って、テキサス大学の鐘楼に登りました。見晴らしは最高。先生も生徒たちも、何も知らずに沢山歩いています。ホイットマンは、粛々と銃に弾を装填し始めます。そして、無差別に人を撃ち始めるのです。これが、有名なテキサスタワー乱射事件で、この作品は、この事件を忠実に再現したものです。ホイットマンは、元海兵隊員ですから、銃の扱いはお手の物です。弾がなくなったら、また次の銃に弾を装填して、黙々と人を撃ち続けます。何も言わず、それ以外のことにはまったく興味を持たず……。彼が、なぜこのような凶行に及んでいるのか、見ているほうは全くわかりません。次々と撃たれていく被害者を、ただ悲しみをもって見つめるしかありません。結果、30数人が撃たれ、16人が死亡しました。

 

勿論、警察はすぐに現場に到達しますが、大学の鐘楼ということで、犯人に近寄れません。若い警官が勇気を持って、犯人に近寄ろうとしますが、それもなかなか出来ません。その警官に協力する、大学内の本屋の店主ネッド・ビーティがいい味を出していて、思いっきり怖がりながらも最後までついていきます。

 

犯人を演じたのは、無名だった時のカート・ラッセル。とは言っても、カート・ラッセルは、子役出身なので、子役が長じて大人の役を演じるようになった、といったところでしょうか。ラッセルのセリフがあったかどうか、記憶にないほど、本当に淡々とただ撃ち続けます。なんでこんな酷いことをするんだか、すぐに止めてほしいのに、犯人は止める気はありません。

 

全編を通して、緊張感が半端ではありません。当然です。次は誰が撃たれるかわからないからです。ただ、普通に歩いているだけで、上から撃ち殺されたのではたまったものではありません。でも、この映画は、そういった場面を、比較的静かに描いています。過度な演出を省いたところがとても良いと思います。

 

それから、集まってきたのが、警察だけではなく、銃を持った一般人も沢山、というところが、ちょっと笑えてきました。ライフルを持った一般人が、犯人を狙って撃ち合いをするんです。それも、何人もの人が。これは、さすがテキサス、としか良いようがないですね。

 

TV映画ですが、一生に一度は見ておきたい傑作だと思います。

 

トレイラーです。