眼には眼を [レンタル落ち]/作者不明
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OEIL POUR OEIL

1957年フランス・イタリア映画 カラー 108分

監督 アンドレ・カイヤット

出演 クルト・ユルゲンス フォルコ・ルリ パスカル・オードレ レア・パドヴァニ ポール・フランクール


 

中東の地の病院で医師を務めるドクター・バルテル(クルト・ユルゲンス)は、仕事を終え、深夜に家で眠ろうとしているところに、ある夫婦から診察を頼まれる。妻が腹痛だというのだ。もう寝るところだと診察を断り、20分で病院に着くから、と教える。しかし、翌朝、その車が途中で壊れて見つかる。昨夜、その妻を診断した医師は、誤診で彼女を死なせてしまったと言う。その夜から、バルテルの家に、何度も無言電話がかかり、遂にバルテルは病院で寝るまでになる。あの壊れていた車も、バルテルの視界に長いこと置かれている。ある夜、バーで飲んでいて、酒を忘れたバルテルは、ボルタク(フォルコ・ルリ)という見知らぬ男に、代金を払ってもらう。バルテルは、翌日お金を返しに、ボルタクの元へ向かうが、どうしても彼に会えない。夜に、ボルタクがある村に向かおうとしているという情報を得たバルテルは、ボルタクを追うが……。



 

初めて見たのは、いくつの時だったでしょうか。感想は一言。怖い!とにかく怖い!!ホラー映画もオカルト映画も、怖くて私は見られませんが、そういう映画より、絶対にこの映画の方が怖いと思います。ビジュアル的にも、その辺のお化けよりずっと怖いです。


 

家での診察を断ったがために、ストーカーをされる医師バルテル。医師として、深夜でも診るべきだったのでしょうか。もし、診たとしても、設備のない家で、どうにかなったものなのでしょうか。病院までは、車で20分。設備の整った病院に行け、と言うのは仕方がないことのように思います。まあ、彼がもっと親切なら、同乗して病院に向かったことでしょうし、彼なら誤診もなかったとは思います。ただ、彼も過重労働をしているようで、休みが必要なのも確か。この問題に、私は答えは出せませんでした。もし、あの町に救急車があれば、それが一番良かったのに。


 

後は、ヒッチコックで言う巻き込まれ方のスリラーです。でも、ヒッチコックより、もっと、ずっと、怖いです。クルト・ユルゲンスは、ナチスの将校役が多い俳優で、屈強で強面です。ちょっとやそこらでは負けない印象があります。そして、この映画でも、負けません。対するフォルコ・ルリは、優しそうな人で、ドクターに尊敬の念を持っているように見えます。このふたり、どうなるのでしょう……。


 

もう一度言います!本当に怖い映画というのは、こういう映画のことを言うのだと言います。異国で、言葉がまるで通じないということの恐怖も、ひしひしと感じます。異人種、や異なる宗教の問題も、思いっきり考えさせられます。この作品が作られたのは、50年代後半で、中東やアフリカがヨーロッパの国から独立していった時代であり、それなりの諍いもあったかもしれません。ところが、21世紀に入ってグローバル化の時代などと言われながらも、私たちが暮らす世界で、異文化を受け入れることは未だに難しいことです。各地で相次ぐテロがそれを物語っています。


 

生きているうちに、是非この映画をご覧ください。名匠アンドレ・カイヤットの傑作中の傑作です。これを見ずには、死ねません。


 

トレイラーがないので、映画のワンシーンです。ここも、怖いです。