『きっと星のせいじゃない。』 | 銀幕と緑のピッチとインクの匂い

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映画は洋画、それも古い映画が大好き。本は外国文学。ドラマは洋物。サッカーは海外チームと代表の応援、という思いっきり偏った嗜好で、天の邪鬼に感想を語ります。但し、脱線話題多し。

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THE FAULT IN OUR STARS
2014年アメリカ映画 カラー 20世紀フォックス
監督 ジョシュ・ブーン
出演 シェイリーン・ウッドリー アンセル・エルゴート ローラ・ダーン サム・トラメル ナット・ウルフ ウィレム・デフォー



 ヘイぜル・グレイス(シェイリーン・ウッドリー)は、がんのために、肺機能が低下して、酸素ボンベを常に携帯している生活だった。病気のために学校にも通えない。そのために、友人もいなかった。父マイケル(サム・トラメル)や、母のフラニー(ローラ・ダーン)は、ヘイゼルにがん患者の会に出席するように勧める。気が進まないまま出席したヘイゼルは、そこで1つ年上で18歳のオーガスタス(アンセル・エルゴート)に出会う。骨肉腫のために、片足を切断したオーガスタスだったが、ふたりはあっという間に意気投合する。ヘイゼルの愛読書『大いなる痛み』を借りたオーガスタスも、その本にのめり込み、本が途中で終わっていることにふたりで大きな疑問を抱く。その作家、アムステルダム在住のピーター・ヴァン・ホーテンに会って、続きを聞いてみたい、というのが二人の大きな夢になるのだが……。



 がん患者の会と聞くだけで辛いのに、それがティーンエイジャー。様々な場所に爆弾を抱えた者たちが、ひとりじゃないと知るために集まってくる場所で、主人公のヘイゼルは、オーガスタスに出会います。今まで、こういう場所を嫌っていたヘイゼル。でも、運命は彼女が苦手にしていたその場所で、共に闘う相手を与えてくれました。

 いわゆる難病もので、それも元気いっぱいのティーンエイジャーたち。実際に、病気が落ち着いている時の彼らは、ティーンエイジャーそのもので、音楽も聞けば、お洒落もする。ガールフレンドやボーイフレンドのことで悩みもするのです。学校には行けないけれど、同じ病気の友達を持ったことで、ヘイゼルの毎日は急に開けたものになっていきます。やがてオーガスタスの存在は、なくてはならないものになっていくのです。

 ヘイゼルは、大好きな『大いなる痛み』を書いた作家ピーター・ヴァン・ホーテンのことを、「死んでいないのに死を理解している作家」と称します。しかし、そんな彼の書いた本は、途中で唐突に終わってしまっています。ヘイゼルは、その続きを知りたくて仕方ないのです。それはもう、ファンというよりストーカー並の執着とさえ言えます。ヘイゼルの残された命は少ないからこそ、続きが出るのを待っていられないのかもしれない、とも思いました。

 あちらもこちらもがんの患者ばかりで、湿っぽい話になるところを、この映画は極力さらっと描こうとしています。

 小津安二郎映画風にシーン展開すると、「私、死ぬんです」「そうか、死ぬのか」「ええ、死ぬんです」「そうか、死ぬのか」といった感じ。

 どんなにかその運命に抗ったであろう彼らは、いつの間にか達観してしまっているのですね。

 そして、親たち。ヘイゼルの両親、特に母親役のローラ・ダーンが良いです。ちょっと老けたなあと思いましたが、お風呂に入っていても、ヘイゼルの部屋に飛んできてしまうシーンで、ああ、この人はお風呂に入っている間も、娘に何もないか心配し続けているのだなあ、と思い、胸が詰まってしまいました。

 
 いつかは、皆死んでいきます。それを避けるべきこととしてではなく、正面から向かい合って描いていくあたりが、なかなか評価できる映画だと思います。



トレイラーです。