『スタンド・バイ・ミー』 | 銀幕と緑のピッチとインクの匂い

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映画は洋画、それも古い映画が大好き。本は外国文学。ドラマは洋物。サッカーは海外チームと代表の応援、という思いっきり偏った嗜好で、天の邪鬼に感想を語ります。但し、脱線話題多し。

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スタンド・バイ・ミー   STAND BY ME   1986年アメリカ映画  カラー  89分


監督 ロブ・ライナー
出演 ウィル・ウィートン リバー・フェニックス コリー・フェルドマン ジェリー・オコンネル



小さな田舎町に住むゴーディ、クリス、テディ、ヴァーンの4人は大の親友。ある日、行方不明になった少年の死体を見つけるために、4人揃って旅に出る。その小さな旅の途上、彼らはそれぞれが抱える悩みや問題を吐露しながら、支え合い成長していく。少年時代の夏の日の甘酸っぱい友情の思い出をノスタルジックに描く。



思い出すのはベン・E・キングのあのメロディ。「♪ダーリン、ダーリン、スタンド・バイ・ミー~」。この曲を始め「ロリポップ」など懐かしのアメリカンポピュラーに彩られて描かれるあの夏の少年時代のお話です。

原作はご存じスティーヴン・キング。今回はホラー的な要素はなく(死体を見に行くというのはまあホラーですが)、「12歳の時のような友人は2度と持てない」をキャッチフレーズに、誰もが通ってきた子供時代をノスタルジックに描いています。


少年たちは四人四様。リーダー格のクリスは、どこか陰がある大人びた少年です。兄が問題児であることもあって、弟である彼も世の中から良くは見られない。彼自身はまっすぐな心の持ち主なのですが、世の中は認めてくれない。それでもすっくと背を伸ばして傷つきながらも進んでいく様子が痛ましく切ないです。


ゴーディは姿形も性格も繊細で華奢な少年。4人の中では一番真面目で大人受けも良い少年ですが、彼の心の傷は亡くなった兄のこと。一家のホープであり、ゴーディ自身も大好きだった兄は若くして亡くなり、それ以来家の中も灯が消えたようで、ゴーディは表面は明るく振る舞うものの時にその重苦しさに耐えられなくなるのです。


テディは今で言う切れやすい少年NO.1でしょうか。戦争に行った父を英雄視していて過激な行動が目立つ少年です。でも、息子にとっての英雄である父は世間ではつまはじき者。それを認めようとせず、あくまで突っ張る様子が、何とも痛ましい。


ヴァーンは多分一番この中では恵まれている少年なのでしょう。食いしん坊でみんなを笑わせてくれる、唯一ホッとさせてくれる存在です。


短い旅の間に、列車に追っかけられる大冒険をしたり、犬に追っかけられたり・・・。そして静まった夜半に今までの悩みを吐露する打ち明け話。子供ながら精一杯気丈に生きてきた彼らの涙には、胸が詰まりました。12歳というその頃、小さな事が大きな事で、自分の周りの小宇宙が凡てだった。小さな見栄が大問題で、一緒に遊び、悩み、打ち明け話をした友人が凡てだった・・・。そんな遙けき昔を思い出さずにはいられない佳作です。


リバー・フェニックス。傷つきやすい少年を演じさせたら一流だった彼は、この映画で一躍スターに躍り出て、その後も活躍を続け将来を嘱望されたのに、ある日呆気なく散りました。亡くなり方は全然違ってはいたけれど、この映画のクリスを彷彿とさせる何かがありました。

ウィル・ウィートン。「ロングウェイ・ホーム」など、やはり繊細で幼くして人生を背負った役の多かった彼。もう少し大きくなって「スター・トレック ネクストジェネレーション」として「エンタープライズ」に乗り込み、宇宙に出ていきました。

コリー・フェルドマン。この頃「グーニーズ」その他で売れっ子だった彼。役柄と同じようにどこか危うさを持っていて、確かちょっと躓いたこともあったと記憶しています。あまり見ることはなくなりましたが、今も役者活動を続けているようです。

ジェリー・オコンネル。ちょっと太めだった彼も、すっかり大人になって結構ハンサムになり、「スクリーム」や「ミッション・トゥ・マーズ」などに出演。レベッカ・ローミンと結婚しました。


彼若かりし頃のジョン・キューザックやキーファー・サザーランドも出ています。彼らの活躍はご存じの通り。


恐らく彼らにとってのあの頃も、遠い昔のことになってしまったのでしょう。ただ一人、リバーだけが、少年の頃の気持ちを持ったまま、20代前半で人生の歩みを止めてしまいました。リバーの名を聞くとき、思い出すのは不器用にしか生きられなかったこのクリスの姿。あの一夏の姿なのです。



trailerです。