テクニシャンの導入について、「無資格調剤」という問題から考えられる様になりました。
各団体や経営者からテクニシャンについての見解が出されていますが、少し疑問に感じる部分がありましたので、取り上げてみることにしました。
もちろん色々な国があり、その国の制度に合わせたやり方があると思うが、私が昨年みてきたイギリスの制度といま議論で上がっているテクニシャン論は少し違う。
「テクニシャン」
この言葉を聞いて、ピッキングなどを行う「調剤アシスタント」のようなイメージを持っている方が多いのではないでしょうか。
そもそも、諸外国では別の議論でも上がっている「箱出し調剤」が主であるので、ヒートからだし「○○を何錠」というような日本の調剤スタイルとは異なる。
また、分包という概念も近年でこそちらほらと見受けられるが、日本のように主流ではない。
イギリスの例を取って薬剤師とテクニシャン、そしてアシスタントの役割の違いを見てみたいと思う。
【薬剤師】
・処方
・クリニカルガバナンス
・臨床ガイドラインの作成
・病棟回診
・教育訓練
・処方経済効果の見直し
・各種クリニックの運営
・医薬品情報サービス
【テクニシャン】
・定められたガイドラインの範囲内での臨床業務
・医薬品の購買
・医薬品の供給、調剤全般
・患者への服薬指導
・持参薬の確認
【アシスタント】
・入院患者への医薬品供給(テクニシャンの監督下にて)
・病棟、手術室などへの医薬品供給
・調剤、無菌操作補助
上記のように役割分担されています。
注目して頂きたいのが、【テクニシャン】の色付けした部分ですが、イギリスにおけるテクニシャンの役割の概念の中には、「服薬指導」「持参薬の確認」が含まれています。
もちろん、調剤する事も業務に入っています。
これは全てではありませんが、日本の薬剤師の業務と言われるものではないでしょうか。
次に注目してほしいのが【アシスタント】の業務にある「調剤」です。
ここがいまの日本で言われている「テクニシャン」に該当する部分ではないだろうか。
もちろん先述の通りここでいう「調剤」とは、箱出しのことである。
すこし脱線をするが、ではイギリスでは日本で行われているような水剤の混合や分包はどうしているのだろうか。
大きな考え方の違いだろうが、欧州の多くの国では「分包業者」と呼ばれる会社がありそこに外注する形になるらしい。
これは過去に行った、デンマークや北欧3国でも同じである。
とある方の発言に
「資格を有するテクニシャンは反対だが、カナダのアシスタント(無資格)なら賛成」
という話がありました。
たしかにカナダではだれでも出来るアシスタントではありますが、果たして本当にそれでいいのでしょうか。
先程いった様に、諸外国の調剤と日本の調剤では大きく異なります。
箱出しと一緒にされてしまえば、いままでの調剤料は何だったのかとなります。
イギリスにおけるアシスタントは、統一標準資格となりつつある「NVQ」(National Vocational Qualification)とBFTEC(Business and Technology Education Council)がある。
前者は「国家職業資格」、後者を「ビジネス・テクノロジー教育評議会」と略すことが出来る。
この一定レベルを要する事が条件とされている。
もちろんテクニシャンとなると、資格の他に登録が必要となる。
紙幣価値や経済感が違うので比較対象には成らないかもしれないが、テクニシャンの監督者となると年収500~600万円が相場と聞く。
上記の事から、日本式ではなくイギリス式の薬局の人員配置だが
・薬剤師 【監督者・マネージャー】 ×1
・テクニシャン【調剤・服薬指導】 ×3
・アシスタント【調剤補助】 ×2
こんな感じだろうか。
薬剤師の業務役割に戻って貰うとわかるが、薬剤師の業務の多くはマネジメントに該当する。
すこし、いま議論されてりるテクニシャン議論との違和感を感じて頂けたでしょうか。
海外のテクニシャン制度を見て、日本にも導入をと考えるのであれば、調剤の定義はもちろんであるが、「日本の調剤」というものを考えることから始めなくてはいけない。
なんどもいうが、「箱出し」と「日本式調剤」はイコールではない。
アメリカとヨーロッパでも仕組み異なり、やることが異なる。
日本はアメリカの制度を模倣しようとする傾向にあるが、果たしてアメリカが全て良いという様になるのだろうか。
アメリカの保険制度と国民皆保険は全くの別物である。
日本に取り入れられるのは、病院のプライベート化、いわゆる自由診療化である。
いま安易にこの議論をするには時期なお早ではないだろうか。
毎回海外にいけば、大きな気づきがある。
10年前に行ったという人の話と、自分の見てきたモノが異なることもたくさんある。
日本と同じ様に世界でも時代は進んでいます。
いまの世界を見ている人にしか、これからの仕組みを考えることが出来ないのではないでしょうか。
いまやるべきことは、やはり薬局業務、薬剤師のあり方の見直しではないだろうか。
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