孤独死の問題が報告されています。その深刻さと何よりも驚くのは対象は高齢者だけではないという事実です。孤独死が又、どれだけのコストなのかということも今回初めて報告されています。無縁社会とはいえ、孤独死を防ぐ取り組みが急がれます。下記レポートより主なデータをご紹介しておきます。

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高齢者だけでない単独世帯の「孤独死」の問題。急がれる総合的な防止対策

LIFULL HOME'S PRESS 2017年10月3日

不動産コンサルタント会社「リックスブレイン」代表

平野雅之
 

国内の高齢化が進行する中で「孤独死」の問題が年々深刻化している。

「孤独死」の定義は明確でなく、全国を網羅した統計なども見当たらないが、東京都福祉保健局「東京都監察医務院」がまとめた資料によれば、東京23区内における「一人暮らしで65歳以上の人の自宅での死亡者数」は、2003年に1,451人だったが、その後はおおむね右肩上がりで増えている。2015年には初めて3千人を超え、3,127人に達した。

内閣府が毎年まとめている「高齢社会白書」では、この監察医務院の数値を引用し「孤立死と考えられる事例」としているが、単純計算すれば全国の孤独死者数が年間およそ3万人という推計が成り立つだろう。なお、内閣府では「孤独死」ではなく「孤立死」という用語を使っている。

年間の死亡者数は約130万人(厚生労働省「人口動態統計:2016年」による)であり、国民のおよそ50人に1人が孤独死していることになる。これだけでも決して他人事とはいえない水準だが、急速に進む高齢化の中でさらに悪化することが懸念されているのだ。


だが、こうした官民による孤独死への取組みについて「孤独死問題を高齢者問題と断定することは危険」「現在の孤独死対策では不十分。より広い層の孤独死対策を検討すべき」と指摘するのが、一般社団法人日本少額短期保険協会 孤独死対策委員会による「孤独死現状レポート」だ。


同協会では2016年から「孤独死現状レポート」をまとめているが、2017年3月2日に公表された第2回分(2015年4月〜2017年1月:1,095人のデータ)をみると、孤独死の平均年齢は男性が59.6歳、女性が57.8歳となっている。一般的な高齢者対策の対象となる65歳以上より、だいぶ低い印象だろう。

孤独死の男女別死亡年齢の構成比では、いずれも60歳〜69歳がいちばん多く、男性が32.4%、女性が22.8%を占める。しかし、59歳以下の総数では男性が40.6%、女性が42.7%であり、およそ半数は「高齢者ではない」ようだ。さらに、女性では20代が9.2%、30代が8.3%にのぼり、39歳以下の割合が合わせて17.5%になる。男性の39歳以下は9.8%であり、若い女性の孤独死が目立つ結果だ。

さらに死因別人数の割合をみると、「病死」によるものが男性は61.2%、女性は49.5%と最も多く、次いで「死因不明」が多くなっているが、「自殺」は男性の11.6%に対し、女性が19.9%にのぼる。5人に1人が自殺という状況は深刻な水準だ。年齢別のデータと合わせれば、「若い女性の自殺による孤独死が多い」ことも考えられ、対策を急がなければならない。

これらは一般社団法人日本少額短期保険協会の協力各社(17社)における保険金支払い実績の中から孤独死事案を抽出したデータであり、全国の孤独死総数からみれば一部にすぎない。また、対象が賃貸住宅居住者であり、高齢者の持ち家比率が高い(対象となる高齢者の比率が低い)ことも考慮しなければならないだろう。

しかし、孤独死問題やその実像を探るうえで、大いに参考にすべき資料だと考えられる。とくに賃貸住宅を貸す側の大家の立場で見れば、「孤独死が心配だから高齢者には貸したくない」というのは、実態に当てはまらない考え方だともいえそうだ。

孤独死から発見までの平均日数は男性が42日、女性が37日のようだ。男女とも過半数が死後14日以降に発見されており、90日以上経ってから発見されたケースも1割を超える。何らかの異変があっても、なかなか周囲に気付かれないような生活環境で暮らしている人も多いのだろう。

また、死後3日以内に発見される割合は男性より女性のほうがだいぶ高い。第1発見者の構成をみると女性は「近親者」(親族、友人、知人、会社・学校の関係者など)が多く、男性は「職業上の関係者」(管理会社、オーナー、福祉、配送業者、警察など)のほうが多い。生前の友人関係や近所付き合い、近親との連絡頻度など、男女間の違いも影響するようだ。

さらに、レポートにまとめられた「損害額」の内訳では、残置物処理費用が平均で196,436円、最大で1,463,400円だったほか、原状回復費用は平均で338,375円、最大で3,413,744円にのぼっている。孤独死した後の状況次第で原状回復費用がかなり高額になるケースもあるだろう。

賃貸住宅の場合、これらをカバーできる保険に加入していればオーナー(家主)の負担額は小さくなるものの、そうでない場合は遺族が多額の請求を受けることになりかねない。遺体の発見が遅れて「事故物件」として扱われるようになれば、オーナーの実質的な損害がさらに膨らむことになる。

いずれにしても孤独死は本人の問題にとどまらず、まわりの人も巻き込む結果になる。近隣との深い関わりが失われがちな現代において、日常生活の中で異変をどう察知するか、ITの活用も含めて今後検討すべき課題は多い。